東京Dで振り返る新日本プロレスの平成史・初期 猪木敗北から引退まで

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平成という時代はまもなく終わりますが、新日本プロレス(以下「新日本」)の平成は、東京ドームとともに歩んできました。平成元年(1989年)4月24日、新日本は日本プロレス史上初となる東京ドーム大会を行ない、その後、毎年変わらずに開催されてきました。新日本が平成の30年間で刻んできた東京ドーム大会の中から、平成初期(1989年~1998年)の名シーンを振り返ってみましょう。

【1】『格闘衛星☆闘強導夢』 1989年4月24日 「猪木敗北。衝撃の幕開け!」

この日、東京ドームでプロレス興行が初開催。これまで日本のプロレス団体が経験したことのない数万人規模の客席を埋めるため、当時社長だったアントニオ猪木は「格闘衛星」を謳い、日・米・ソの3カ国による対抗戦を行いました。

特にソ連の柔道家やアマレス選手たちは初のプロレス参戦ということもあり、大きな話題に。獣神サンダー・ライガーのデビュー戦が行われたほか、メインでは猪木がソ連の柔道家で金メダリストのショータ・チョチョシビリと対戦。しかし、チョチョシビリが繰り出す裏投げの連打に猪木は健闘むなしく撃沈! 新日本のドーム大会の歴史は団体のトップである猪木が異種格闘技戦で初の黒星を喫するという衝撃の幕開けとなりました。

【2】『スーパーファイト in 闘強導夢』 1990年2月10日 「初めて観客と“ダー!”を絶叫」

猪木に代わって新社長となった坂口征二は、日本プロレス時代にジャイアント馬場の後輩だったことから全日本に協力を要請。両団体の旗揚げ以来、初となる交流戦が実現しました。

日本中のプロレスファンが歓喜した同大会からは数々の名場面も誕生。メインでは試合直前の控室インタビューで、猪木が「出る前に負けること考えるバカがいるかよ!」と闘志を剥き出しにした一方、橋本真也が「時は来た! それだけだ」と謎の言葉を残す有名な一幕も。試合後は猪木が初めて観客と一緒に、「1、2、3、ダー!」を絶叫。カウントありの「ダー!」が生まれた瞬間でした。

【3】『BATTLE FIELD in 闘強導夢』 1994年1月4日 「天龍が猪木を破り、偉業達成」

天龍源一郎の団体「WAR」との対抗戦が繰り広げられた前年の総決算として、このイッテンヨンでは猪木×天龍の一騎打ちが実現します。盟友・長州力が見守る中、天龍は猪木と壮絶なぶつかり合いを展開。猪木のナックルアロー連打に天龍が気を失う場面がありながらも、最後は天龍が渾身のパワーボムで猪木からピンフォールを奪いました。

天龍は全日本で馬場もフォールしていたことから、日本人では後にも先にも“ 馬場・猪木”という2大レジェンドから3カウントを奪った唯一のプロレスラーになったのです。激戦を終えると、感極まった2人は男泣き。猪木がマイクを持ち、「天龍、今日はありがとう」と感謝を述べると、天龍は「もう一回、もう一回やりましょう」と再戦を求めました

【4】『激突!!新日本プロレス対UWFインターナショナル全面戦争』 1995年10月9日 「長州はキレたのか あの名言が誕生!」

今もプロレスファンに伝説として語り継がれる新日本とUインターの対抗戦は、メイン以外にも数々の名場面を生み出しました。長州力×安生洋二もそのひとつ。Uインターの安生は以前から何度も長州に噛み付き、「死んだら墓にクソぶっかけてやる!」と長州に激昂されるほど嫌われていました。10・9ではその因縁の対決が組まれたのです。

鬼気迫る表情でリングに上がった長州は安生を圧倒。そのあまりの迫力に、試合後のインタビューでは記者から「長州さん、キレましたか?」と質問が。すると長州は「キレちゃいないよ」と答えました。これが後にお笑い芸人のモノマネによって「キレてないですよ」に変化していき、今ではプロレスファン以外も知っている名言として広まったのです。

【5】『“燃える闘魂”アントニオ猪木 引退試合』 1998年4月4日 「“燃える闘魂”がレスラー人生に幕」

ついに決まった猪木の引退試合。日本のプロレス史上最多観客動員となる約7万人の「イノキ」コールを受けながら、猪木は背中に「闘魂」と書かれたガウンを着て登場。トーナメントを勝ち抜いたドン・フライと異種格闘技戦を行い、38年のプロレスラー人生に幕を下ろしました。

最後の挨拶では有名な「この道を行けばどうなるものか」から始まる『道』の詩も披露。観客に向けて現役最後の「1、2、3、ダー!」を叫びました。そのバックステージで設立を発表した新団体「U.F.O.」は、後の新日本にさまざまな影響を与えていくことになります。

◆ケトルVOL.46(2018年12月15日発売)

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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