『ケトルVOL.52』(スティーヴン・キング特集/太田出版)
『ケトルVOL.52』(スティーヴン・キング特集/太田出版)
映画・演劇・ドラマ

映画化権の金額は1ドル 若き才能を応援するS・キングの「男気」

Amazonより
『ケトル VOL.52』 ケヴィン・コルシュ、デニス・ウィドマイヤー、曽我部恵一、栗原類、武田砂鉄、永嶋俊一郎…ほか

『IT』『ドクタースリープ』『ペットセメタリー』と、昨年から今年にかけて作品の映画化が続いているスティーヴン・キング。彼の作品はこれまで何本も映画化されてきましたが、60歳を過ぎた現在までに監督した映画は4本と寡作でありながら、そのうち3本(『ショーシャンクの空に』『グリーン・マイル』『ミスト』)がキング原作なのがフランク・ダラボンです。

彼とキングとの関係は深く、最初の交流は1983年までさかのぼります。ハリウッドで下働きをしながら映画監督になることを夢見ていた20代のダラボンは、このときキングの「312号室の女」を原作にした短編映画(邦題『老婆の部屋』)を制作して注目されます。その映画化権の金額は、たったの1ドルでした。

映画に対する愛も深いキングは、才能はあるが資金のない若者を応援するため、自作の映像化を「1ドル」で許可することで知られています。条件は非営利であること。完成した作品のテープ(現在はDVD)を送ること。これによって念願の監督作を制作できたダラボンは、ハリウッドの業界人にも徐々に知られる存在となり、ホラー映画を中心に脚本家として頭角を現していきました。

そして、名作『ショーシャンクの空に』も実はこのときの絆から生まれています。短編映画をきっかけにキングと文通するようになった彼は、1987年に自身初の長編映画の題材として、原作であるキングの『刑務所のリタ・ヘイワース』の映画化権を譲り受けたのです。

もちろん、今度は商業映画ということもあり、契約金は1ドルからぐっと増えて1000ドルに。もちろん、それでもハリウッド映画では破格の安さです。しかも、キングはダラボンから小切手を受け取ったものの、これを現金化することはなく、映画化が実現した際には祝福の言葉とともに小切手を額縁に入れて送り返したそうです。

同作の大ヒットにより、ダラボンは続いて『グリーン・マイル』も監督。キングの“非ホラー作品”の魅力を世界中に広めることに貢献しました。その後も彼はキング原作のホラー映画『ミスト』で好評を博すなど、監督・脚本家・プロデューサーとして活躍中。今やハリウッド映画に欠かせない人物は、キングの粋な計らいから世に出るきっかけをつかんだのでした。

◆ケトルVOL.52(2020年2月16日発売)

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