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『文系男子的“電子煙草道”ノススメ』

『文系男子的“電子煙草道”ノススメ』

ケトル編集部

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#1 非オラオラ的で折目正しいVAPE道に期待

 今日も濃厚な水蒸気がおいしいなぁ。

 ……などとケムリを吐き出しつつ、はじめまして。漆原直行と申します。編集者・ライター稼業を営んでおります。この枠で数回に渡り、僕とVAPEの付き合いについて、つれづれに書き付けていくことになりました。しばし、お付き合いください。

 さて、本連載の主題は「文系男子的な文脈から見た、趣味のVAPE道」なるものです。といっても、何を語らんとしているのかイマイチ判然としませんね。要は「新しい嗜好品としてのVAPEと、どんな風に付き合っていきましょうかねぇ」てなことについて、雑感を述べていくとザックリご理解いただければ幸いです。

 そんなわけで、今回は初回でもありますし、僕がどんな形でVAPEを楽しんでいるかについて、まずは自己開示してまいりましょう。

 僕がVAPEを始めた理由──それは“ニオイ”です。

 とにかく、タバコのニオイがイヤになってしまったんですね。20代のころは、それこそデスクで仕事をしながらチェーンスモークし、打ち合わせで喫茶店に入れば必ずタバコに火を付け、食後の一服は絶対に欠かせない、といった勢いで、1日に1箱~1箱半くらいは吸っていました。

 ところが30歳になるかならないかのころ、住まいを引っ越したんですね。で、「せっかくの新しい住まいなのに、部屋中がタバコくさくなり、壁をヤニで汚してしまうのも、ちょっともったいないな」という心境になり、キッチンの換気扇の下でしかタバコを吸わなくなったのです。

 そうなると不思議なもので、それまであまり気にならなかった、部屋のタバコくささ、自分の服や髪の毛についたタバコくささに俄然意識が向くようになりました。タバコって、なんてくさいのだろう、と。喫煙者でありながら、タバコのニオイが嫌いという状態です。 そんな調子で、外ではあまりタバコは吸わず、家のキッチンで換気扇を回してたまに吸う程度の喫煙者となり、1日に3~5本ほどしか火を付けないという生活を何年も送ることになります。

 そして2年ほど前、VAPEに出会うのです。インターネットで偶然、VAPEに関する記事を読み、ささやかな興味からアトマイザーやバッテリーがセットになったエントリーモデルを購入してみました。これが、思いのほかおいしかったわけです。「ちょっと口寂しいとき、タバコのかわりになるかな」くらいに考えていたのですが、タバコの代替品としてではなく、VAPEというまったく別の嗜好品として、素直においしい。正直、驚きました。吸って吐き出すのは水蒸気ですから、一般的なタバコのようにニオイも付かず、部屋もくさくならならい。むしろ、おしゃれなアロマを焚いたような、かすかな残り香が部屋の快適性すら向上させてしまうなんて。「これはスゴイぞ」と軽く興奮したことをよく覚えています。

 なので、ハマるのもアッという間でした。「このリキッド、どんな味がするんだろう」「このアトマイザー、ケムリがどのくらい出るんだろう」と次々にアイテムを買いそろえているうちに、いまでは生活に欠かせない必須アイテムとなってしまいました。キーボードを叩きながら、本を読みながら、テレビで映画などを鑑賞しながら、まるで自分好みのコーヒーや紅茶を厳選して、楽しむような感覚で日々、VAPEを嗜んでおります。

 禁煙目的で始めたVAPEではないので、明確に「紙巻きタバコをやめる」と意識してはいませんし、実際、いまでもたまにタバコを吸うこともありますが、本数は激減しました。せいぜい週に5本程度かもしれません。結果的には、かなりの節煙になっています。

 ただ、かようにイイことづくめのVAPEではあるのですが、個人的に少々馴染まない一面もあります。それは、VAPEカルチャーから醸される強面感であり、不良感。誤解を恐れず申してしまうなら、ちょっとヤンキーくさい印象が醸されているのが、どうも苦手でして。昨今のVAPEムーブメントは、アメリカ西海岸の文化──HIPHOPといったストリートカルチャーの影響が少なくありません。なので、それもVAPEの一様式として捉えてはいるのですが、VAPEカルチャー周辺から醸される、えもいわれぬヤンキー感がどうもしっくりこないのです。

 いや、VAPEはお酒やコーヒーなどと同じ嗜好品ですから、人それぞれに楽しみ方があるのは重々承知しています。ただ、文系男子的な心性を持つ者にとっては、オラオラ感を放っている方面に対して、どこか身構えてしまうところもあるんですよねぇ。

 VAPEは非常に懐の深い、多様な楽しみ方ができるアイテムであり、文化だと思うわけです。まだ新しいカルチャーですから、今後、いろいろな展開、発展も考えられるでしょう。だからこそ、肉食的で、オラオラで、マッチョ的な嗜み方だけでなく、穏やかで、ファンシーで、さりげなく折目正しいベクトルでの嗜み方も、今後はもっと加速していいんじゃないかと。

 そんなことを思いながら、今日も美味なる水蒸気を楽しんでいる次第です。

【プロフィール】
漆原直行(うるしばら・なおゆき)
1972年、東京都生まれ。
編集者・記者・ビジネス書ウォッチャー。
ベリー系、スイーツ系のリキッドを好むVAPE愛好者。

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