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取材・構成:多根清史
*特別マンガ『ピコピコ少年』特別篇は、当ページ後半に掲載!

【PART 1】
“ノスタルジックゲーム漫画”として並び語られることも多い『ピコピコ少年』『岡崎に捧ぐ』。実際、著者の押切蓮介さんと山本さほさんは子ども時代を過ごした地域が近く(神奈川県川崎エリア)、その作品世界で描かれる原風景にはどこか相通じる感触があります。そこで編集部ではゲーマー漫画家双璧によるガチゲーム対談(&対戦)を2回にわたり決行。まずはPART 1、川崎の有名ゲーセン<ウェアハウス>での約2時間の対決後の対談です。

格ゲーは人間関係を破壊する?

魔窟<ウェアハウス>に入店する押切・山本両先生
魔窟<ウェアハウス>に入店する押切・山本両先生

――お二人はプレイするゲームの趣味も合ってるんですか?

押切 似てるんですよね、けっこう共通点があって。『ぷよぷよ』もお互い下手くそだし。

山本 そう! この前話してて、私が合わせに行ってるんじゃないかって思われたぐらいで。

押切 今までやってきたゲームや、今ハマってるゲームも被ってる。殺伐とした、パッケージが黒い系のやつが好きでしょう。

山本 一回人類が絶滅した後か、戦争中か。そんなのばっかりですね。

押切 ほのぼのしてると飽きちゃうんですよ。僕には優しすぎるなって。

――今日はいろいろとゲームで対戦されましたが、感想はいかがでした?

押切 最初の対戦がUFOキャッチャーでしたっけ。1000円でどれだけ取れるかという勝負で、1000円に収まらなかったですけどね。僕は1発目でソフトクリームを当てて、あれが最初で最後。

――二人分を取る、と言ってましたよね。

押切 結局は1個3000円のアイスクリームになった。

――山本先生は2000円でしたね。

山本 そうですね。ちょうど1000円の時に当てて、その後も1000円入れたけど取れなくて。

押切 結局、ストⅠ(初代『ストリートファイター』)だけじゃないですか? 僕が勝ったのは。僕がケンで、さほ先生がリュウで。

――押切先生は波動拳や昇竜拳を連発してましたね。初代のストⅠを置いてる店は珍しいなと。

山本 あ、あれストⅠですか! 初めて見ました。

押切 さほ先生、意外と波動拳をぶっ放してくるんですよ。

――ストⅠの攻撃ボタンは圧力センサー(叩く力により弱・中・強3段階の技が出る)なので、コマンドを入れて必殺技を出すのが難しいんですよね。

押切 普通はバンバン叩くだけで、パンチかキックしか出さないんです。でも、波動拳のコマンドを入力してきて、さほ先生は「やりやがる人間」なんだなって。波動拳をぶっ放そうとする向上心が素晴らしい。

――山本先生は普段は格ゲーだけはプレイされないそうですね。

山本 それには理由があって、6歳上のお兄ちゃんがいるからですよ。兄妹の人間関係は難しくて、こちらが勝つと機嫌が悪くなるんです。で、その後いじめられる可能性がある。
それが幼稚園から小学校にかけて染み付いてて、1対1の対戦がすごい苦手になったんですよ。本気になってはいけない、手を抜かなきゃなって焦りがあったり。格ゲーって、まさに真剣勝負じゃないですか。
自分が勝っても相手の機嫌が悪くなっちゃうからハラハラするし、でも負けたら負けたで悔しいんです。だから、いい思い出がなくって。で、こういう話を人にしたら他にも苦しんでる人がいて「弟や妹あるある」なんですよ。

押切 僕も兄貴がいるんです、6歳上のね。兄貴に喜んでもらいたくて、これ面白いよって一緒に遊んだりしたんですけど、やっぱり気を遣うわけですよ。6歳も上なのに、負けたりするといじけて「これクソゲーだよ」って言うんですよ。それが本当に悲しくて、いろいろ試行錯誤したんですが、上手くいったことはないです。

――兄弟相手は、勝っても負けても後に尾を引きますよね。

山本 手を抜いてるのがバレると怒られる。だから本気でやって負けてる感じを演出する。接待プレイが染み付いてるんですよ。

押切 「お前がそこにいるから負けたんだ」って。なにかとイチャモンをつけられましたよ。

山本 だったらその場を楽しませるために負けていったほうがいいのかなって。

――お二人とも、幼くして接待プレイのご苦労をされたんですね。

押切 だから、家庭用ゲームよりはゲーセンのほうが好きだったんです。そこで知らない人と戦うのが本当に楽しくて。ブチのめすと、開放されるんですよ。気を遣わなくていいですもん。

