INTERVIEW FILE 022  大木亜希子
Feb 15, 2020

INTERVIEW FILE 022 大木亜希子 (ライター)

不定期にもほどがある「槙田紗子のマキタジャーナル」、突然の最新回配信しました! 槙田紗子が心から敬愛する皆さんにインタビューする本企画ですが、今回は元SDN48で、現在ライターとしても活躍中の大木亜希子さん。彼女が著する『アイドル、やめました。AKB48のセカンドキャリア』が話題を呼ぶ中、もう一人の元アイドル、槙田紗子が公開トークイベントでぶっこみました。あまりに面白かったので、当日の模様をマキタジャーナルでもさらします。 是非、ご一読ください!

編集=原カントくん 文=槙田紗子

1  2  3  4

INTERVIEW FILE 022  大木亜希子 写真1
INTERVIEW FILE 022  大木亜希子 写真2

槙田 皆さん、今日はね、アイドルのセカンドキャリアを高円寺で考える夜ということで。渋いタイトリング。今日はお付き合いお願いします。楽しんでいきましょう。では、乾杯。

大木 乾杯。

槙田 マキタジャーナルというのは、私が会いたい人に会いに行って、私が取材をして、文字を起こし、原稿を書くところまでやるという連載でして。

大木 ライターだよね、もうね。

槙田 とんでもございません。プロのライターの亜希子さんの前で恐れ多いですけど、私のような素人がそういうことをやるところを、お見せしているという感じです。それで、今私が会いたい亜希子さんをお呼びさせていただきました。

大木 ありがとうございます。

槙田 よろしくお願い致します!

大木 お願い致します。

槙田 亜希子さんの自己紹介を簡単にお願いしてもいいですか。

大木 分かりました。もともと私は15歳ぐらいから女優活動をしていたんですけども、20歳でSDN48というAKB48さんのお姉さんグループに入りまして、2年間の末、一斉卒業という名の解散、そして、そこから2年半ぐらいは地下アイドル的なものをやっていました。それこそ渋谷のduoさんとか、吉祥寺のCLUB SEATA、その辺のね。

槙田 懐かしい。

大木 懐かしいね、CLUB SEATA。すごい近い、みたいな。

槙田 天井低い、みたいな。

大木 お客さんの数よりスタッフと演者の数の方ほうが多い時代です。でも、SDN48のときは武道館、西武ドームに立ってた人間が、見栄かもしれないですけど、なんかこう、ファンの人、目減りしちゃうしなあ、正直思ったんですよ。それで、25歳でニュースサイトしらべぇというところで記者になりまして、皆さんが普段Yahoo!トピックスとかで読んでいるようなウェブ記事を、1日に何個も書いていました。別に自分の名前が出なくても、本当に芸能のマスコミ記者みたいな感じで、プレスリリースが来たらどこにでも写真撮りに行ったりしたんですけど、3年経った今は独立して、『アイドル、やめました、AKB48のセカンドキャリア』という、48グループを卒業した女の子たちの第2第二の人生の本を書いたりなんかしています。ちなみに、今月末(イベント時)には、初めての小説が出ますので、11月30日発売の私の私小説になるんですが、『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』っていう、タイトルだけ聞くとちょっと物騒な本。もう一回、言います。『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』です。ちょっとね、会社員のときに、文章のスキルは学んだけれども、いろんなことがあって病んじゃって、復活するまでの道のりを書いてありますので、長くなって恐縮ですけれども、そんな感じで普段、大体ライターやってます。よろしくお願いします。

槙田 本当に勢いがとまらない亜希子さんなんですけれども、実は、私たちは2012年に、『ダウト』という舞台で、共演しておりまして、当時亜希子さんSDN48さんで活動されていて、私はPASSPO☆で活動していて。そこからお会いする機会はなく、2019年まで時は過ぎ、で、先日亜希子さんがキャスティングや編集などをされているWEB媒体のグラビア企画に呼んでいただきまして、本当に久しぶりにお会いしました。亜希子さんのSNSは見させていただいてたので、ご活躍はずっと見てたんですけれども、まさか亜希子さんがライターを担当する仕事が私に来るって、本当に思ってなくて、私、びびってました(笑)。

大木 すいません。どこまで露出ですか。あの、ワキとかはちょっと、みたいな感じで。大丈夫だよ。分かるよって言って(笑)。

槙田 過去のページを掘ったんですけど、そのグラビア企画は綺麗なお姉さまたちがどこかしら露出していて、絶対に私、浮く!!と思って。ご期待に沿えなかったら、嫌だなと思って、めちゃめちゃ確認して(笑)

大木 気持ち分かると思った。紗子ちゃんもフリーランスでご活躍なので、そういうのちゃんと自分で確認するの、上から目線じゃなくて、偉いなって思った。二つ返事でやりますじゃなくて、ここからここまではできるんだけど、ここから先はできませんって言うの、まじで大事じゃない。

