新アルバム発売のヤバT「聴いてもらえさえすれば、絶対に思いは届くはず」

カルチャー
スポンサーリンク

9月30日に4thフルアルバム『You need the Tank-top』をリリースしたロックバンド「ヤバイTシャツ屋さん」(以下「ヤバT」)。新型コロナウイルスの影響により、2020年に予定していたライブの多くが中止・延期を余儀なくされた。そのような状況でリリースされたアルバムには、どのような思いが込められているのか? ボーカル/ギターのこやまたくやは、2020年10月24日発売の『クイック・ジャパン』vol.152で、こう語っている。

「お客さんが、もう音楽を求めてないんじゃないかっていう不安があって。『半年ぐらいライブ行ってへんけど、生きていけてるな。じゃあもう別にいいやん、音楽なくても』っていうふうになったら、すごいイヤやな、と思って。『いや、そんなことないよ! 必要でしょ』と思って、アルバムタイトルの『You need the Tank-top』をつけたんですけど」

“タンクトップ”は、彼らにとって「パンクロック」と同義であり、ヤバTのこれまでの活動を語るうえでは欠かせない言葉。「音楽、必要だったでしょ?」という気持ちを込めてつけられたタイトルだが、バンドとしての危機感は相当なものだったようだ。

「去年とか一昨年って、ほんまになにをやってもうまくいくし、なにをやっても面白がってもらえるみたいな、無双状態やったんですけど。でも、それがずっと続くのってあり得ないことなので。リリースのペースも落ちたし、あと単純に、自分の元気もなかった感じもしたし。そこで次のアルバム、ほんまに大事やけど、このまま普通に出しても絶対売れへんと思ったんですよ。

(中略)ヤバい、っていう中で、奇跡的にサインの企画が上がって(編註:予約者全員にメンバー3人の直筆サインをつける)。それによって4万3千枚の予約が来て、すでに過去イチの売上が決定している、という逆転が起きて。『危なかったなあ』って思いました(笑)。まずはこれでとにかく曲を聴いてもらえるんや、っていう。聴いてもらえさえすれば、絶対に思いは届くはず、っていうのは思っていたので」

そんなヤバTは10月から全国ツアーを決行中。「見向きもされなくなるバンドをたくさん見てきた」という彼らは、このツアーでも「1日2部公演」(2021年公演に関しては未定)という新しい取り組みに挑戦している。

「10-FEET とか(マキシマム ザ)ホルモンとか、ずっと第一線で飽きられずにやってんのがすげえ、と思ってて。目指すべきはそこやと思うんですよね。そのなかで、ヤバイTシャツ屋さんは今はいろいろ試行錯誤しながらやっていて、毎回なにか面白がってもらえるようなことを仕掛けていってるつもりなんですけど。今大事なのは、コアなファンを作っていくことやなと思いますね」

苦境に立たされた音楽業界で、「それでもおもろいことをやる」というのが、ヤバTが示した答えだった。日常を少しでもおもしろく、前向きに歌う彼らの姿はきっと多くの音楽ファンを勇気づけてくれるはずだ

◆『クイック・ジャパン』vol.152(2020年10月24日発売/太田出版)

【関連リンク】
クイック・ジャパン152-太田出版

【関連記事】
DISH//北村匠海 「どのジャンルにも属さないということが僕らの強み」
劇伴音楽挑戦の尾崎世界観「自分の中に知らない部屋があるのを見つけた」
chelmico コロナ禍で気付いた「ライブができることのありがたみ」
セカンドソロアルバム発表の西寺郷太が立ち戻った「スタート地点」

※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

関連商品