上間陽子『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち

それは、「かわいそう」でも、「たくましい」でもない。この本に登場する女性たちは、それぞれの人生のなかの、わずかな、どうしようもない選択肢のなかから、必死で最善を選んでいる。それは私たち他人にとっては、不利な道を自分で選んでいるようにしか見えないかもしれない。上間陽子は診断しない。ただ話を聞く。今度は、私たちが上間陽子の話を聞く番だ。
この街の、この国の夜は、こんなに暗い。

岸政彦(社会学者)

沖縄の夜の街で働く少女たち。
虐待、売春、強姦、ネグレクト……
大文字の社会問題として切り取るのではなく、
苦しむ彼女たちの歩んだ軌跡に歩み寄る。
少女たちが、自分の居場所をつくりあげていくまでを、
傍らに寄り添い、話を聞き続けた著者が記録する。

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裸足で逃げる
沖縄の夜の街の少女たち

著: 上間陽子
表紙写真: 岡本尚文(『沖縄02 アメリカの夜』より)
搬入発売: 2017年1月31日
仕様: 四六判仮フランス装
価格: 1,870円(本体1,700円+税)
ISBN: 978-4-7783-1560-3
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〈お知らせ〉
◆2021.3.3 著者・上間陽子さんが第14回「[池田晶子記念]わたくし、つまりNobody賞」を受賞されました!
◆2020.9.21 耳で聞くオーディオブック版が発売。
◆2018.3.23 第2回「大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞」候補作に選ばれました。

本書への反響

(五十音順、敬称略)

  • すごい本、でした。
    ため息が出て、言葉が出てこない。
    こんなに苛烈な話なのに、ずっと取材対象の少女たちに寄りそう優しさが上間さんの文章からはにじみ出ていて、その温もりによって中和されている感覚があります。
    ここに出てくるのはすべて沖縄の女の子たちですが、沖縄以外でもこういう話はいろいろあるんじゃないだろうか、ということが気になりました。
    私たちが何の気なく人の多い電車に乗って苛立ちながら帰宅し、レンジで温めた美味いとも美味くないともいえない昨日の残りのご飯を食べ、ぼんやりテレビを見ているうちに「ああ、風呂入らなきゃ」「明日のクレーム処理行きたくないな」とか考えてるその時間に今日眠るところもない少女が身体を売ってどうにか生きているという現実はしっかり聞けば聞くほど、暗鬱な気分になります。
    ただ、これは最近素晴らしいノンフィクションを読んだ時に共通する感覚ですが、「私たちは本当に他人を知らない」と思わされる一冊でした。
    沖縄のキャバクラ(風俗も含まれるのかも)は行き場のない少女たちの受け皿になってるんだな、と思いました。
    娘の夫が暴力を振るっているのを知りながら、娘をその夫のところに返す父親が「これを持っていきなさい」とクワガタを持たせる話が一番刺さりました。

    知らないことばかりです。
    いろんな人に読んでもらいたい本だと思いました。
    いろんな人に、この本のことを話したいです。

    伊野尾宏之(伊野尾書店)

  • 読みながら、行間の空白に流れる時間を見ていた。

    それは記憶をたぐるさなかの沈黙かもしれないし、ふと顔を上げたときの視線かもしれないし、膝や胸をかかえるような動作かもしれない。

    言葉と言葉の間の空白に、彼女たちの肉体があまりにも鮮やかに、残酷にたちあがるのを、とめることができなかった。

    行間の空白をこんなにも苦しいと思ったことはなかった。

    おかれた状況に対して、よりよく生きたいと思うように生物ができているのなら、どう考えてもここに書かれているのはわたしだったかもしれないのだ。
    なぜわたしではなかったのか。

    2歳の娘が昨日、シャワーから放射される水を「ギターみたい」と言って手を伸ばした。
    このまっさらな感受性をわたしはこのさき守れるのか。
    絶望にさらされない未来を本当に約束できるのか。