山本 プライドの高い友達を負かすと大変ですからね。

押切 ああ、すごくめんどくさい。気の合う友達だったらいいですけど。

山本 私、小学生の時に『ヴァンパイア』のキャラクターが好きで、攻略本を買って読んでいたんですよ。誰かが誘ってくれたら、たぶんハマってたんだろうなって。

押切 今からでも遅くないですよ。

山本 周りにゲーセンに行く友達がいなくて。すごくかわいいじゃないですか、『ヴァンパイア』のキャラクターは。でも押切先生は全然かわいくないやつ(ビクトル)を使ってて。

押切 やりこむとキャラクターの可愛いさは度外視しちゃうの。技の性能とかリーチとか、強さしか考えてなくて。『ヴァンパイアセイヴァー』(『ヴァンパイア』シリーズ3作目)ではビクトルで、『ヴァンパイアハンター』だとロボットみたいなやつ(フォボス)を使ってるんです。女性の人はキャラで入っていく人が多くて、それはそれでアリだと思いますよ。

――山本先生は他にもキャラから入ったゲームはありますか?

山本 えっと『マジカルドロップ』かなあ、キャラがすごくかわいくて。あのイラストレーターの方(2以降の「エロスケ」氏)はどこ行ったのかなって思ったら、『ケリ姫スイーツ』のイラストを描いておられて感動しました。

ゲームやり込み派VSなんでも広く遊ぶ派

――お二人がゲームをやるうえでのポリシーってありますか? 格ゲー対戦に限らず、ゲーム一般について。

押切 あー、ゲームによりますよね。

山本 押切先生って、1つのゲームをやり込むタイプですか?

押切 まったくもってそうです。クリアしないと次のやつできないんです。どんなゲームでも必ずクリアしないと気が済まない。

山本 それ絶対、いつか積みゲーが爆発するじゃないですか?

押切 今、かなり積んでますね。

山本 そうですよね。最近のゲームって、1回のプレイ時間めちゃくちゃ長いですし。そこは押切先生と違うところで、私は名作とされてるゲームをとりあえずやりたい。面白かったら最後までやるし、面白い所を堪能したら次に行くことが多いです。とにかく1回は齧っておかないと、後々「あのゲーム、すごく面白かったねって」っていう話についていけなくなるし。

――押切先生は最後までとことんやるわけですね。

押切 ギャンブラーだと一番恐いタイプですね。パチンコでずっと当たるまでやるみたいなタイプ。

山本 私はけっこうパッとやめる。

――お二人はゲームの趣味は近いですが、プレイスタイルはかなり違いますよね。『ストⅠ』の後の『ギャラガ』では、山本先生が5000点ぐらいの差をつけていて。

押切 完全にガチでやってましたよ。

山本 私もガチです。押切先生、シューティングって得意ではない?

押切 ぜんぜんダメ。『グラディウス』や『R-TYPE』ぐらいしか触ったことないので。

山本 私は『パロディウス』をやっていました。あと『ツインビー』はよくやっていましたね。

――キャラがかわいい系のシューティングがお好きなんですね。

山本 そうそう、大好きだったんですよ『ツインビー』。

押切 とっつきやすいですよね。あれ。でもシューティングって一瞬でゲームオーバーになることがあるから、ゲーセンでやれないですよ。

――シューティングはゲームとだけ向き合うので、人間関係のストレスが無いのも大きそうですね。

押切 『ヴァンパイアセイヴァー』でさほ先生をボコボコにするのもアリだったな。すごく大人げなくね。

山本 その時は、1週間練習してから挑みます。

押切 一週間じゃ無理です(キッパリ)。申し訳ないですけど、僕にもプライドがあって。僕は『ヴァンパイアセイヴァー』界の中での、人間界を卒業したんです。人間界の上の魔界には入れていない。自分が強いと思ったら、上には上がいる。「ヴァンパイアセイバー」は1997年に出たゲームなんですが、それを僕は2、3年くらいやって、上手くなった気がしてもういいやって卒業したんです。けど、本気でやる人って2016年までずっとやっていて、僕が勝てるわけがないんですよ。見てる世界が違っていて、格ゲーの1フレーム(絵の動きの1コマ。1フレーム=1/60~1/30秒)が見えるんですよ。意味がわからなくないですか。

山本 それ聞いたことありますよ、1フレーム単位で避けたりするらしいって。


〈プロフィール〉

押切蓮介(おしきり・れんすけ)

1979年生。1998年『ヤングマガジン』でデビュー。著作に『ピコピコ少年』 『でろでろ』他多数。現在『ピコピコ少年』 『ハイスコアガール』(「ビッグガンガン」)、『ぎゃんぷりん』(「漫画アクション」)、『狭い世界のアイデンティティー』(「モーニング・ツー」)等を連載中。

山本さほ(やまもと・さほ)

1985年生。2014年、『岡崎に捧ぐ』をウェブサイト「note」に掲載し話題に。2015年より「ビッグコミックスペリオール」で『岡崎に捧ぐ』連載開始。現在同作の他、『無慈悲な8bit』(「ファミコン通信」)連載中。