『ケトルVOL.56』はクリストファー・ノーラン特集
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映画・演劇・ドラマ

ノーラン監督の『TENET』は同世代のライバルへの対抗心から生まれた?

Amazonより
『ケトル VOL.56』 佐藤大、前島秀国、原田眞人、名越康文、文月悠光、曽我部恵一、松崎健夫、武田砂鉄、池田…ほか

新型コロナウイルス騒動により、新作の公開がとにかく少なかった2020年の映画界。その中でも数少ないスマッシュヒットとなったのが、クリストファー・ノーラン監督の『TENET テネット』です。

同作で描かれるのは、第三次世界大戦を防ぐため、極秘のミッションに挑むスパイたちの活躍。構想に6、7年をかけ、アメリカ、インド、イタリア、ノルウェー、デンマーク、エストニア、イギリスの7カ国で撮影が敢行されましたが、誕生の背景にはノーランの“ライバル心”がありました。その人物は、1999年公開の監督デビュー作『アメリカン・ビューティー』でいきなりアカデミー監督賞を受賞したサム・メンデスです。

メンデスとノーランは互いに明言したことはないものの、フィルモグラフィを見る限り、ライバル関係にあると言えます。そもそも共通点が多い2人です。まず、共にイギリスの名門大学出身(メンデスはケンブリッジ大学、ノーランはロンドン大学)。監督デビューの時期も近く、同時期のハリウッドでヒットメーカーに成長しました。

最初に影響を受けたのはメンデスのほうでした。彼は新たに『007』シリーズの監督に就任すると、ノーランの『ダークナイト』(2008年)に影響されたシリアス路線でシリーズをリブート。そうして発表された『007スカイフォール』(2012年)は、病を患いながら戦う主人公を描いただけでなく、彼と対になる悪役が登場するなど、同年公開の『ダークナイトライジング』と類似点が多い作品となりました。

さらに、ノーランが『ダンケルク』をヒットさせると、メンデスも史実を基にした戦争映画『1917命をかけた伝令』(2019年)を公開。しかも戦場をリアルに再現しただけでなく、「丸一日で伝令を届けなければ味方は全滅する」というタイムリミットを設定して、映画に『ダンケルク』ばりの緊迫感を与えました。

こうなるとメンデスが一方的にノーラン映画から影響を受けているように感じるかもしれません。しかし、ノーランは大の『007』フリークとしても知られています。そんな彼が『スカイフォール』の成功を意識していないわけがなく、「あいつが俺に影響を受けた『007』を作ったなら……」とばかりにノーラン版『007』といえる『TENETテネット』をついに完成させました。

今後、この2人のせめぎ合いはどうなるのか。メンデスがノーランに再び接近するにせよ、まったく別の作風に向かうにせよ、どちらも要注目の才能であることは間違いありません。

◆ケトルVOL.56(2020年10月15日発売)

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