槙田 そうですね。

大木 もう我々は、元アイドルで、振付師とライターだから、逆にすごく頼もしくって、お仕事できてよかったなって思いました。

槙田 嬉しいです。でも、それを身に付けたのもアイドル時代の経験からなんですよ。フリーになって、それを学んだのではなくって、アイドル時代、なんでも二つ返事でOKタイプだったんですよ。やります!やります!やらせてください!みたいな。チャンスがあれば、がっついていくタイプだったんです、意外と。で、それをやっていたら、見失ったんですよ、何かを。

大木 何かを見失っちゃった。

槙田 何かを。

大木 分かる、分かる、感覚的に。

槙田 死ぬほど病んだときに、当時のスタッフの方々に言われたのが、あなたが本当は出来ないことを出来るって言うことが、周りに迷惑をかけるって言われたんですよ。

大木 真理だわ。

槙田 ですよね。

大木 つらいけどね。

槙田 でも当時の私は、やる気がある人が評価されるものだと思って、やる気があるように振る舞っていたというか、実際、やる気があったから、そうしてたんですけど。実際、自分が機能停止してるから、それは迷惑じゃないですか。だからそこで、「これは私には出来ないです。」と言うことが、どれだけ大事かを学んだんですよね。

大木 なるほどね。

槙田 性格的にそういうの聞くの結構、苦手なんですけど、でも後々自分が苦しむことが、相手を苦しめるんだと思いながら、聞くようになりました。

大木 後からやっぱりこういうつもりじゃなかったっていうのも、フリーランスの我々は通用しないじゃないですか。

槙田 そうですね。

大木 端的に言います。私一回人生詰んでるんですけど、“大木亜希子 おっさん”で調べてください。雑?ごめんなさい。少しだけ説明すると、私が人生詰んで会社員を辞めてフリーランスになってから、住むところがなくなったときに、赤の他人のおっさんとルームシェアすることを思いついて、ササポンさんというおじさんと、今ルームシェアしてるんですよね。恋愛感情もないし、肉体関係も一切ないんですけど、家の1階と3階で。それで、元アイドルになってから心理学の先生に聞きにいったの。私も本当に頑張り過ぎちゃうし、紗子ちゃんみたいに期待に応えなきゃって、多少無理してでも仕事をこなしてたら、病みました。みたいな感じで先生に言ったら、どうやらね、アイドルっていう職業は人よりも頑張るように出来てるんですって。アイドルビジネスの構造上もそうだし、そもそもアイドルを目指すような子たちって、人の期待に絶対に応えなきゃって思いがちな性格だから、無理をしても気付かない人が多いって言われて、なるほどなって。

槙田 なるほど。

大木 プロが言うんだから、そうなんだろうなって。でもさ、今の今まで気付かなくなかった?やるのが当たり前みたいな。

槙田 はい。アイドルになりたいと思う理由って、人それぞれ違うと思うんですけど、自分が目立ちたいっていう気持ちが先行してたとしても、結局、人の期待に応える方向に行くなって、今思いました。

大木 なるほどね。

槙田 男の子がモテたくてバンド始めるとか、そういうのと同じように、女の子だってかわいいって言われたいから、アイドル始めるとか、全然あると思うんですよ。

大木 入口ね。

槙田 でも結局、人の期待に応えることがうまくないと、その中の世界では生き残れないんですよね。

大木 絶対、そうだよね。自分だけじゃ活動できないからね。

槙田 はい。だから、握手会で、名前や顔を覚えてくれる子が人気が出たりとか、でも、それって努力と才能両方必要だったりするし、向き不向きもあるから、合う子と合わない子で分かれていくんだなって思います。

大木 紗子ちゃんの言うとおり、最初に思ってた目標と、ちょっとずつ変わっていって、ファンの人の反応を見て、キャラを微修正して、大人スタッフの意見も聞いてってなると、当初のもくろみとか狙いとかがどんどんずれていって、でも置かれた場所で咲かなきゃいけないから、またそこで無理が生じて、みたいな。だからね、アイドルっていう商売は、若いうちにアイデンティティーの崩壊が起きますよね。

槙田 そうですね。

大木 難しい言葉、言っちゃった。すいませんね。けど、やっぱりそれがあったから、私は今、書く方向に行ってると思う。決して現役アイドル時代、無理をしてたとか、そういうことでもないんですけど、ステージに立ったら笑顔でいなきゃいけない、SNSではファンの皆さんありがとうございますっていう紋切り型の中で、心の底辺ではもっと様々な感情を持ってるわけですよ。だって、一発で自分のやりたいことを見つけて、決めて、できてる人って、何人います?って感じなんですよね。私たちも一応アイドルっていう職業目指してなりましたけど、それが正しいかも分からないし、自分より人気な子はもっといるし、お金ももっと稼ぎたいよな、本当は。とか、いろんなことがあると、心にもやもやがたまって、だからライターとして、文章を書く仕事で自分の正確な気持ちを一言一句残らず伝えたいって思ったんです。

