三国志ファンにはおなじみの「ジャーンジャーン」を探してみた

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6月14日発売の雑誌『ケトル』は、特集のテーマとして「横山三国志」をピックアップ。時代が変わっても人気が衰えない横山光輝の『三国志』の魅力について、さまざまな角度から検証しています。いささか乱暴ながら、『三国志』といえば、戦のとき、とりわけ奇襲のときに出てくる「ジャーン! ジャーン!」という銅鑼の音。今では有名すぎて、ネットの絵文字テンプレートにもなっているあの銅鑼を探してみました。

だいたいは兵士が手で持って鳴らすのが「横山三国志」の一般的な登場の仕方ですが、本物の三国志通を目指す者としては、これを一生に一度は鳴らしてみたいもの。しかしそもそも現代では残っていない可能性もあります。実態を確かめるため、都内にある中国楽器専門店を取材することにしました。

向かったのは十条駅(東京都北区)にある中国屋楽器店。店長さんに案内してもらうと、次々と出て来る大きさの違う銅鑼の数々。ここに三国時代に使われたものと同じ銅鑼があるのでしょうか?

「いや、三国時代の銅鑼とは全然違うものです」

 え、そうなの? いったい何が違うんですか?

「使用目的の違いが大きいです。銅鑼に限らず太鼓などの打楽器は、合図など人に情報を伝える手段として使われたのが始まりです。その後、芝居などの娯楽が発達していくに従い、楽器として使われるようになりました」

戦争に使われていた銅鑼は、月日が経つにつれ楽器として進化していったということですね。

「1978年に発掘された西漢(前漢)初期の銅鑼が、現存している最古のもとのいわれています。紀元前2世紀から中国の内陸に伝わり、当時は主に軍事用でした。宋の時代から宮廷音楽と民間音楽の伴奏楽器として登場するようになり、明・清の時代からは、地方劇に欠かせない楽器となったのです」

そして最大の問題、これって買うことはできるのですか?

「できますよ! 当店で扱っているのは22cmから130mの銅鑼ですが、22cmだと800円、一番大きいものになると49万8000円です」

小さいものなら買えないこともないものの……。そもそも現代では、この銅鑼はどのように使われているのでしょうか?

「大きいものになると低周波(人間の耳では聞き取れない音)が発生するので、治療器具として使用しているところもあるようです。また、当店の銅鑼はプロレスの開会式やパチンコ店のオープニングイベントなどによくレンタルされていますね」

もちろん楽器として使われているんですよね? 三国志キッカケの人はいるのでしょうか?

「銅鑼はあんまりいないです。中国楽器だと二胡と古筝を習いに来られる方が多いです。以前『三國無双』というゲームの声優さんが古箏を習いに来たこともありましたよ」

取材後、実際に銅鑼を叩かせてもらいましたが、たしかに「ジャーンジャーン」としか形容できない音が出ました。横山光輝先生もこの音を聞いて、あの擬音を描いたのでしょうか。しかし、これは現代の楽器用の銅鑼ですから、戦争用の銅鑼がどんな音だったのかは依然謎に包まれたまま。本当の「ジャーンジャーン」は、どんな音なのでしょうか。

◆ケトル VOL.37(2017年6月14日発売)

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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