ノーラン監督が師から学んだ「プレッシャーに負けずに大作を作る方法」

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1998年公開の初の長編作『フォロウィング』以来、『メメント』(2000年)、『ダークナイト』(2008年)、『インセプション』(2010年)、『インターステラー』(2014年)など、数々のヒット作を飛ばし、現在公開中の『TENET テネット』も大ヒット中のクリストファー・ノーラン監督。徹底してリアルにこだわり、多額の制作費を掛けて圧倒的な映像を提供するノーランですが、“お金の使い方”を学んだのが、初のメジャー進出を果たした『インソムニア』(2002年)でした。

同作は、1997年に製作された同名ノルウェー映画のリメイクで、白夜のアラスカを舞台にアル・パチーノ、ロビン・ウィリアムズ、ヒラリー・スワンクというアカデミー賞俳優が共演。少女殺害事件の真相を追うサスペンス映画であり、脚本を練りまくるノーランのフィルモグラフィでは唯一「監督」でしかクレジットされてない異色作でもあります。

このときノーランは32歳。まさに「期待の新人」といえる抜擢でした。その機会をもたらしたのは、映画監督のスティーブン・ソダーバーグ(『オーシャンズ11』シリーズなど)。『メメント』に感動したソダーバーグが監督に推薦し、ジョージ・クルーニーと共に設立した自身の映画制作会社「セクション・エイト」によるプロデュースまで担当しました。しかも、ノーランが大手スタジオと対等に渡り合えるように、先輩監督としてさまざまな助言もしたそうです。

それは例えば、プレッシャーとの向き合い方。ソダーバーグは、ハリウッドの新人監督たちが多額の制作費からくる重圧に押しつぶされ、内容に妥協してしまうことをよく知っていました。そこでソダーバーグはノーランに、準備を入念にすることで、スケジュールも予算も実際の見積もりより余裕をもたせるよう勧めます。そうすれば現場で想定外のことが起こっても冷静に対処できるからです。

ノーランはこの助言に従い、初のメジャー作品の撮影を満足な出来栄えで終えることができました。以降、ノーランはソダーバーグを“メンター”と仰ぎ、大作映画でも妥協せず、自分のやりたいことを追求するための心構えを学んでいったのです。

◆ケトルVOL.56(2020年10月15日発売)

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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