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百田尚樹

百田尚樹(ひゃくた・なおき)
1956年、大阪生まれ。同志社大学中退。人気番組『探偵!ナイトスクープ』など放送作家として活躍。2006年『永遠の0に』(太田出版)で作家デビュー。『聖夜の贈り物』『ボックス!』(いずれも太田出版)、『風の中のマリア』(講談社)、『モンスター』(幻冬舎)など多彩な執筆活動を展開し読者の熱い支持を集めた。いま最も期待される作家である。最新刊は『リング』(PHP研究所)。

松田哲夫

松田哲夫(まつだ・てつお)
1947年、東京生まれ。1970年、東京都立大学を中退し筑摩書房に入社。数多くのヒット作を手がけた後、現在は顧問を務める。著書に『これを読まずして、編集を語ることなかれ。』(径書房)、『印刷に恋して』(晶文社)、『「王様のブランチ」のブックガイド 200』(小学館101新書)など。

INTERVIEW

SPECIAL INTERVIEW 05

2010/04/10 17:00 INTERVIEW

聞き手:松田哲夫 写真:辺見真也

第5回
鏑矢、木樽、稲村……
ボクシングスタイルの秘密

松田
『ボックス!』には、いろんな選手が出てきますよね。
その個性を描き分ける、
人間としての性格の個性ではなくて
ボクサーとしての個性に関して、
具体的なイメージはあったんでしょうか?
百田
もう30年以上も
いろんなボクシングを見てきましたから、
ボクシングの名選手をイメージしているところは
ありますね。
だから『ボックス!』を読んでいただくと、
結構コアなボクシングファンは
ニヤッとするところがあるんです。
「これは、あの選手をモデルにしてるな」とか、
実際にプロの名選手なんかもいっぱい出てきますから。
松田
僕ら素人でも「これは亀田っぽいな」というのは
ありましたけど(笑)。
百田
ラスト近くにね(笑)。
松田
主役の2人には、具体的なモデルがいるんですか?
百田
ボクシングのスタイルのモデルはありますけれど、
キャラクターは私の創作ですね。
松田
ボクシングスタイルの参考にされたのは、
やっぱり自分のお好きなタイプですか?
百田
そうですね。
頭の中では対照的な2人として考えていて、
鏑矢は私の中では70年代にいた、
ライト級のロベルト・デュランというボクサーを
イメージしてるんです。
木樽のほうは、同じく70年代から80年代にかけて
活躍したアレクシス・アルゲリョっていう
ボクサーをイメージしてます。
松田
日本のボクサーではないんですね。
百田
日本のボクサーではないです。
基本的にボクシングには大きく分けると
「ファイター型」という相手の懐に飛び込んで
打って打って打ちまくるスタイルと、
相手から距離を取って、
そのロングレンジから長いパンチを打って闘う
2つのスタイルがあるんです。
松田
それを2人の対比として。
百田
そうですね。鏑矢は、もうファイターで。
松田
ライバルの稲村もファイターで。
百田
稲村は完璧なオーソドックスボクサーで、
両方ともできるという。
松田
そうか。どちらかに特化しているタイプと、
両方できる人がいる。
百田
そうですね。
さっきも言ったように鏑矢はファイター型で、
その対称形にいるのが「ボクサー型」。
ボクシングをやっているのは全員がボクサーなんで、
それはヘンな言い方なんですけど、
要するに距離を取ってジャブを突き、
右ストレートを打つというスタイルが
ボクサー型なんですね。
その中間である「ボクサーファイター型」は
両方ともできる。
そういうタイプに分かれてるんですけど、
ファイター型はやっぱり危険なんですよ。
自分から飛び込んでいくという、
肉を切らせて骨を断つみたいなところがあるんで、
相手のパンチも喰らいやすいんですけれども。
松田
そういう人は脳波にも影響出てきそうですよね。
打たれるから。
百田
そうですね。だから、もうメチャクチャ危ないですよ。
僕の先輩で、すごく好戦的なファイターがいたんです。
ガンガン打ちまくるファイターだったんですけど、
昔はKO負けしても次の週には試合に出れましたから
(編集部注・現在アマチュア選手はKO負けすると
4週間は試合に出られないルールとなっている)、
あるときなんて1ヵ月に3回ぐらい
KO負けを喰らったんです。
それで、ある日「脳見てもらいに行くわ」
って近くに脳外科に行ったら、
医者が「君、脳波メチャクチャになってるで」って。
松田
冗談じゃないですね(苦笑)。
その先輩は、お元気ですか?
百田
何年も会ってませんけどね。
会っても僕のこと覚えてないかもしれないですね(笑)。(その6に続く)
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