【寄稿】番外編〈選挙に向けて〉:柳田國男で読む主権者教育

【寄稿】 番外編〈選挙に向けて〉:柳田國男で読む主権者教育

  • 2017.10.16

番外編〈選挙に向けて〉

大塚英志『感情化する社会』
大塚英志『感情化する社会』
太田出版
柳田國男『明治大正史 世相篇』(講談社学術文庫)
柳田國男『明治大正史 世相篇 新装版』(講談社学術文庫)

 今回の選挙、棄権を呼びかける「運動」もあるようです。
 棄権も「民意」だという意味なのか、あるいは民主主義システムの機能不全ぶりを露にする「批評」的営為なのかは、ぼくにはわからないし興味もないです。
 しかし、それぞれが、「保守」であろうが「リベラル」であろうが、あるいは、サヨクやリバタリアンであろうが、そして、いわゆる「言論」が、いかに感情的に「民主主義」をヘイトし、情緒的に「独裁者」や「破滅」を待望しようとも、あるいはwebによる集合知による政治を夢見ようと、普通選挙による民主主義のシステムよりもましな政治システムは今のところ見当たりません。
 だとすれば、民主主義や選挙を嘲笑して自分の立ち位置を守ったとして、さて、「嗤う」以外の何ができるのか。

 「選挙」は有権者個人の理性の発露であるべきです。ろくな候補、政治家がいないと嘆く声は、もっともらしく聞こえますが、有権者の理性的でない選択が理性的でない政治家の発生を可能にしています。だから、いい加減「感情化する選挙」から、降りましょう。柳田が「群れ」として多勢にしたがう有権者に怒り狂った第一回普通選挙(第16回衆議院総選挙)は昭和3年(1928年)、90年近く昔なのです。以来、有権者は「選挙民」でなく「選挙群」として投票してきました。動物化する以前から動物だったことにさすがに気付くべきでしょう。
 この国に有権者をつくるために構想された柳田國男の学問の敗北は、柳田の敗北でなく、この国の近代が延々と続く敗北に他ありません。

 とはいえ、感情的でなく理性的である事は、そんなに難しいことではありません。Webは一見、多様な議論の場のそぶりをみせながら、現状は、柳田がいう「選挙群」を形成する同調圧力の仕組みです。ならば、1人で考えてみればいいだけの話です。
 そのとき「考える」手助けとなるかどうかはわかりませんが選挙のたびに配っているQ&Aです。議論のツールにもつかえますが(もともとは、高校生向けのディベートの教材として作ったものがプロトタイプです)、選挙に際しては、答えは内に秘めて、ツイートも口外しないことが大事です。

 改変しない限り、御自由に使ってください。
 *Q&AシートのPDF版はこちらからダウンロードできます。

とりあえず、日曜日、選挙の朝までに
前に考えて欲しい15のQ&A

今回の選挙は後で振り返って、「憲法」をめぐる大きな選択の発端となった選挙だったと気がつくはずの選挙です。だからこそ、護憲、改憲といったイメージのみの二元論以前に「あなた自身の憲法観・政治観」の整理をした上で、一時の「感情」でなく、「憲法の選択」としての「投票」に望んでください。単純な二択のくり返しですが、多分、多少の役には立つでしょう。
問いのなかで「現行憲法」とあるのは現在の「日本国憲法」の意味です。ただ「憲法」とあるのは、それぞれが考える「憲法一般」「ありうべき憲法」のニュアンスです。この点を特に注意ください。
同様に「内閣総理大臣」「内閣・与党」は、現在の与党の内閣総理大臣の意味でなく、今後国政を担うすべての「内閣総理大臣」「内閣・与党」の意味です。
あなた自身の政治や憲法への普遍的立場を整理するものなので、いずれの設問も「誰が内閣総理大臣であるか」「どの政党が与党か」を前提としないで応えてください。
当然ですが「正解」はなく、また、あなたに替わって「答え」を提供するものではありません。
                           
