なぜアメリカは銃規制できないのか? 建国以来守られる「武装市民」の権利

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今年8月、アメリカ・テキサス州のエルパソで銃乱射事件が発生。20人以上の尊い命が失われました。アメリカでは銃による無差別大量殺人事件が相次いでおり、2017年にラスベガスで発生した銃乱射事件では、実に58人もの人が亡くなりましたが、銃規制は一向に進んでいません。なぜアメリカは、銃規制に踏み切れないのでしょうか? 『図解でわかる 14歳からの地政学』(太田出版/インフォビジュアル研究所 鍛冶俊樹・監修)では、こう解説しています。

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2018年3月24日、アメリカの高校生たちが、銃の規制強化を求めるデモを全米で繰り広げ、80万人が参加しました。同年2月にフロリダの学校で17人が犠牲になった銃乱射事件がきっかけです。

これまでも類似した事件が起こるたびに、銃の規制強化を求める声があがり続けてきました。しかし、トランプ大統領を始め、アメリカの政界も主流の世論も、年間1万人以上が銃により死亡しても銃規制に動きません。アメリカ以外の国であれば規制されている銃が、なぜ放置されているのでしょうか。

彼らが銃の所持を擁護する根拠は、アメリカ合衆国憲法修正第2条です。そこにはこう書かれています。

「人民が武器を保有し、または携帯する権利は、これを侵してはならない」

なぜこのような物騒な憲法ができたのか、その理由は、アメリカという国家ができた時代にまでさかのぼります。

アメリカ建国の初期は、主としてヨーロッパ、特にイギリスのピューリタン(改革派プロテスタント)と呼ばれる人々の移民から始まります。彼らが生きた17世紀はヨーロッパ社会の激動期でした。イギリスではキリスト教のプロテスタントによる名誉革命が実行されます。この革命を担ったのが、武装した一般市民です。市民の武装が、革命の鍵だったのです。その後フランスでは勃興した市民が絶対君主と闘い、王政を倒し立憲君主制を確立します。

イギリスの名誉革命で獲得された市民の「権利章典」には、プロテスタントは自衛のための武器を保有することができる、と記されています。この市民革命の精神を堅持した人々がアメリカを建国し、武装の精神は、憲法修正第2条に受け継がれているのです。銃で武装した移民団は、まず先住民と戦います、インディアン戦争です。移民たちは、西から東へと、目前の敵と戦い、国土を獲得していきました。アメリカとは、銃武装した市民がつくった国家なのです。

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他の国の人間から見れば、危険極まりないアメリカ流ルール。銃を持つことで自由を手にしたという経緯は理解できますが、毎年のように銃による無差別大量殺人が起きる現実を、かつての武装市民たちは遠い空の上からどう見ているのでしょうか……。

『図解でわかる 14歳からの地政学』(太田出版/インフォビジュアル研究所 鍛冶俊樹・監修)は、2019年8月23日発売。1500円+税。国際情勢の今を、わかりやすい地図とビジュアルで俯瞰して学べる1冊となっている。

【関連リンク】
図解でわかる 14歳からの地政学-太田出版

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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