21世紀の地政学の鍵を握るシンガポール 小さな島の都市国家の利点とは

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グローバル化が急速に進むなか、日本人の渡航先、移住先として注目されているのがシンガポールです。シンガポールの面積はおよそ700平方キロメートルしかなく、これは東京23区より少し大きい程度ですが、小さなシンガポールはなぜ急速に発展を遂げることができたのでしょうか? 『図解でわかる 14歳からの地政学』(太田出版/インフォビジュアル研究所 鍛冶俊樹・監修)では、こう解説しています。

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シンガポールはマレー半島南端の小さな都市国家です。そのGDPはフィリピンとほぼ同じ規模を誇り、ASEAN(東南アジア諸国連合)の金融を担う経済センターです。

世界には小さな島が経済センターとなっている例が他にもあります。香港とニューヨークです。これら三都市の共通点は、かつてイギリスの植民地であったこと。海洋国家イギリスは、大陸国家と交易するに当たり、大陸に近い島に拠点を置けば港を整備しやすく、大陸勢力から防衛しやすいという地政学的特性をよく心得ていたのです。

第二次世界大戦後の1959年に、シンガポールはイギリスから自治権を獲得し、1965年には属していたマレーシアからも独立して、都市国家として出発します。人口の大部分が華人、つまり大陸中国からの移民によって占められた国家でした。

また、シンガポールは中東の石油シーレーンを、インド洋から東シナ海へとつなぐマラッカ海峡の要衝にあります。この地政学的優位性が、シンガポールをASEANへの物流の拠点として、そして、それに伴う商業活動と金融のセンター機能をもつ、アジアのビジネスセンターへと成長させました。

その背景には、初代首相として政権を把握し、長くその任にあったリー・クアンユーの存在があります。マレーシアからの独立後、経済圏を失い、地場産業の乏しいシンガポール経済発展のためには、積極的な外資導入が必須でした。彼は海外企業のために治安を確保し、社会的なインフラ整備のために、開発独裁とも評される強権的な政策を実行しました。その政策は汚職の撲滅から公衆マナーの徹底にまで及び、ソフトなファシズムとまで評された時期もあります。

現在のシンガポールは、アメリカ一国のグローバル経済から、世界の都市同士が物流、金融、情報、エネルギーでネットワークする、新しいグローバル経済の先進モデルとして、人々の関心を集めています。

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“小さいのに”ではなく、“小さいからこそ”発展できたというのもシンガポールの面白いところ。成田~シンガポールは直行便が多数出ており、時差も1時間しかないので、訪れてみるのも良いかもしれません。

『図解でわかる 14歳からの地政学』(太田出版/インフォビジュアル研究所 鍛冶俊樹・監修)は、2019年8月23日発売。1500円+税。国際情勢の今を、わかりやすい地図とビジュアルで俯瞰して学べる1冊となっている。

【関連リンク】
図解でわかる 14歳からの地政学-太田出版

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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