『ケトルVOL.53』(クレヨンしんちゃん特集/太田出版)
『ケトルVOL.53』(クレヨンしんちゃん特集/太田出版)
ゲーム・アニメ・コミック

『クレヨンしんちゃん』の野原家 「引っ越し」というイベントが生まれた背景

Amazonより
『ケトル VOL.53』 久野遥子、京極尚彦、小林由美子、曽我部恵一、末吉裕一郎、武田砂鉄、池田エライザ、神谷…ほか

特別な事件が起こるわけではないのに、見る者を惹きつけて離さない『クレヨンしんちゃん』。その主人公・しんのすけの家族「野原家」の住まいと言えば、春日部の庭付き2階建て一軒家で、4DKを35年ローンで購入しています。

シリーズにずっと触れてきた人には今さらな話ではありますが、この家、実はローンを30年も残したまま、ガス爆発で一度全焼したことがあります。ゴキブリに驚いたみさえがガスの栓を締め忘れたところに、しんのすけがチャッカマンで火を点けてしまったことが原因です(原作29巻)。火災保険金を利用して自宅を建て直す間、野原家は「またずれ荘」という木造アパートに引っ越しました。

6畳一間、台所付き、風呂なし、トイレ共同(原作のみ)の4人家族で暮らすにはなかなか厳しい条件ですが、四浪中の浪人生・四郎や、麻薬組織を張り込み中の刑事たち、ニューハーフで元グリーンベレー隊員のスーザン小雪、モロダシ共和国の王子・オマタなどの住人たちとドタバタな日常を過ごすうちに意気投合。あっという間に馴染みました。彼らとは新居に引っ越してからも交流が続いています。

野原家の引っ越しというイベントが生まれた背景には、原作の掲載誌移籍がありました。10年間連載した「週刊漫画アクション」から「月刊まんがタウン」に移籍することが決まったタイミング(2000年)で、臼井先生が「掲載誌を引っ越すのなら、いっそ、しんちゃんの家を爆発させてしまいましょう」と提案したそうです(※参考文献:大山くまお、林信行、リベロスタイル編著『クレヨンしんちゃん大全』(双葉社))。

ただ、このイベントが異例だったのは、引っ越しエピソードが1年近くにわたって掲載されたこと。通常のギャグマンガであれば、次の週に家が元通りでもギャグで済みますが、マンガのリアリティを大切にする臼井先生は、「家が燃えたら保険が出る」「家を建て直している間はアパートに住む」「その建て直しは1年くらいはかかる」という現実的な発想で、このエピソードを作り上げました。

ハチャメチャに見える展開にも、野原家の日常をリアルに感じられる工夫が凝らされている。『クレヨンしんちゃん』が広く愛されるマンガとなった理由のひとつは、こんなところにもありそうです。

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