スーパーでおなじみのたまごパック あの形状になるまでの開発秘話

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普段、しょっちゅう目にしているにも関わらず、意外と何も知らないのが「たまごパック」。なぜ透明なのか、なぜ八角形なのか、そしてなぜたまごは割れないのか……。そこで、昭和38年に国内で初めてたまごパックを作った大阪府池田市の「エフピコダイヤフーズ(当時「ダイヤフーズ」)」に、開発の歴史と構造の秘密を聞いてみました。

昭和30年代の、まだたまごが贅沢品だった時代、たまごは新聞紙に包んで持ち運ぶか、もみ殻を敷き詰めた箱に埋め込んで対面販売するのが当たり前でした。しかしスーパーという業態が生まれると同時に、たまごも大量に陳列販売するニーズが起こり始めました。

後に、現在のたまごパックの原型を生み出すことになるダイヤフーズの創業者・加茂守さんは、まず、当時進駐軍が使っていたお弁当箱型の形を参考にした、紙製のたまごパックをスーパーに提案。しかしここで大きな壁にぶつかります。日本人は中身が見えないと買わない──対面販売が主流だったこともあり、たまごの色や状態が分からないと買ってもらえなかったのです。

そこで、透明で薄く、安価な塩化ビニールという素材の存在を知ったダイヤフーズは、当時日本にはまだなかった、塩化ビニールシートを成形するための連続真空成形機を開発し、鋳物屋とのタイアップで試作金型を製作。たまごの形に沿った丸い形状の「たまごパック第一号」の誕生にこぎ着けます。しかし今度は、中身は見えてもたまごが割れてしまうという問題が発生。たまごが底についた衝撃で割れてしまったのです。

そして、そんな数々の試行錯誤の末に開発されたのが、現在のたまごパックの原型である「八角錐形」のパックです。たまごを入れる部分が八角錐になっていれば、たまごがパックの中で宙づりになり、底まで落ち込まず、衝撃もない──この形状は見事に成功。さらにパックを交互にずらすことで積み重ねられる形状にして、無事にスーパーに受け入れられ、たまごパックは急速に日本中へと広まったのでした。

現在も使われているたまごパックは、実は3重構造になっていて、たまごに触れない真ん中の層には、リサイクル原料が使われているのだそう。驚くべきことに、開発から50年余りが経った今でも、原型はほぼ当時のままなのだそうです。

◆ケトル VOL.15(2013年10月15日発売)

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ケトル VOL.15

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。