古屋兎丸による肖像画

ご依頼主様より

M・Sさん(学生)
ご依頼の理由とイメージ
今年3月に高校を卒業します。その母校は廃校になり、80年受け継がれ地域に根づいていたセーラー服ももう私たちの学年でおしまいです。最後であったことは誇りですが、大好きな母校と制服を着る人がもういなくなってしまうことをさびしく思い、応募いたしました。制服で、校舎の中庭にいるところを描いていただきたいです。OGは、母校のことをなかったことにはしたくないという思いが強くあります。大好きだった母校と制服を、ぜひ古屋先生に描いていただきたいです。
完成画へのご感想
この中庭は入学する前、受験で目にした時から綺麗だなと思っていて、実際入学してからもよく遊んだ場所なので、とても嬉しいです。この制服を着た生徒が代々ずっと変わらずに町中にいて、地元のOGの方が声をかけてくれたりするのが良いなと思っていました。現在の学校にはその時代を残す意思がないようで残念なのですが、この絵からは私が好きだった頃の学校の空気感とか佇まいが伝わってきて驚きました。1クラス15人だけで中高クラス替えもなく、12歳から18歳までいつも一緒でした。学校がなくならなかったら応募してなかったかもしれないので複雑な気持ちなんですが、この絵の友達の誰がどの子か、私にはわかります。ありがとうございました。

制作を終えて

作家: 古屋兎丸
学校に対する想いが複雑でいらしたので、表情は、笑ってるでもなく悲しんでるでもなく、少し憂いのある雰囲気を出したいと考えました。大好きな友達と大好きな校舎なんだけど、それがもうないという感情です。学校の形だけは残ってるものの、中身がなくなっていることの象徴が白樺だと思い、その白樺を絵の中心に、そしてご本人になるべく近い場所に置きました。実際に学校を見に行ったからこそ描けた絵だと思います。後ろ姿の友人の皆さんは、直接顔は見えないわけですが、ご本人が見たら「あ、これあの子だ」とわかるように気を遣いました。ぜひ、お友達にも見せてあげてください。

© 古屋兎丸 画材:アクリル絵具、画用紙 完成:2017年11月
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