全国の書店驚嘆 札幌の書店が実施の「売れない文庫フェア」大成功

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どんな商売のお店であっても、「いま売れているもの」を全面的にプッシュするのは当たり前。ところが、全国の本屋さんが「やられた!」と驚嘆したであろう、売れない文庫ばかりを集めた「なぜだ!? 売れない文庫フェア」で成功を収めたのが、北海道札幌市の「くすみ書房」です。ちくま文庫や河出文庫など各社の売り上げランクの中で下部に位置するタイトルだけが並ぶ、逆転の発想が生んだ秀逸なフェアの仕掛け人の久住邦晴さんはこのように語ります。

「次郎物語や尾崎翠など、読んでみるといい本はたくさんあるんです。でも、売れていないから本屋に並ばず、人の目に触れないまま絶版になっていく。ならば本当に売れないのか試してみようと」

ほとんどがマイナーなタイトルなのに、こうもずらりと表紙を見せられると、本当に面白いのか挑みたくなるから不思議。“うちでは人気のちくま文庫”“なんとか売りたい河出文庫”といった自虐的なコピーも手伝って、大成功をおさめたこのフェアですが、出版社側にとっても大いにメリットはあるようです。

「なんせ売れない烙印を押されるわけですから、出版社的に手放しには喜べないフェアなのですが、既刊本の売り上げの30~40%という書店が一般的な中、おかげでうちは90%以上の割合で売れる。出版社にとってはうれしい本屋なんですよ」

独自のフェアを打ち出し、今や全国の書店憧れの存在となったくすみ書房ですが、その背景には、当時売り上げ不振に悩んでいた久住さんのひとつの決意があったのだそう。

「町の本屋は人が集まる場所であるべき。だから売り上げ云々よりも、人が集まる本屋にしようと思ったんです。目指すのは“コミュニティ本屋”ですね」

昨今では子どもたちの“本離れ”も盛んに叫ばれているが、久住さんは、「中学生向けの本がないのではなく、どの本を読めばいいかという指針がないだけ」と語っており、くすみ書房では、中学生に読んでほしい本を500冊選んだ「中学生はこれを読め!」というコーナーも展開されています。

※くすみ書房 札幌市厚別区大谷知東3-3-20 キャポ大谷地(札幌市営地下鉄「大谷地駅」連絡通路直結)

◆ケトル VOL.18(2014年4月15日発売)

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ケトル VOL.18

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。