槙田 皆さん、亜希子さんの文章、読んだことがなかったら、是非、読んでいただきたいんですけど、本当に、今、おっしゃられたお言葉、すごく納得というか、読んでいてめちゃめちゃに感情が伝わってくるんですよ。

大木 感情しか、むしろないかも。文章ってより、感情だよね。

槙田 私、本当に本読むの苦手なんですよ。でもこの、『アイドルやめました、AKB48のセカンドキャリア』は盛らずに2時間ぐらいで全部読んじゃって。

大木 嬉しい。

槙田 文章が読みやすいっていうのも、もちろんあるんですけど、亜希子さんがさらけ出している感じが、すごい気持ちよくて。

大木 ありがとう。この本に登場する元アイドルちゃんたちの人生がかかってると思うと、この取材時間、大体2時間設けてるんだけども、書ける書けないはあとで判断するんで、すいませんけど、全部話してくださいって言った。だからもう、ある種カウンセリングの旅とういうか、すごくおこがましいけれど、私も同じ思いしてるんです。48だったけど、別に特別人気もありませんでした、でもそういうことは踏まえて全部教えてくれませんかって言ったら、この8人じゃないんだけど、断られた人もいる。私は今、アイドル時代のことを隠して生きてるんでっていう、会社NGの出た子もいたし。それはもう当然だよなって思う。アイドルだったけど、そればかりが人生じゃないし、隠したい子も、ネガティブな意味じゃないんだろうね。

槙田 確かに。過去をしっかり隠して次のステップにいきます!みたいな方もいますもんね。

大木 そうそう。

槙田 この本を読ませていただいて、取材してる対象の方々の半数以上がもう芸能界自体やめられて、企業に勤めている方々なんですよ。そういう方々に取材って普通できないじゃないですか。できないっていうか、亜希子さんの行動力でここまでこぎつけて、貴重なお話を私たちはこうして読ませていただいてると思うんですけれど。今、アイドルのセカンドキャリアプチブームだと思うんです。私だったら、アイドルをやめて振付師に転身、亜希子さんだったらライターに転みたいに取材して頂くこととかもあるんですけど、私はこの本を読んだときに、セカンドキャリアってこっち!と思っちゃって。

大木 芸能じゃない道ね。

槙田 人生の振り幅をこんなに広いんだよっていうことを、すごく伝えてくれてるなと思ったんです。私とか、ゆったら人生の振り幅めちゃくちゃ狭いんですよ。結局、今も立場が違うだけで、芸能に関わってる。振付してる対象がアイドルの子たちで、アイドルフェス開いたりとかして、結局アイドルに関わってる。だから、別に転身というほどでもないのかなって。年齢とともにポジション変わっただけっていう感覚なんですよ。でも、本当にこの本の中に登場する保育士の方とか、ラジオ局に勤めてる方とか、アパレル店員の方とか、その人たちには、もう皆さん、会えないわけじゃないですか。絶対に会えない人の、そこに至るまでの経緯を読むことができて、すごい感動しちゃって。

大木 嬉しい。ありがとう。

槙田 オタクっていう言い方しますけど。

大木 いいよ。あえて、オタクね。

槙田 オタクの方々は、アイドルが、活動しているうちに全力で応援するのがオタクとしての生き方じゃないですか

大木 私のこの本のAmazonレビューでも、アイドル業界の裏側まで描かれていて読みたくなかったって書いて下さる方がいて、買って読んでくれてありがとうっていう反面、でもなあ、女の子の1一人の人生なんや、みたいな。なんて言うかな、どんな考えがあってもいんだよね。でも私、語弊を恐れずに言うならファンの人の気持ちは100%理解はできない。なぜかっていうと、私もアイドルを卒業し、生きていかなきゃいけなかった。食っていかなきゃいけない。食いぶちを稼ぐために文章を書く、原稿料をいただく、とか、過去の恋愛についてエッセイを書いてみるとか。本当それぞれ、個々によると思うんだけど。だからさ、アイドルが戦国時代を迎えて、約1万人元アイドルがいると、一説によると、言われているんですよ。その中で誰しもが、セカンドキャリアをどうしても歩んでいかなきゃいけない。むしろそれは、定めだよね。その中で、どうやって歩んでいくかっていうのは、皆さんが応援していたアイドルの子たちも、起こるべくして起こっていくことだから、ちょっとね、すごいトークショーっぽくなってきたね。企画に準じたトークしてるよね。

1  2  3  4