アフターコロナ、アメリカは地下水枯渇、中国は巨大人口 2大経済大国の深刻な「水資源」

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世界中を混乱に陥れている新型コロナウイルス騒動では、アメリカのトランプ大統領による中国叩きが過熱。米中関係が険悪な状況になっていますが、アメリカと中国が頭を悩まされている問題はコロナだけではありません。人間が生活していく上で絶対に必要なのが「水」ですが、両国とも水不足が深刻な問題になっているのです。

SDGsの大切な課題であり、人類から切り離せない「水」のすべてについて解説した『図解でわかる 14歳からの水と環境問題』(インフォビジュアル研究所/太田出版)では、このように解説しています。

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◆アメリカの灌漑農業が限界に

アメリカの農業を担う穀倉地帯で、いま異変が起きています。地下水を強力なポンプでくみ上げ、回転スプリンクラーで散布する「センターピボット農法(※)」という灌漑農業によって、各地の地下水が枯渇しそうになっているというのです。
【※アメリカ中西部農業を支える地下水灌漑方式。くみ上げ口(ピボット)を中心に回転して、畑を円形に灌漑する】

特に深刻な打撃を受けているのは、アメリカ中部にある世界最大級の地下水層、オガララ帯水層(※)です。過剰な水のくみ上げによって、地下水位が年間1.5mも下がっている地域もあり、このままではあと50年で枯渇するとも言われています。何万年もかけて地中に蓄えられた水が、わずか数十年で消えようとしているのです。
【※サウス・ダコタ、ワイオミング、ネブラスカ、カンザス、コロラド、オクラホマ、テキサス、ニューメキシコの各州にわたる帯水層】

◆人口増加で水不足必至の中国

一方、中国は7つの大河がをもち、水に恵まれているように見えますが、水資源の約8割は、長江や珠江が流れる南方に偏り、雨の少ない北方は、深刻な水質汚染や水不足に悩まされています。

一番の問題は、1人当たりの水資源量の少なさです。中国の人口は約14億人と世界人口の約20%を占めるのに対し、水資源は世界全体の6%しかありません。このまま人口が増え続ければ、2030年には16億人に達し、1人当たりの年間水資源量は、水ストレスラインとなる1700立方メートルぎりぎりの1760立方メートルになるという予想もあります。2大経済大国が深刻な水不足に陥ったとき、世界に及ぼす影響は計り知れません。

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世界中に大きな影響を持つアメリカと中国が水を奪い合うようなことになれば、両国に挟まれた日本も含め、各国の地政バランスが大きく揺らぐことは必至。常日頃から水の無駄遣いに気をつけるのももちろん大切なことですが、外から起こる混乱に対してどう対処するのか、真剣に考える必要がありそうです。

『図解でわかる 14歳からの水と環境問題』(インフォビジュアル研究所/太田出版)は2020年4月16日発売。1500円+税。

【関連リンク】
図解でわかる 14歳からの水と環境問題-太田出版

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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