『映像研には手を出すな!』の大童澄瞳 マンガとアニメの表現は何が違う?

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『月刊!スピリッツ』連載の『映像研には手を出すな!』が今年1月にアニメ化された。同作はアニメ制作に青春をかける少女たちが主人公の物語だが、作者の大童澄瞳は高校時代、映画部に所属し、アニメ制作に勤しんだ経験の持ち主。アニメを見た大童は、細かいシーンにグッときたそうだ。2020年2月25日発売の『クイック・ジャパン』vol.148で、大童はこう語っている。

「アクションシーンはもちろんなんですけど、たとえば戦車が発砲したときに砲塔がうしろにガツーンと下がる、いわゆるブローバックの動きが追加されている、みたいなところに『映像を面白く見せたい』というこだわりがうかがえます。

あとは、キャラクターごとの個性的な動き。金森氏はつねに気だるげで、水崎氏は振る舞いがいつも清々しい、浅草氏は元気だったり怯えていたりと、動きの差が強く個性として描かれているなあと感じました。追加されているちょっとした日常のシーンとかも、キャラクターの細かい設定を汲み取って、いろんなところにふりかけをかけているというか。隅々までこだわりを感じてすごくいいですよね」

時に作者の想像も超えた作品が出来上がるのが、マンガ作品のアニメ化の醍醐味。マンガを描く前にアニメを作っていた経験は、創作にも影響しているそうだ。

「たしかに、映像のテンポで描いているかもしれません。自分の中にある美的感覚が映像寄りなので。ただ、映像的な技法だけで作るのも難しいんですね。たとえば、尺に収めるカット数の調整もアニメなら分割していけばいいだけ。でもマンガの場合は、1ページあたりのコマ数を増やそうとするほど画面が小さくなっていってしまう。そういうふうに受ける制約の質が違うのでなかなか大変ですけど、映像っぽく描きたいという気持ちはありますし、なんとか表現していきたいと思っています」

アニメとマンガの双方の制作に携わった経験が、作品にしっかり生かされているよう。マンガには制約がある一方で、マンガにしかできない表現も存在するそうだ。

「完全に逆転の発想なんですけど、『マンガで映像を描く』っていうのは、それこそマンガにしかできない表現ですよね。作中で上映されるアニメーションも、動画をそのまま16:9の画面比率の絵にして並べていくやり方では、逆に映像として見えなくなってしまう。なので原作ではマンガのスタイルをより昇華させた、かなり奇抜な描き方をしているんです。コマのフレームをほとんど排して縦横無尽に描く、みたいな。映像でもできる表現をマンガに落とし込むだけでは駄目で、マンガ独自の手法を使わなければ映像を描けない……っていうのはちょっと面白いですね」

アニメ版に続いて実写版も実現した『映像研』。マンガ、アニメ、実写という3つの作品が刺激しあうことで、作品の魅力はさらに高まっていきそうだ。

◆『クイック・ジャパン』vol.148(2020年2月25日発売/太田出版)

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クイックジャパン148-太田出版

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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