タモリ、ホリエモン、妖怪ウォッチ…福岡がクリエイティブな街である理由

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 芸能界に存在する「福岡会」なるグループをご存知だろうか? 今年2月、お笑いコンビ「パンクブーブー」の黒瀬純がツイッターで「福岡会楽し!!」とのコメントとともに、タモリさんを囲む著名芸能人を写した画像を公開。同会には、陣内孝則、井上陽水、藤井フミヤら、ジャンルの垣根を越えて、多くの福岡出身の芸能人が参加しているという。

 一方で、ホリエモンこと堀江貴文、前回の都知事選に出馬した起業家の家入一真も福岡出身で、孫正義が創業したソフトバンクグループは福岡市が創業の地。さらに、今話題の『妖怪ウォッチ』も、レベルファイブという福岡のコンテンツ企業が中心となって制作されており、同社社長の日野晃博、キャラクターデザインを手がけた長野拓造も福岡出身の人物である。

 芸能人、起業家、クリエイター。共通するのはいずれも「ゼロからものを生み出す」人種だということ。なぜ、福岡はそういった“変わった人物”を多く輩出するのだろうか。環境、地理、県民気質の3つの視点から考察した。

【環境編】

 福岡人のクリエイティブ気質を育てる一因として挙げられるのが映画館の多さだ。2011年調査の「社会生活統計指標」によると、映画館が最も多い都道府県は東京(304館)だが、「人口100万人あたりの映画館数」のトップは福岡で、100万人あたり35.8館(東京は23.0館で全国4位)。福岡全体の映画館数も182館と多いが、100館以上が存在する都道府県は福岡と東京のみ。福岡人のクリエイティブの源泉に成り得る1つのファクトとして、見落とせないデータではないだろうか。

 一方、タモリが芸能界に足を踏み入れたきっかけは、ジャズピアニスト山下洋輔の前で秀逸な宴会芸を披露し、気に入られたからというのは有名な話。たった一回の酒の席での“立ち振る舞い”が森田一義青年の人生を大きく変えたわけだが、そんな酒の席が多いのも福岡の特徴だ。

 大都市の中で深夜営業を行う「主として酒を提供する飲食店」、すなわち飲み屋の10万人当たりの数はトップが北九州市、2位は福岡市(2004年「大都市比較統計年表」による)。また、「このご時勢でも、福岡の人だけは人のつながりもお酒の席で深くなる」と、福岡市のあるコンテンツ企業に勤める男性は話す。

「福岡の中心地の1つ、天神で飲んでると、同じ業界の人が隣にいたなんてことも。それで仕事を回したりとか、『デザインやって』ってお願いしたりとか、そんなことがあります」

【地理編】

 改めて言うまでもないが、福岡は日本の主要都市の中では北京や香港、上海、台北、ソウルなどアジアの主要都市に最も近い場所に位置している。福岡市と韓国・釜山の間には高速船が就航しており、福岡空港からは北東・東南アジア、ヨーロッパへの直行便も存在する。

 歴史的に見ても福岡、特に博多地区は海外との交流が盛んで、7世紀後半に迎賓施設である「筑紫館(つくしのむろつみ)」が建設され、後に鴻臚館へと発展。奈良~平安時代にかけて、外交の窓口となった。その後も、日宋貿易を始めとする海外との交易が行われ、博多では国際色豊かな独特の町人文化が育まれたという。

 日本博学倶楽部による書籍『爆笑! いまどきの県民性』(PHP研究所)では、海外との交流が盛んな歴史的背景から、福岡県民を「流行に敏感で賑やかなことが大好きな、陽気な性格」と分析。先進性が求められる芸能界やクリエイティブ業界にも、この性格が生きているといえそうだ。

【県民気質編】

 さらに県民気質について、より深く探ってみたい。

 10月11日に開催された、クリエイター・エンジニアの福岡での体験就業プロジェクト「ぼくらの福岡クリエイティブキャンプ」関連イベントで、GMOペパボ株式会社の今岡佐知子ディレクターは、このようなことを語っていた。

「福岡って、企業の社長クラスの方や、長期間フリーランスで大きな仕事をされているような立場のある方が、流行しているもの、先端のものを見て『これ、やったことないけど、やっちゃおうぜ!』と、若い人のような勢いで行動するのが特徴的ですね。それで、成功するケースもあります」

 GMOペパボ株式会社は、前述した家入一真が創業したpaperboys&co.が前身。スタートアップ時を知る今岡ディレクターは、そうした「勢いで行動」する人たちを何度も目の当たりにしたというが、その一方でこうも漏らしていた。

「もちろん、素地がしっかりしている方々なので、万が一、失敗しても人に大きな迷惑をかけることはそうそうありません。それに、巻き込まれた人たちも最終的には『面白いことができたね』と言うんです。ああなりたい、といったお手本になるし、クリエイティブなコミュニティでは、いい刺激になっています」

 福岡人は勢いと面白さを重視する傾向がある、ということかもしれない。同イベントに参加したアクティネットワーク社の曹永周社長は、イベント終了後の懇親会でこのような話をしていた。

「福岡の人たちって“ヤマっ気”があるんですよね。(芸能界・IT業界で活躍する人が多いのは)そういう理由もあるんじゃないでしょうか」

 環境に恵まれ、アクティブな性格を持つ、福岡県民。芸能・ITにとどまらず、今後もクリエイティブな感性を魅せてほしいところだ。(文中敬称略)

【関連サイト】
#FUKUOKA

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。