挑戦を続ける斎藤工 「ホームを持つことで僕は腐敗に向かってしまう」

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俳優として抜群の人気と知名度を誇る斎藤工が芸人の永野と手を組んだ映画『MANRIKI』が、11月に公開される。覆面芸人、YouTuberなど、常に挑戦を続ける斎藤だが、『MANRIKI』は、「斎藤や永野を知らない文化圏の人がどう見るか?」が1つのテーマになっている。なぜ彼は、そのような発想に至ったのか? 2019年8月24日発売の『クイック・ジャパン』vol.145で、斎藤はこのように語っている。

「僕自身がかつて中高時代に地元のビデオ屋で、ホドロフスキーなどのカルト的なもの、価値観が変わるトラウマのような映画に出会ってきて。ある意味『こんなに自由なのか!』と映画表現の底知れぬ可能性を感じてきたので。

(中略)永野さんのことを。あの人の“ソース”というか、脳内を正しく映像化できたらそれはもう無限に、いまだかつてないなにかを遠い国の人たちに与えられるんじゃないかと。国内はわからないですけど、どこか遠い国の誰かにクリティカルヒットするんじゃないかという確信を持てたので、制作にいたったというのが正直なところです」

園子温監督や三池崇史監督の作品とともに海外の映画祭に足を運んだ際、作品を見て熱狂する観客を見て、心を揺さぶられたという斎藤。そこには日本に対するある種の失望もあるようだ。

「日本の基準を信用していない、というのも強くあります。メインストリームにずっといなかった人間だからそう思えなかった、というのもあるんでしょうけど。ランキングを主体とする残酷性を孕んだ消費サイクルの早さみたいなこともあるし。“多数派”みたいなものに疑念を抱き続けてきたような部分があります」

シュタイナースクールで、少し変わった角度の教育を受けたことも影響していると語る斎藤。マイノリティのエッジを失わないことが、彼の1つの目標だそうだ。

「いつも、知らない目線でいたいです。アウェーでいる感覚をベースにする、ということ。ホームにすることで生まれるものもあるのかもしれないんですが僕はそれだと甘えるだけで。人間に発酵と腐敗があるとしたら、ホームを持つことで僕は腐敗に向かってしまう。発酵していくにはホームを手放し続け、アウェーの環境にいつづけないといけないなと思うので。誰かの才能とコラボレーションさせてもらいながら、どんどんアウェーに身を投じ、恥をかき続けるだろうけども肩書きを増やすことが、今、僕にとっては成功だと思っているんでしょうね。それは散漫ともとらえられるでしょう
けれど、役者として“代わりがきく”ことの恐ろしさとの自分なりの闘い方なんだと思います」

人は安住を求めるものだが、斎藤にはそういった場所は不要なよう。これまでも数々の驚きを与えてきてくれた彼は、これからも我々を驚かせてくれそうだ。

◆『クイック・ジャパン』vol.145(2019年8月24日発売/太田出版)

【関連リンク】
クイック・ジャパンvol.145

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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