『ケトルVOL.53』(クレヨンしんちゃん特集/太田出版)
『ケトルVOL.53』(クレヨンしんちゃん特集/太田出版)
映画・演劇・ドラマ

劇場版クレヨンしんちゃんの進化の歴史 「見せたくない」から親子3代で楽しめる作品に

Amazonより
『ケトル VOL.53』 久野遥子、京極尚彦、小林由美子、曽我部恵一、末吉裕一郎、武田砂鉄、池田エライザ、神谷…ほか

クレヨンしんちゃんの映画シリーズ最新作『激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』が近日公開されますが、劇場版第1作となる『アクション仮面VSハイグレ魔王』が公開されたのは、今から27年前の1993年7月のこと。

その前年からスタートしたテレビアニメが20%を超える視聴率を記録し、単行本が連載スタートからわずか2年7ヶ月で1000万部を突破。その一方で「子供たちに見せたくないアニメ」として問題になるなど、賛否両論を巻き起こしている最中での出来事でした。ところが蓋を開けてみれば、興行収入22.2億円の大ヒットを記録。シリーズ化が決まり、監督を務めた本郷みつるさんは劇場版第4作『ヘンダーランド』(1996年)まで陣頭指揮を執ります。

そして本郷監督の下で演出を担ってきた原恵一さんが監督に就任すると、映画シリーズはひとつの到達点を迎えます。2001年に公開された『嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』が、『映画秘宝』の同年度ベストテン1位に選ばれたほか、文化庁メディア芸術祭による「日本のメディア芸術100選」にも選出されたのです。

さらに劇場版10周年記念作品『嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』(2002年)では、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門の大賞を受賞。劇場版の『しんちゃん』が子供向けアニメの枠を超え、日本映画史でもエポックメイキングな作品へと昇り詰めた瞬間でした。

◆映画『クレヨンしんちゃん』の可能性を模索した10年

スタートからの10年が礎を築いた時期だとしたら、その後の10年は可能性を広げようと模索を繰り返したフェーズと言えるでしょう。例えば『嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ』(2004年)では、それまで主軸にされていた家族の絆ではなく、友情がテーマにされました。

また『伝説を呼ぶ 踊れ!アミーゴ!』(2006年)ではホラーの要素が取り入れられ、さらに劇場版20周年記念作品『嵐を呼ぶ!オラと宇宙のプリンセス』(2012年)では地球を飛び出し宇宙を舞台に物語が展開します。結果として、この期間は5人の監督が劇場版シリーズを手がけることになり、多種多様な作品が出揃いました。

◆記録を塗り替えるとともに時代は平成から令和へ

その後も映画シリーズの勢いは衰えることを知りません。『バカうまっ!B級グルメサバイバル‼』(2013年)以降は、橋本昌和さんと高橋渉さんが1年ごとに監督を務めるスタイルを確立。また、劇作家の中島かずきさんやお笑い芸人の劇団ひとりさんが脚本を担当するなど、どんどん新たな要素を取り入れていきます。

それが結実したのが『オラの引越し物語~サボテン大襲撃~』(2015年)でした。「野原一家がメキシコに引っ越す」という意欲的な内容の本作で興行収入22.9億円と劇場版史上最大のヒットを記録。再びの最盛期を迎えることになります。そして平成最後の劇場版作品となった前作『新婚旅行ハリケーン~失われたひろし~』(2019年)でも20.8億円の興行収入を記録しました。

かつて「子供たちに見せたくないアニメ」の代名詞だった『しんちゃん』も、いつしか親子3代で楽しめる作品として定着しました。そして今年、令和初となる劇場版作品へと歴史は継承されていくのです。

◆ケトルVOL.53(2020年4月15日発売)

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