『ケトルVOL.51』(プレステ特集/太田出版)
『ケトルVOL.51』(プレステ特集/太田出版)
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『Detroit: Become Human』開発者が語る「新しい時代のゲームの役割」

Amazonより
『ケトル VOL.51』 上田文人、原田勝弘、吉田修平、外山圭一郎、後藤禎祐、押切蓮介、米光一成、速水健朗、隅…ほか

2018年に発売されたプレイステーション4のゲーム『Detroit: Become Human』は、人がアンドロイドを使役するなか、感情に目覚めた「変異体」と呼ばれるアンドロイドたちが反乱を起こす未来を舞台に“人間とは何か”を描いた作品。世界的に大きな賞賛を浴びた同作は、いったいどのように作られたのでしょうか? ゲーム開発スタジオ「Quantic Dream」CEOで、ゲームデザイナー、脚本家のデヴィット・ケイジさんは、『ケトルVOL.51』でこのように語っています。

「『Detroit: Become Human』は、私が脚本家として歩んできた22年間で学んだ全てを詰め込んだ作品だといえます。物語とアクションを可能な限り融合させることで、ムービーシーンだけでなくプレイを通してストーリーを体感できるように努めました。また、プレイヤーがゲーム内でする選択は、物語に大きな影響を与えていきます。映像の美しさとアクション性、そして選択を迫られることで変化するドラマ性が、個々の物語となって紡がれていくことを感じてほしかった。

物語を伝えるのに最もシンプルな手法はムービーシーンを見せることで、そこには画面で流れる映像と視聴者という分断した関係が生まれますから、好きなように物語を伝えることができます。しかしながら、ゲームは観客のために物語を伝える映画と異なり、プレイヤーと一緒に物語を作っていく。クリアして完成した一つのエンディングは、脚本家とプレイヤーが共同創作したナラティブによって生まれると言えるでしょう。そして、多くの人たちが無数のストーリー分岐によって様々な物語を紡いでいくんです」

プレイヤーの行動次第では、まったく登場しないかもしれないシーンが山ほどあるため、脚本は4000ページ以上にわたったのだとか。作品が高い評価を得たのは、練り込まれたストーリーがあったのは当然ですが、モーション・キャプチャーについても細心の注意が払われたそうです。

「モーション・キャプチャーは俳優にとって非常に『相性が悪い』と言われています。たいていの場合は重いヘッドセットを装着せねばならず、いくつものカメラに加え、スポットライトも顔につける。こんな状況で感情を込めた演技をしろだなんて、無理難題もいいところですよね……。そして、そうした環境が何を引き起こすかというと、精密さを欠いたオーバーな演技、言うなれば“ゲーム向けの演技”です。これだけは絶対に避けたい。

なので、私たちはこのヘッドセットやライトをなくして、顔に小さな点をたくさんつけ、点の動きで表情を拾う手法を採用しています。これなら俳優が演技に集中することができますし、技術的な制限も生まれません。実際、『Detroit』では最高級の演技をたくさんお見せすることができたと思います」

ケイジさんは同作で、日本ゲーム大賞2019年年間作品部門優秀賞を受賞。権利のために戦うアンドロイドたちを描くことで、ゲーム界に新たな地平を切り拓きましたが、ゲーム業界について注文もあるようです。

「本作には少数派の権利と政治の関係や、倫理・道徳的な課題、少数派の行動によって何が起きるかなど社会課題への問いかけも込められていますが、これらに関しては他の国含め取り上げられるケースが少なかったように思いますね。アンドロイドが人から酷い扱いを受けていたり、捕らえられて収容されたりといった、世界が抱える問題と対応しやすい要素はあったはずなのに、です。

これはゲームに政治的な要素を入れることが、依然として非常に珍しいことが主な理由でしょう。社会的な角度からゲームを分析しようとする人はまだ少なく、ゲームが真面目なテーマを取り扱うべきだと考える人すらかなり少数派なのです。それは正直、残念ではあります。

ビデオゲームはどのような問題でも取り上げ、どのような状況でも提示できる重要なメディアであると私は考えています。そして、ゲームクリエイターは良識と責任をもって重要な事柄について訴えることができる人たちだと分かっている。将来的にはもっと多くのゲームが現実世界の出来事について掘り下げていくようになることを祈ります」

一定の年代以上には、まだまだ「ゲーム=遊び」という印象は強いですが、ゲームによって社会的課題を解決へと導く手法もどんどん出てきそう。子どもたちが「遊んでるぐらいならゲームしなさい!」と言われる日も、そう遠くないのかもしれません。

◆ケトルVOL.51(2019年12月17日発売)

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