『ケトルVOL.56』はクリストファー・ノーラン特集
『ケトルVOL.56』はクリストファー・ノーラン特集
映画・演劇・ドラマ

クリストファー・ノーラン監督 複雑な物語を支える編集術の原点

Amazonより
『ケトル VOL.56』 佐藤大、前島秀国、原田眞人、名越康文、文月悠光、曽我部恵一、松崎健夫、武田砂鉄、池田…ほか

12月1日の「映画の日」に表彰されるゴールデングロス賞で、2020年海外映画部門の優秀銀賞に選ばれたのが『TENET テネット』。監督のクリストファー・ノーランの作品からは、スティーブン・スピルバーグ、スタンリー・キューブリック、アルフレッド・ヒッチコックなど、偉大な映画監督からの影響が垣間見えるシーンが多くありますが、特に大きな影響を受けたのが、『アラビアのロレンス』や『華氏451』などの撮影監督を務めた後に監督デビューしたニコラス・ローグです。

ローグは70年代に『美しき冒険旅行』『赤い影』『地球に落ちて来た男』『ジェラシー』など野心的な作品を立て続けに発表。ヒットにこそ恵まれませんでしたが、カメラマン出身であることを活かした映像美は他に類を見ないものと評価され、スティーブン・ソダーバーグやダニー・ボイルといった現代を代表する映画監督たちに多大な影響を与えました。

ノーランもそのひとりで、『インソムニア』(2002年)公開時に来日した際には、映像面からの影響を指摘されると、「ニコラス・ローグに影響を受けていない映画監督なんていないのではないか」と言及。特にノーランはローグ作品の代名詞ともなった複雑な編集テクニックを参考にしており、「『メメント』(2000年)はニコラス・ローグなしには考えられなかった」とまで語っています。

さらに、ノーランによるニコラス・ローグへのリスペクトは『プレステージ』(2006年)にも見られます。同作でノーランは実在した異端の発明家ニコラ・テスラの役にデヴィッド・ボウイをキャスティングしました。電線すら普及してなかった時代に地球規模の無線送電システムを構想するなど、常識破りの発想で“電気の魔術師”とも呼ばれたテスラですが、存命中は正当な評価を得られなかった悲劇の天才としても知られています。

そんなテスラを『プレステージ』に登場させるにあたり、ノーランはニコラス・ローグの『地球に落ちて来た男』を参照しています。水が枯渇した母星で暮らす家族を救うため、たった一人で地球にやって来た宇宙人の孤独をデヴィッド・ボウイが演じた同作。テスラの配役に悩んでいたノーランは、あるとき「時代の先を行きすぎたせいで誰にも理解されなかったテスラこそ、最初の『地球に落ちて来た男』だ」と思い付き、テスラ役をボウイに依頼したそうです。このようにニコラス・ローグは知名度こそ低いものの、ノーラン映画を語るうえで欠かすことのできない人物なのです。

◆ケトルVOL.56(2020年10月15日発売)

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