『ケトルVOL.55』は「はじめての本」特集
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ホテリエ、住職、印刷業… その道の専門家も唸った業界研究漫画3選

Amazonより
『ケトル VOL.55』 さやわか、大森望、宮崎智之、橋爪大三郎、池澤夏樹、玉城ティナ、米代恭、遠野遥、野中モ…ほか

近年、書店の漫画コーナーを眺めていると、目につくのが業界研究漫画。医師、法曹界、金融などのほか、非常にマニアックなジャンルを取り上げた漫画もありますが、こういった業界漫画を、その分野の専門家はどのように見ているのでしょうか?

ホテルプロデューサーで、L&Gグローバルビジネス代表取締役の龍崎翔子さんが選んだのは、『HOTELIER ─ホテリエ─』(原作:城アラキ 漫画:川口幸範/集英社)。同作は、新人ホテリエがホテルで起こる様々なトラブルに向き合う物語ですが、龍崎さんは、新人ホテリエとNY帰りの女性総支配人が会話をしている場面の、「お客様自身も気付かない『答え』=感動を見つけて差し上げるのがあなたの仕事」というセリフが心に響いたそうです。

「ホテルに泊まられるゲストには顕在ニーズと潜在ニーズの2つのニーズがあって、部屋の綺麗さやサービスの良さといったものだけではなく、お客様でさえ気づいていない潜在ニーズに応えることが重要だと常々考えていたので、とても刺さりました。

ホテルという空間に携わる上で、お客様が自分でも欲しいと思っていると気づいていなかったニーズに先回りして応えていくことはとても重要なんです。それはホスピタリティだけでなく、内装だったりサービスだったり……お客様の気づいていなかった自分を発見していただくことで、生活や人生を豊かにしていく場なのだと思います」

福岡県北九州市にある浄土真宗本願寺派永明寺の住職・松崎智海さんは、超大ヒット作『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴/集英社)に、隠された仏教のエッセンスを見たそうです。

「主人公が鬼となった妹を人間に戻すため『鬼を滅していく』という物語の構造が『煩悩を滅していく』仏教のそれと類似していると思っています。何より、この作品では浄土真宗の宗紋(本願寺派のシンボル)に酷似した家紋が出てきたり、お墓の形が浄土真宗独特の形であったりと、浄土真宗のエッセンスが多く登場します。

また、『柱』の1人である悲鳴嶼行冥が浄土真宗の教えの要となるお念仏(南無阿弥陀仏)を称えることにも胸が熱くなりますね。お念仏一つで救われるという浄土真宗において、これ以上の言葉はありませんから。私たちが言う仏教という言葉は比較的最近の言葉で、本来は仏道と呼ばれていました。つまり、仏の道を目指す生き方そのものを指していたものです。人生をかけてその道と向き合っているのが僧侶なのです」

多種多様な自費出版本、特殊な印刷・製本の書籍や雑誌を担当する藤原章次が選んだのは、『印刷ボーイズは二度死ぬ』(奈良裕己/学研プラス)。色に厳しい客が、5回色校正してもOKを出さず、“さすらいのPD(プリンティングディレクター)”赤羽匠に力を借りるシーンから得た知識が、本業でも大いに役立ったそうです。

「10年前に家業を継ぎ、初めてPDという職業を知りました。当社にもPDがおり、絶対的信頼をおいています。PDは国家資格ではないので、名乗ることは簡単ですが、技術力には雲泥の差があります。印刷会社はどこに頼んでも同じと思われる方が多いかもしれませんが、同じ写真&同じ紙に印刷するという条件でも、『本物のPD』がいれば全く異なる仕上がりになります」

とかく軽く扱われがちな漫画ですが、その陰には綿密な取材や丁寧なリサーチがあるということ。漫画を読んだことが、その職業を目指すきっかけになる場合も多いだけに責任は重大ですが、ぶん読み応えはあり、今後も業界研究漫画ブームは続きそうです。

◆ケトルVOL.55(2020年8月17日発売)

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