ウィーンにある世界最古の動物園で村上春樹は何を感じた?

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動物園といえば、子どもも大人も大好きな場所。今でこそ当たり前のように世界中にある動物園ですが、誰もが動物園に足を運び、動物たちを愛でることができるようになったのは、今から250年ほど前のウィーンでのことでした。

神聖ローマ法王ことフランツ1世は、愛する皇后・マリア・テレジアのために、シェーンブルン宮殿内に動物園を造りました。彼女は動物たちを眺めながら、朝食を楽しんだのだとか。今も世界最古の動物園として知られるティーアガルテン・シェーンブルンは、愛の印として生まれたのです。

ここはジョン・アーヴィングの小説『熊を放つ』の舞台にもなっていて、村上春樹は同作の翻訳を手がける際に訪れています。そこで、1頭の雌ライオンと透明なプラスチックの壁越しに対峙し、ネコ科動物が時折見せる純粋な好奇心を感じたそうです。

また、春樹は長野の小諸市動物園でも1頭の雌ライオンと出会っています。名前は「なな」。ライオンは本来、プライドと呼ばれる群れをなして生活していますが、ななは一人(一頭)ぼっち。知らない土地で一人ぼっちというのは、あまりにも寂しいだろう……そう思った春樹でしたが、ななはとても優しい目をしていました。

普通、プライドの中で生活するライオンと、ゆっくり顔をつきあわせることはできません。動物園だから生まれた出会いと出来事だったはず。人間も大人になってプライドの中で生活していると、見えないものがたくさんあります。大人になったからわかる生き物たちの魅力があります。動物たちの意外な一面を覗くことで、想定外の気づきが降ってくるかもしれません。素敵な邂逅を求め、いま一度動物園を訪れてみるのも良いかもしれません。

◆ケトル VOL.33(2016年10月14日発売)

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。