米FBIが採用 怒り狂った人の怒りを鎮める「聞く技術」

学び
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「家にいるのになぜそんなに疲れるの?」「一日中、一体何をやっていたの?」という、夫からの何気ないひとことが、妻たちの心を引き裂いていることは、もっと広く認知されてもいいはずだ。心を強くして立ち上がる度に、理解されない悲しみに押しつぶされる。

蓄積した疲労が原因で、何も考えることができなくなる。そんなつらい状況にある母親は、この日本に多く存在している。子育てを経験している身として、これだけは、はっきりとわかる。自分の娘が将来、家事や育児に翻弄され、疲れ切って涙することを望む親がいるだろうか。

仕事さえしていれば家事をおろそかにしていいと思い込み、妻が苦労している姿を見て見ぬふりをする男性に息子を育てたい親がいるだろうか。それを望まないのであれば、状況を変えるのならば今しかない。
(『子どもが生まれても夫を憎まずにすむ方法』訳者あとがきより)

結婚して一緒に暮らしはじめた。子どもが出来た。もうすぐ子どもが生まれる。幼い子どもを抱えて途方に暮れている。そんな人生の分岐点で度々爆発する、パートナーに対する激しい“怒り”。

このパートナー間での“怒り”に対する問題を真摯に受け止め、様々な著名人にアドバイスを求め、実践した記録が『子どもが生まれても夫を憎まずにすむ方法』(ジャンシー・ダン著、村井理子訳)にまとめられている。本書は少々夫を責めるようなタイトルではあるが、怒りが爆発してしまった側だけでなく、パートナーの怒りの原因を理解する上でも有効。切実な問題に徹底的に実践を試みる様子は、むしろ愉快でもある。

アドバイスに答えた著名人は、結婚カウンセラーから精神科医、FBIトップの交渉人にまで多方面に及ぶ。連邦捜査局(FBI)犯罪交渉班のトップを10年にわたって務めていたゲイリー・ノーズナーは、FBIが採用している七つのリスニング技術「アクティブ・リスニング」の取り入れを提案する。

〈彼や彼女が言うことに、誠実に耳を傾けよう。「人の話に耳を傾けること、これを単に受け身の態度と考える人が多いのですが、多くの臨床研究の結果から、アクティブ・リスニングはむしろ、その人(話をする人)の行動に変化をもたらす効果的な方法だ、とされています」と、ノーズナーは言う。

あなたが積極的にパートナーの話を聞けば、パートナーはパートナー自身の声に耳を傾け、まとまらずにいた思考や感情を明確化するようになるのだそうだ。防戦的、反抗的行動も減り、問題解決にオープンにもなるのだという〉

リスニング技術の1つ「感情のラベル付け」は、このような具体的な対応方法だ。

〈この技術は、興奮している人物が、自分では想像すらしていなかった感情を抱いていることを認識させる手助けになる。的外れであることもあり得るから、決定的な言葉は使わない。「君の言ってることは○○のように聞こえるね」とか、「君の振る舞いは、まるで〇〇のような印象を受けるな」といった言葉を使うこと(例えば「僕が子どもの担当医がわからないから、君が腹を立てているように聞こえるね」など)。

相手の言い分を軽視する(最悪無視する)のではなく、誰かの感情に名前をつけたり、それを認めることは、感情に駆られ、反発にこり固まった心理状態から、理性的なものへと人を導くことができる〉

翻訳を担当した村井理子さんは本書を以下のようにも案内している。

〈『子どもが生まれても夫を憎まずにすむ方法』。なぜわかってくれないの? 怒ってる理由がわかんないよ!と、すれ違ってばかりのみなさん! ちょっと深呼吸して、歩み寄ってはみませんか。

タイトルだけ見ると、女性が主役の一冊と思われがちですが、いやいや、男性にもおススメです。何をやっても奥さんに叱られてしまう、もうやる気がなくなってしまったよ……という、「フラリーマン」のみなさんも、是非読んでみてください。

イクメンを自認するお父さん。もしかして、もしかして……仕事を選んでいませんか?子どもと公園は行くけれど、オムツ替えは奥さん、ゴミの日も、学校の行事も、週末の子どものサッカーの送り迎えも、子どものプリントの管理も、ご近所つきあいも奥さんってことありませんか?

一方だけを責めるのではなく、双方の問題点をあぶりだして、解決に導く本です。おもしろそうだなと思った方は是非、手にとってみてくださいね!〉
(村井理子@Riko_Muraiツイッターより)

「何をいまさら……」「家には関係ないし、実践できない」と思うこともあるかもしれない。しかし、“安全で快適な場所”であるべき家庭を手に入れ、これからも維持していきたいのであれば、ぜひ1つずつでも実践してみてはいかがだろうか。

“怒り”のコントロール力を身につければ、パートナー間だけでなく親戚や職場での人間関係など、より質の良い生活を送るために、役立つに違いない。

【関連リンク】
子どもが生まれても夫を憎まずにすむ方法

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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