YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』 一発撮りというアイデアはなぜ生まれた?

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2019年11月にスタートしたYouTube チャンネル『THE FIRST TAKE』(TFT)は、真っ白なスタジオの中でアーティストが歌う姿を一発撮りし、そのまま公開する番組。チャンネル登録者はあっという間に100万人を超えたが、番組のコンセプトはどのように生まれたのか? クリエイティブディレクターの清水恵介氏と番組スタッフは、2020年6月26日発売の『クイック・ジャパン』vol.150で、このように語っている。

清水 「TVの音楽番組や、サブミッションメディアにまだない価値を作るにはどうすればいいか、本当にいろいろな方向性を探りました」

スタッフ 「どのような画を撮るか、現在の演出を決めるまでに大変な時間を要していたんですが、『ファッションショーのような緊張感』というキーワードが出てきた。シンプルなセットの中で、ライブだけでなく、登場するシーンから演奏後のトークまで含まれている、それがとてもかっこいいなと思いました。ならばセットは白バックで極限までミニマルにしよう、というように固まっていきました」

LiSAが歌う『紅蓮華』は再生回数が6000万回を突破。一発撮りならではの緊張感が、視聴者にも受け入れられているが、高音質で録音されていることを含め、 その裏には綿密な計算があるという。

清水 「デザインで大切にしているのは余白です。ロゴデザインも文字や行間をこれでもかというくらい広く設計しています。映像やサムネイルの写真も、人物と白背景の間に美しい余白が生まれるような構図をDirector of Photography の長山一樹さんと心がけて作っています。余白というのは、贅沢さの象徴であり、無駄なものを排除して一点に集中させること。TFTでは余白によって視聴者が音楽と向き合い、それぞれの解釈が生まれる『間』をデザインで作り出しています」

スタッフ 「撮影で決めているのは、カメラを定点から動かさず、写真のようなスタイリッシュなアングルから撮ること。その上で、女王蜂のアヴちゃんの背中越しの歌唱シーンや、TK from 凛として時雨さんのエフェクターだけのカットなど、普段は見ることのできないアングルから捉えた映像も贅沢に使っています」

新型コロナウイルスの影響により、一旦『THE HOME TAKE』と名前を変え、アーティストの自宅やプライベートスタジオでの収録体制に変更した「TFT」。今後はどんな展開を考えているのか?

スタッフ 「チャンネル登録者の30パーセントが海外の視聴者なので、アーティストのブッキングに多様性をもたせて、今後はさらに、グローバルに展開していきたいですね」

優れたコンセプトとクオリティで、音楽番組に新風を吹き込んだTFT。コロナ騒動によって音楽業界に漂う重い空気を振り払うには、必ずやTFTの力が必要になりそうだ。

◆『クイック・ジャパン』vol.150(2020年6月26日発売/太田出版)

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クイック・ジャパン150

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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