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百田尚樹

百田尚樹(ひゃくた・なおき)
1956年、大阪生まれ。同志社大学中退。人気番組『探偵!ナイトスクープ』など放送作家として活躍。2006年『永遠の0に』(太田出版)で作家デビュー。『聖夜の贈り物』『ボックス!』(いずれも太田出版)、『風の中のマリア』(講談社)、『モンスター』(幻冬舎)など多彩な執筆活動を展開し読者の熱い支持を集めた。いま最も期待される作家である。最新刊は『リング』(PHP研究所)。

松田哲夫

松田哲夫(まつだ・てつお)
1947年、東京生まれ。1970年、東京都立大学を中退し筑摩書房に入社。数多くのヒット作を手がけた後、現在は顧問を務める。著書に『これを読まずして、編集を語ることなかれ。』(径書房)、『印刷に恋して』(晶文社)、『「王様のブランチ」のブックガイド 200』(小学館101新書)など。

INTERVIEW

SPECIAL INTERVIEW 10

2010/05/21 02:00 INTERVIEW

聞き手:松田哲夫 写真:辺見真也

最終回
映画版『ボックス!』
いよいよ公開!!

松田
いよいよ映画が公開になりますけど、
ロケには足を運ばれたんですか?
百田
ロケは10回くらい見に行きましたね。
舞台が大阪で、大阪でロケしてましたから、
地元なんで何回も見に行って。
あと東京のロケも、クライマックスのシーンを
3日通して見に行ったんですけど、
迫力に圧倒されましたね。
エキストラも300人ぐらい集まってて
「こういうふうに声援送って」という
助監督からの演技指導が入るんですけど、
その助監督の指示よりも、リング上の役者の
ボクシングにエキストラが興奮してしまって。
だから最後、終わった瞬間なんか会場中が大拍手で、
演者同士がボクシングの
タイトルマッチみたいに抱き合って。
それぐらい迫力がありましたね。
松田
実際に打ち合いをするんですか?
百田
稲村の役をやった人はホントのプロなんですよ。
A級ライセンスを持ってて、
これが、また男前なんです。
だから市原くんも高良くんも
胸を借りるつもりで打つんですけど、
やっぱり実際には役者が演じてるんで
顔には当てないようにやるんですけど、
やっぱり本番になってきたら互いにエキサイトして、
パンチが当たるんですね。
プロデューサーも監督も言うてましたけど、
恐らく日本の映画史上、こんだけ役者の顔を
ガンガン殴った映画はないんちゃうかって(笑)。
松田
それは、すごいですね(笑)。
百田
まともにパンチがレバーに入って
撮影が中断したって言ってましたから。
普通ロケの現場を見て「ああ、こんなもんか」と思ってて、
その後に編集されたものを見て
「おおっ!」というパターンはありますけど、
『ボックス!』はロケを見てるだけで
ゾクゾクする迫力がありましたから。
これを編集したら、もう、とんでもない映画になると。
松田
でもA級ライセンスの方を相手に、
役者さんはすごいですね。
根性ありますね。
百田
ホントに根性あります。
僕はボクシングを何十年も見てて、
ボクサーもやってましたけど、その僕から見ても、
素人のやってるボクシングには見えませんでしたから。
松田
サマになっている。
百田
サマになってますね。
今回の映画が始まる3ヵ月前から
市原くんも高良くんも週に3日以上
ボクシングのトレーニングをしたって聞いて
「いまどき、そんな役者おるんかな?」と思いましたよね。
で、その2人を教えたのが
元日本ウェルター級とスーパーウェルター級の
2階級を制覇した田端信之さんという方で、
この人がマンツーマンでボクシングを指導したんです。
クランクインしてからも撮影についてもらいましたから、
市原くんと高良くんは撮影中も
ボクシング技術が上がっていったんです。
松田
映画というのは、いろんなものを落としていかないと
時間内に収まらないですから、
どこかの部分が落ちてしまうのは
もったいないとも思うんですけど、いまのお話をうかがうと、
やっぱりボクシングの魅力を中心に描かれているんでしょうか?
百田
そうですね。
あと原作通りに大阪が舞台になってますから、
演者の人たちは必死で大阪弁を勉強してくれて。
ロケ中もずっと大阪弁指導の方がいまして、
この人がいちいち「違う」
「ここの言い方はこうや」ってやってくれて。
だから、ホントに楽しみやなって思います。
僕自身が楽しみで楽しみで。
最初は、こんだけ長い小説やから2時間ぐらいでは無理や
と思ってて「まあ、好きにやってください」
みたいな気持ちだったんですよ。
「勝手にやってくれ」みたいな気持ちもあったんですけど、
実際に何度もロケを見てて
「ああ、これは、かなり面白そうや」と思って。
シナリオも初めから相当気に入ってたんです。
僕自身が満足できるシナリオだったんで。
松田
百田さん自身がシナリオをお書きになるっていうことは
なかったんですか?
百田
僕自身は、シナリオを書けないと思ったんですよ。
自分の作品ということで思い入れもあるんで、
そこは松田さんもおっしゃったように
大胆に落としていかなあかんところがありますから、
どういうふうにメスを入れるかっていうのは、
やっぱり他人にお任せしたほうが良いと思ったんですね。
でも、シナリオ改稿の度に私のところに送ってくれて、
私自身が「ここは、こういうふうにしてもらえないか」とか
「ここは、こうやってほしい」という、
そういう意見もキチンと取り入れていただけたんで、
私は満足してるんですよ。
松田
ボクシングシーンの迫力みたいな部分は
シナリオではわからないところですけど、
そこはロケに行って実感したと。
百田
そうですね。
もう、予想以上に良かったですから。
松田
公開が楽しみですね。
では最後に『ボックス!』ファンに
メッセージなどをいただければと思うんですが。
百田
そうですねえ......
まあ、映画を見て原作も読んでもらいたいなと(笑)。
松田
言うまでもないですね(笑)。
百田
映画はすごいですけど、原作もやっぱりすごいよ(笑)。
松田
映画から入った人も映画だけで満足せずに、
小説を読んでくれと(笑)。
百田
ありがとうございます。
全部言うてくれました(笑)。(おわり)
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