飛ぶのをやめたペンギン かわいい見た目に隠された驚きの機能

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その愛らしい見た目から、動物園でも屈指の人気者のペンギン。しかし、彼らはただかわいいだけではありません。その生態をよく観察してみると、白と黒の特徴的な体には、人間もびっくりの「すごい機能」がたくさん詰まっていることに気付かされます。

そもそも、ペンギンは鳥です。彼らは海鳥の仲間であり、水の中を泳ぐ際もエラではなく肺で呼吸しています。ペンギンは翼を大きく広げて空中を舞う代わりに、水の中を飛ぶように泳いでいるのです。

とはいえ、水の中はペンギンがエサとする魚には有利な環境です。魚は自分を狙ってくる鳥から逃れるために、ものすごいスピードで逃げまわります。当然、魚はずっと水中に潜っていても、溺れるということはありません。それに対して、ペンギンはいちいち水面に顔を出して呼吸しなければならないのです。常識的に考えて、あっという間に逃げられてしまいそうなものです。

しかしペンギンは鳥としてのデメリットを、驚異的な進化によって克服してきました。例えば、水中でも目を開けていられるように、ペンギンの目は「瞬膜」という半透明の薄い膜に覆われています。これは細菌やゴミから目を守る役割も果たし、水中でもしっかりと獲物を狙い続けることを可能にしています。

ほかにも、空を飛ぶ鳥はできるだけ体が軽くなるように、骨の中がスカスカになっています。しかしペンギンは体が軽いと水に浮いてしまいます。そのため骨密度が高くなっており、見た目に似合わず意外と体重が重いのです。翼(ペンギンの場合は「フリッパー」ともいいます)の骨も硬く、筋肉が発達しているため、水の中をしっかりと掻くことができるようにもなっています。

そして、特に驚くのは羽の進化です。ペンギンの翼に生えている羽毛のひとつひとつは、ほかの鳥に比べてずっと小さく、びっしりと重なり合っています。水に濡れるとお互いの羽根がかみ合い、全体が1枚の布のようになって体を覆うのです。しかもこの羽毛は表面が脂でコーティングされており、撥水効果も抜群。長く水中にいても体が冷えることがなく、水から上がってもすぐに乾くようになっています。

その脂はペンギンのお尻の部分にある「尾脂腺」という部分から分泌されます。脂をクチバシで上手にすくい取って全身に塗ることで、羽毛を天然のドライスーツにしているのです。ペンギンは空を飛ぶことをやめた代わりに、羽根を究極の防寒具として進化させてきたというわけです。

◆ケトル VOL.33(2016年10月14日発売)

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。