ゾンビはもともと奴隷だった? ゾンビを世に知らしめた一冊の書
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ゾンビはもともと奴隷だった? ゾンビを世に知らしめた一冊の書

Amazonより
『ケトル VOL.38』 ジョージ・A・ロメロ、堀未央奈(乃木坂46)、岡本健、清水崇(映画監督)、花沢健吾

ここ数年、ゾンビ関連の映画やドラマが人気を博し、ハロウィンの仮装でもゾンビが大人気。ゾンビブームが訪れています。そんなゾンビを初めて取り上げた映画が、1932年の『恐怖城 ホワイト・ゾンビ』。同作は史上初のゾンビ映画として有名ですが、現代の観客が同作を観たら、「これがゾンビ?」と疑問を感じるかもしれません。

ゾンビの起源はハイチの伝承にあります。ハイチでは「ボコール」というヴードゥー教の邪悪な呪術師が住民の魂を吸い取って殺し、死後に蘇らせたものをゾンビと呼んでいました。ゾンビは呪術師の命じるままに動き、食事も休息も必要としません。呪術師は工場や農場などで、ゾンビを意志のない「奴隷」として働かせていたと伝えられています。

ゾンビがアメリカで知られるようになったのは、1920年代末のこと。冒険家ウィリアム・シーブルックが著書『マジック・アイランド』で、この不思議な伝承を紹介したことがきっかけでした。当時のハイチはアメリカの占領下にあり、国民の多くがそれまで聞いたこともなかった南の小国に関心を持ち始めていました。そこにシーブルックが「ゾンビ」という衝撃的なニュースを紹介したわけです。同書はベストセラーになると同時に、アメリカ人のゾンビに対する関心を大いに高めることにつながりました。

そうしたゾンビ需要の高まりに応えるべく作られたのが、『ホワイト・ゾンビ』です。だから同作のゾンビは現代の自律的に人を襲うゾンビとは異なっています。物語のポイントもゾンビに襲われる恐怖ではありません。この時代のゾンビは呪術師の指示がなければ人を襲うことはなく、登場人物が恐れるのは、むしろ「自分もゾンビにされる」というゾンビ化への恐怖でした。

当時は『魔人ドラキュラ』や『フランケンシュタイン』といった怪奇映画がヒットしていたこともあり、『ホワイト・ゾンビ』も新たな怪奇映画の一本として大いに評判を呼びました。その成功を受け、ここから数々のゾンビ映画が作られていきました。

とはいえ、ヴードゥー・ゾンビは呪術師の奴隷にすぎないため、ドラキュラやフランケンシュタインに比べるとモンスターとしての人気がありませんでした。ゾンビがホラー映画の主役に躍り出るためには、ジョージ・A・ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』(1968年)を待たなければならなかったのです。

◆ケトル VOL.38(2017年8月16日発売)

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