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村上春樹「小説を書く時はうなぎと話し合う」の意味は?

8月10日発売の雑誌『ケトル』は、特集のテーマとして「村上春樹」をピックアップ。村上作品に登場する東京スポット・食べ物・酒、登場人物の名台詞など、村上春樹にまつわるありとあらゆる情報を紹介している。今回取り上げるのは、村上作品に数多く登場する"食べ物"について。村上春樹の小説には、いくつかの象徴的な食べ物が出てくるが、それらに込められた意味とは?

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『ノルウェイの森』で、ワタナベ君が入院中の緑の父を訪問したとき、なぜか緑の姉がキウイと間違えて買ってきたのがキュウリ。でも、彼は「キウイよりずっとまともな食べもの」と言い、キュウリをのりで巻いて醤油をつけて、お父さんと一緒にポリポリ食べてしまう。『海辺のカフカ』のカフカ少年など、村上作品の登場人物がよく使うのが「キュウリのようにクール」という表現(英語の「as cool as cucumber」からきている)。「キュウリ=クール」はハルキストにとって常識だ。

村上作品の登場人物が、暇さえあればコーヒーと一緒に食べるのがドーナツ(そして、大抵ダンキンドーナツ)。『羊をめぐる冒険』では、1枚の羊の写真が大問題になり、「僕」はその理不尽な成り行きについて悶々とするのだが、結局「ドーナツの穴を空白として捉えるか、あるいは存在として捉えるかはあくまでも形而上的な問題であって、それでドーナツの味が少しなりとも変わるわけではないのだ」と納得する。村上自身、ダンキンドーナツが大好きで、同社の日本撤退をとても残念がっているそうだ。

村上作品では、うなぎはとても大切な食べ物だ。『ノルウェイの森』の緑とワタナベ君が、新宿でポルノ映画を観る前に食べたのはうなぎ、『海辺のカフカ』のナカタさんの大好物もうなぎ、村上自身もうなぎは大好物らしい。村上は過去の取材で「小説を書くときは、僕と読者とうなぎの三者協議が必要」との説を展開。ここで言う「うなぎ」は村上作品に大事なエッセンスの比喩で、明確に言葉にできないので、ここではぬるりとしてつかみどころがない「うなぎ」と表現したようだ。

◆ケトル VOL.08(8月10日発売/太田出版)

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