事故物件サイト『大島てる』管理人が語る「サイト発明のヒントになった書」

スポンサーリンク

殺人・自殺・火災による死亡事故等があったいわくつきの部屋に1人の芸人が住んでみた実話を原作とした映画『事故物件 恐い間取り』が、8月末に公開。「事故物件公示サイト」の『大島てる』を運営する大島てるさんによる「事故物件解説動画」も公開されています。

大島さんはいわば「事故物件のプロ」ですが、そんな彼が唸った本が、『吾妻鏡』。かの徳川家康が愛読書としたこの本は、鎌倉幕府創業の記録をつづった古典の名著ですが、大島さんは、それをコミックした竹宮恵子先生の『吾妻鏡』が、事故物件サイトの運営に深く関わっているそうです。『ケトルVOL.55』で、このように語っています。

〈ストーリー:中世日本の大きな歴史的転換点となった源氏と平家の争い。源義経は類稀なる戦術センスをもって戦で勝ちを収め、ついには壇ノ浦の戦いにも勝利。平家側についていた安徳帝(天皇)は入水自殺に追い込まれる。しかし、武勲に自信を持っていた義経は、それを認める素振りを見せない兄・頼朝に不満を持ちつつあった。鎌倉時代研究の基本的史料とされる『吾妻鏡』を少女漫画の大家・竹宮惠子が描き下ろした一冊〉

「私は『吾妻鏡』から、記録し続けることの重要性、そしてそもそも勝ち残らなければ記録し続けられないことを学びました。さて、この1コマ(※)をご覧ください。

【(※)叔父・行家を討てとの頼朝からの命令に「なぜ罪なき叔父を討たねばならぬのか」「なぜこの義経の手柄を兄は認めて下さらぬのか」と怒る義経。兄を討つ宣旨を出さなければ自殺すると義経から迫られるのが後白河法皇。「宣旨をお出しいただけなくば、両名ともに参上して自殺すると……」というセリフに、「とんでもない。御所内で死なれてみよ。京中はわしを非難するわ。御所に穢れはいかん」と言い返す】

自宅で自殺されては困ることが描かれています。古典のこういった描写に慣れ親しんできたからこそ私は事故物件サイトを発明できたのではないでしょうか。

皆さんはこのビジネスのヒントの宝庫から何を学び取りますか? なお、作中には『貞観政要』など他の書物も登場します。本作を読み終えた後何を読むか、それも教えてくれるのです」

御所での自殺を恐れる後白河法皇……事故物件になって困るのは、鎌倉時代の人々も同じだったということです。古典を読むのは、学生時代の古文でウンザリという方も多いでしょうが、読みつがれる書には色々なヒントがあるということ。それを大島さんは教えてくださっています。

◆ケトルVOL.55(2020年8月17日発売)

【関連リンク】
ケトル VOL.55-太田出版
大島てる

【関連記事】
S・キングから影響を受けた藤田和日郎が選ぶ「最も恐怖を感じた作品」
アナタはどれ? 小2で出会う“初めての読書”「国語の教科書」4種
袋綴じの究極形「オール袋綴じ雑誌」 キャッチコピーは「25回破れます!」

※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

関連商品
ケトル VOL.55
太田出版