『ケトルVOL.57』は「いくえみ綾」特集
『ケトルVOL.57』は「いくえみ綾」特集
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映像化が続くいくえみ綾 コマ割りの巧さが作品をどう引き立たせる?

Amazonより
『ケトル VOL.57』 いくえみ綾、ともさかりえ、中村涼子、乙武洋匡、佐藤千亜妃、倉本さおり、加藤茶、北村薫…ほか

2017年にドラマ化されて大きな話題になった『あなたのことはそれほど』をはじめ、『G線上のあなたと私』『潔く柔く』『いとしのニーナ』など、映像化が相次いでいる漫画家のいくえみ綾さん。彼女の作品では、独特のテンポを生み出し、映像的な世界を形作るコマ割りが、物語を演出する上で欠かせません。映画監督、写真家、文筆家として活躍する枝優花さんは、コマ割りの巧みさについて、ケトルVOL.57で、こう語っています。

「印象的だったのは、『G線上のあなたと私』で、主人公の小暮さんと理人、北河さんの三人が会話をしているシーン。1ページの中でどんどんコマが小さくなっていきますよね。そこから生まれるテンポの良さがまずひとつ。そして、寄りのカットから、だんだん引いていって……という構成は視線誘導の効果もありますし、何より見る人のイメージが膨らみます。私がこのシーンを撮るとしたら、このページのコマ割りを参考に演出すると思いますね」

普通の読者なら、ついつい読み飛ばしてしまいそうなポイントに着目するのは、映像の専門家ならでは。一方、枝さんは、いくえみ作品の登場人物のキャラクターにも注目していて、演技指導でも実践しているそうです。

「(いくえみ作品では)それぞれのキャラクターの心情が、表情と連なって流れていく。その人物が作中で生きて動いているから、コマの中だけで完結しているようには感じません。つまり、キャラクターの内面を丁寧に描いているからこそ生まれる表情や所作なんだと思います。

たとえば、いくえみ作品の中で、『笑っているけれど、内心は憎しみや怒りで満ちている人』の表情は、それまでの文脈を追っていなくても、一目で『怖い』と感じるんですよね。キャラクターの自然な動きを積み重ねた結果、そうした表現にたどり着いたのかなと思ったんです。

私も撮影での演技指導で、役者さんにガワ(外側)ではなく、内面から作り込むように伝えます。物語の背景を考えて落とし込んだ結果、自然な表情が生まれることが理想ですから。それは映像でも漫画でも変わらない、大切なことだと思います」

巧みなコマ割りと卓越した人物描写が読者の心に響くのももっともですが、それをきちんと言語化して説明できるのは、枝さんだからできること。さまざまな場面でコマ割りが巧みに使い分けられていることの効果は絶大です。

「コミカルなシーンと、心情に寄り添うドラマチックなシーンでは、コマ割りがまるで違います。コマが小さくなればなるほどテンポアップしますし、ドラマチックなシーンでは、大きなコマを使うことでテンポを緩やかにしたり、時間を止めたりすることもある。この演出の方法をかなり明確に使用されているので、読んでいても映像的に脳内再生されていく感覚が強く残ります」

キャラクターに感情移入できるのは、こういったテクニックが大いに影響しているのは間違いなさそう。漫画作品の映像化ブームはとどまるところを知らず、いくえみ作品の注目度はますます上がることになりそうです。

◆ケトルVOL.57(2020年12月15日発売)

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