【#みんなの大好き】誰かと。

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雑誌『ケトル』は、6月号として「みんなの大好き」特集を制作中。みんなの大好きをつくる方々と、各々が好きなものに焦点を当てた内容になります。そして現在、note公式アカウントでは、特集「みんなの大好き」にちなんで「#わたしの大好き」をテーマに1000〜1500字のコラム・エッセイを募集中。新型コロナウイルスによって、人と人だけではなく様々なものと距離を取らざるを得ない日々が続きますが、「いまは触れらないが、収束後は……」「外では難しいが、今は家の中で楽しんでいる」「あらためて自分にとって大切なものだと気づいた」など、大好きなものや、愛が深まったものへの想いを寄稿いただいてます。今回はその中から、masayoさんの原稿を紹介させてください。

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「みんなで一緒に」が得意ではなかった。
”みんなで一緒に盛り上がる””みんなと一緒に楽しむ”
少し前の私だったら、「ちょっと遠慮しておこうかな…」と背を向けていたかもしれない。

3年前、偶然観に行ったプロバスケットボール、Bリーグの試合でスポーツ観戦の楽しさを知った。
野球やサッカーよりもアットホームな雰囲気の試合会場には、週末になると老若男女様々な人達が集まってきて、それぞれのスタイルで応援をしていた。
時々、隣に座ったおじさんがお菓子をくれたり、熱いブースターが『一緒に盛り上げましょう』と応援するための手作りのハリセンをくれたり、近くに座っていた小さな子が話しかけてきたりする。
一人でフラッと見に来ている人もいれば、ファミリーで見に来ている人もいる。
屋内スポーツならではの一体感や選手との距離の近さもバスケ観戦の醍醐味だ。
会場で仲良くなった友人と一緒に笑ったり泣いたり、飛んだり跳ねたり、そんな時間がいつの間にか何物にも代えられない大切な時間になっていた。
平日に仕事をし、週末にはちょっぴりおしゃれをして好きなチームや好きな選手の応援にいく。
そんな日々が当たり前で、日常だった。
「バスケはいつでも観に行ける」と思っていたけれど、あの日々は贅沢だったのかもしれないと今、ぼんやり思う。

みんなで集まること、みんなと楽しむことは当たり前ではない。
大勢で集まって一つのことを楽しむことが出来なくなって初めて、”誰かと一緒に過ごす”ことの尊さが身に染みてきた。
一人で過ごす時間も良いけれど、誰かと過ごす時間も捨てたものではない。
もしかしたら、『みんなで一緒には得意ではない!一人で過ごす時間の方が好きだ!』なんて嘘だったのかもしれない。
家で1人過ごす時間が多くなった今、「やりたい事」を思い浮かべると、誰かと一緒でなければできないことばかりだ。

結局、Bリーグの今シーズンは途中で打ち切りになってしまった。
それでもつい、週末になると、tipoffの時間を気にしてしまう。
1秒にドキドキして、1点にワクワクした瞬間のことを思い出しては、友人と「早くまた会場で試合が観たいね」とLINEを送りあっている。

今年の秋にリーグが再開するのかははまだわからないけれど、もしまた会場にバスケットを観に行ける日が来たなら、今まで以上に誰かと一緒に過ごす時間を思いっきり楽しみ尽くしたいなと思う。
〝わたしの大好き〟がどんどん出来なくなって、退屈でさみしい毎日だけど、その分、自分が本当に好きなことや大切にしたいものが以前よりわかったような気がする。
これからはもっと素直に色々なことを楽しめるようになるのかもしれない。

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いただいた言葉の一つ一つが、また誰かの文化との出会いになれば幸いです。お好きなものについてぜひご寄稿ください。宜しくお願い申し上げます。

【Twitterでも #わたしの大好き を教えてください】
コラム/エッセイと同テーマ「#わたしの大好き」でTwitterでも想いをつぶやいていただけると嬉しいです。#わたしの大好き とともにTwitterでつぶやかれた言葉を誌面に載せさせていただければと存じます。

※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。