Q1「国政、地方自治体問わず、一番最近の選挙にあなたはいきましたか」
1.YES
2.NO

Q2「『公』とはどう定義されるべきだと思いますか」
1.個人間の意見の交渉によって形成される合意
2.公権力及び公権力の定める規範

Q3「あなたは現行憲法前文をじっくりと(『じっくり』の定義は各自に委ねるとして)読んだことがありますか」
1.ある
2.ない

Q4「あなたは現行憲法を最初から最後まで通読したことがありますか」
1.ある
2.ない

Q5「あなたが現行憲法の改定に同意するか否かは別として、現行憲法を仮に変えるとすれば、その理由は何か考えられますか」

  Q5-1「日本語として美しくないから」
  1.YES
  2.NO

  Q5-2「日本人が書いてないから」
  1.YES
  2.NO

  Q5-3「耐用年数が尽きたから」
  1.YES
  2.NO

  Q5-4「現状に合わせて変えていくべきだから」
  1.YES
  2.NO

  Q5-5「新しい国民の権利を追加すべきだから」
  1.YES
  2.NO

  Q5-6「新しい国民の義務を追加すべきだから」
  1.YES
  2.NO

  Q5-7「具体的に変えたい条項があるから」
  1.YES
  2.NO

Q6「あなたがもし、変えたい、あるいは、変えたくないと思う現行憲法の条項があるとすれば、その条項を実際に自分で読んだことがありますか」
1.YES
2.NO

Q7「憲法と国民・国の関係をどう定義しますか」
1.憲法は国の行動を国民が規定するものである(国を縛る)
2.憲法は国が国民の行動を規定するものである(国民を縛る)

Q8「憲法は誰がつくるべきだと思いますか」
1.できることなら、自分もなんらかの形で参画したい
2.自分以外の専門家に一切を委ねたい

Q9「憲法解釈を内閣総理大臣が行うことに納得がいきますか」
1.いく
2.いかない

Q10「立法府・行政府の憲法違反を誰が判断すべきだと考えますか」
1.司法
2.内閣・与党

Q11「国政において内閣総理大臣の判断と憲法のいずれが上位に来るべきだとおもいますか」
1.内閣総理大臣
2.憲法

Q12「憲法は変えやすい憲法か、変えにくい憲法か、どちらが理想ですか」
1.変えやすい憲法
2.変えにくい憲法

Q13「憲法は目の前の問題を解決する手段なのか、長いスパンの未来を設計するものなのか、どちらであるべきだと考えますか」
1.目の前の問題
2.将来の設計

Q14「あなたは『責任』ということばを日頃、どちらの形でより多く使いますか」
1.他人の責任を追及する
2.自分の責任を果たす

Q15「あなたは責任をもって選挙や国民投票に一票を投じる有権者である自信と責任はありますか」
自信と責任をもって投票してください。

柳田國男『明治大正史 世相篇』(講談社学術文庫)
柳田國男『明治大正史 世相篇 新装版』(講談社学術文庫)
柳田國男『明治大正史世相篇』より
第1回普通選挙の公布を見る子供たち。
柳田國男は「一等難しい宿題」というキャプションとともに自著『明治大正史世相篇』にこの写真を掲載した。

 *Q&AシートのPDF版はこちらからダウンロードできます。

著者プロフィール(大塚英志

大塚英志(おおつかえいじ)1958年生まれ。まんが原作者、批評家。最新刊『感情化する社会』。本書は韓国での翻訳出版が決定。本書に関わるまんが原作としては、山口二矢、三島由紀夫、大江健三郎らをモチーフとした偽史的作品『クウデタア2』、本書に関連する批評として、『物語消費論』『サブカルチャー文学論』『少女たちの「かわいい」天皇』『キャラクター小説の作り方』『更新期の文学』『公民の民俗学』などがある。

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