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初出:『Quick Japan』vol.124 Text:磯部涼 photo:荒木経惟
*「ぽこぽこ」公開当時の記事を再掲載しました。

荒木経惟との撮影が終了し、誰もいなくなったスタジオで「去年の夏と似ている。人生から試されているみたいな」と奥田は言った。国会前デモが終わり、今、自分が置かれている状況について思うことは山ほどあるだろう。ポジティブとネガティブの間を揺れ動きながら、それでも前に進もうとする奥田の今の心境とは。

「何回でもやり直せるし、絶対、
また新しいものが出てくる」

──さて、最初の「アイコンとしての奥田愛基」というテーマに戻りますが、今日のインタビューで、奥田くんの話し方に特徴的なポジティブとネガティブの間を揺れ動きながら、でも、前に進んでいくという姿勢がひとつのメッセージになっているということがよくわかりました。

奥田 どんなに迷っていても、やらなきゃいけない瞬間ってあるんですよね。なんかその時には選択肢っていうものはない感じで。やるしかないんですよ。それは、去年の夏、10万人の前で話した時もそうだし、今日、荒木さんとさしで向かいあった時もそうだし。

──奥田くんは着替えていたので聞いていなかったと思いますけど、荒木さんが「彼はこれまでいい写真が出ていないな。スタジオで撮ったものに関しては。国会前で撮ったものが一番いい」と言っていたんですね。そして、その後、撮影を進めている中、荒木さんが「いい顔になってきたじゃねぇか。あの時の顔だ」とつぶやいた。

奥田 そうですよね。去年の夏と今日は感覚的に似てたかも。人生から試されているみたいな。オレがやりたいとかやりたくないとかじゃないっていうか。……これ、文字起こししたら完全にスピッてるな(笑)。でも、実際、そうなんですもん。その時が来たら、もう思っていることをバっと言うしかないっていう感じで。そういうチャンスなのかピンチなのかをモノにできるかっていうか。もちろん、いつかそんな瞬間がくるんじゃないかって準備をしていたからこそ、それに応えられるわけですが。

──以前、奥田くんは「成功しても失敗してもいい、結果的に生きてればオッケー」みたいなことも言っていましたよね。

奥田 ……根本的なところでは信じていないんだろうなぁと思うんですよね。

──なにを?

奥田 なにもかも、全部(笑)。左とか右とか、社会が良くなるとか、誰がすごいとか。「信じてたのに裏切られた」とかいうぐらいなら、はなっからなんにも信じないほうがいい。信じられないって思ってるほうが健全だと思ってます。 「トラスト・ノーワン」っていうか、それこそ、ラップ・ミュージックの世界ですよ。超殺伐とした。信じているのは、生きてるってことぐらい。でも、誰も信じていないからこそ、ビビっていた方がいいなとも思っていて。『憎しみ』(マチュー・カソヴィッツ監督作品 95年)っていう映画があるじゃないですか? あれは、最後、一番気のいいヤツが拳銃で人を殺しちゃう。あと、高いところから落ちているのに「ここまでは大丈夫。重要なのは落ちていることではない。どう着地するかだ」ってつぶやくセリフも、いつも自分に言い聞かせていて。あるいは、『ヒップホップ・ドリーム』(漢 a.k.a GAMI著 15年)の「調子に乗ったら死ぬ」とか(笑)。だから、ビビりながら、やることはやるっていう感じですね。

──今日もビビっていたけど、来たわけですよね。

奥田 そうですね。「荒木さんに『全然、ダメだ』って言われるかもなぁ」とか考えながら。「ダメだったとしても何なんだ?」とか自分の中で勝手に逆ギレしたり。そういうこと、けっこう思うんですよね。今後SEALDsがどうなるのかなんてわからないし、『Quick Japan』の表紙にまでしてもらったのに、まったく売れないかもしれないし(笑)。もしくは、もっとすごいヤツが出てくるかもしれないし。で、「奥田っていたねー」とか言われて。でも、それで全然いいんですよ。だって、「オレたちがどこから来たか知ってる?」っていう感じじゃないですか。当たり前の話、最初はオレの名前なんて誰も知らなかったんですよ。2013年、国会前で特定秘密保護法が可決したとき、けっこうすぐみんな帰っちゃって。「あれ?」みたいな。それで、「終電もないから朝まで時間潰そうか」って安居酒屋に行って、飲みながら「やれるところまでやってみよう」っていう話になって。その時に「オレたちでデモやろう」「デモ? そんなのウケるわけないよ」「やってみないとわかんねーだろ」みたいなやり取りから、今につながっている。だから、何回でもやり直せるし、絶対、また新しいものが出てくるって思っています。


〈プロフィール〉

奥田愛基

平成4年、福岡県生。現在、大学4年生。SEALDsの中心メンバーのひとり。
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