    わたしはこれから成長する娘に触れるたびに、その感触の底のほうで、この本に書かれた彼女たちのことを思いつづけるだろう。
    そしてこの本に書かれていない、おそらく無数の彼女たちのことを想像しようとするだろう。

    それは無意味で無力かもしれないが、この本を読んだことを絶対に忘れたくない。
    いまはそれしかできない。

    大塚真祐子(三省堂書店神保町本店2階)

  • 沖縄の女性達の姿から、たくさんのことを教わる――痛みと苦しみを伴いながらも。眼を閉じてはいけない。沖縄という存在の両極を見なければいけない。その場所の昼と夜、陰と陽を理解せねばならない。沖縄に住まう人々の営みを見据えなければならない。そして何より、息する限り希望を持たねばいけない。
    そう、抵抗こそ希望に他ならない状況がある。そこでは逃げて逃げて抵抗して、暴力の彼方まで進んで、生きることを選び続けなければいけないのだ。

    大矢靖之(紀伊國屋書店新宿本店仕入課係長)

  • 「あなたが知っている世界がすべてではない」という言葉に、頭をなぐられたような衝撃を受けた。たとえ悪意がなかったとしても、どうしようもなく世の中に偏見はみちていて、必死に生きる少女たちを理不尽に苦しめてしまう。わたしはそれに、加担していないだろうか。

    自分の身の安全を守り、子供を育て、少しずつでも前に進もうとする。そうやって必死に生きる彼女たちを批判する権利なんて誰にもない。でも、まだ幼い頃からそんな切実さと向き合わなければいけないということは、悲しいことかもしれない。
    文中に何度も出てくる「もっとゆっくりと大人になっていい」という言葉は、深い祈りのようだった。

    少女たちの声は、上間さんが問いかけなければ、存在しなかったことになっていたかもしれない。それがこの本の中できちんと認められて、とても大事なことを教えてくれた。大人たち全員に、この本を読んで欲しいと思う。

    佐藤友理(BOOK MARUTE)

  • わたしが感じたのは、彼女たちの切迫した、その中でのいきいきとした美しさ、 生きている感じ。
    それから、確実に、「癒し」と呼べるもの。

    上間さんのような人が彼女たちに寄り添ってくれてよかった、と思うことと同時に自分もその空間にいて、まるごと自分もすくわれていく感覚でした。

    いい本って、心の、長いこと閉めっぱなしにしていた窓を開けてくれるような気配があります。
    誰かにふと自分のことを話したくなる、聞いてもらいたくなる、そんなさわやかな風を感じる本でした。

    花田菜々子(パン屋の本屋)

  • 圧倒的な読後感。
    読んでいて呼吸がうまく出来なくなる瞬間が幾度かあった。
    沖縄に生きる「彼女たち」の鮮烈な生が直接自分の中に響いてくるよう。
    その声、その叫び、悲鳴が全力で「これは私たちの現実」と訴えかけてくる。
    では著者は彼女たちと読者を媒介するユタなのか。
    そうではない。
    上間さんは寄り添うことでこぼれ落ちてくる言葉を丁寧に拾っていく。
    彼女たち自身それが必要な対話であったことに気が付かないままに。
    神託を下すユタではなく、頼れる友人であり心根の優しい教育者だ。
    ヘビーなエピソードを含む本書には、祈りがあり、ときに痛快なユーモアがある。
    そしてどこか遠くから聴こえてくる。
    ガールズアーオールライト

    花本武(ブックスルーエ)

  • 社会学者、朴沙羅さんのご感想がこちらからご覧いただけます。
    Sara Park - 頂き物:『裸足で逃げる』

    朴沙羅(社会学者)

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著者プロフィール

上間陽子(うえまようこ)

一九七二年、沖縄県生まれ。琉球大学教育学部研究科教授。専攻は教育学、生活指導の観点から主に非行少年少女の問題を研究。一九九〇年代後半から二〇一四年にかけて東京で、以降は沖縄で未成年の少女たちの調査・支援に携わる。共著に『若者と貧困』(明石書店)。本書が初めての単著となる。