『ケトルVOL.57』はいくえみ綾特集
『ケトルVOL.57』はいくえみ綾特集
ゲーム・アニメ・コミック

いくえみ作品のカギを握る「表情に垣間見る闇」と「“読めない”ことの面白さ」

Amazonより
『ケトル VOL.57』 いくえみ綾、ともさかりえ、中村涼子、乙武洋匡、佐藤千亜妃、倉本さおり、加藤茶、北村薫…ほか

主人公が何度も遠回りを繰り返しても、どんどんページを読み進め、恋模様を見届けてしまう──『潔く柔く』『あなたのことはそれほど』『太陽が見ている(かもしれないから)』といった作品で知られるいくえみ綾さんの漫画には、“ずるいし振り回されるし、なのにちょっとかっこいい男の子”が登場するのが見どころ1つ。彼らは「いくえみ男子」と呼ばれ、読者のハートを掴んでいますが、読者はなぜいくえみさんの作品に引き込まれてしまうのでしょうか。

『ケトルVOL.57』では、モデルの前田エマさんと青柳文子さん、写真家の草野庸子さんの3人が対談。「いくえみ男子」に翻弄される3人が、作品の魅力について語っています。

青柳 「ストーリーや設定はファンタジーだけど、登場人物の感情や行動に、現実と重ねられるところがいっぱいある。ファンタジーとリアルを行き来しながら楽しめるんだと思う。自分の結婚前とかは安定を求めていた時期だったから、美都(『あなたのことはそれほど』の主人公。「2番目に好きな人」である涼太と結婚した)の夫・涼太にも共感できたな。描き方が可哀想だけど」

前田 「実際に涼太が身近にいたら、ちょっと怖いかもな。結婚するにはいい相手だったのかもしれないけどさ。いくえみ男子はどこかしら影があるよね。大きな闇を抱えてるというか」

その「影」を感じる要素のひとつに、いくえみ作品における表情の描き方があるのでは、と草野さんは指摘します。

草野 「いくえみさん、泣きたい気持ちなのに笑っている時の顔とかが描けるんだもん。表情の読めない顔をアップで使ってくる。男に限らず、女もね。『太陽が見ている(かもしれないから)』の日帆が、主人公・岬と楡の住んでいた部屋に火をつけようとするシーンがあるんだけど、そういう人が狂気めいたことをする時の表情にゾッとする」

ただ、その生々しくも複雑な感情のこもった表現にある「読み取れなさ」こそが、いくえみ男子の魅力を引き立てているのかもしれません。

青柳 「みんな感情が読めない顔で大事なことを告白したりするから、その先の読めなさにもドキッとする」

前田 「それって行動もそうだよね。手の動きで心情を表すことが多くて、突然手をにぎり合うシーンがアップになって切り取られるコマが出てくると、セリフとか表情がなくても『ひゃー』ってときめいちゃうんだわ」

草野 「『潔く柔く』でも、カンナと禄が付き合う直前、タクシーの中で手を繋ぐシーンがあるよね。こういうのは確かにずるい! 表情も行動も、その答えの見えなさが面白いところ」

青柳「そこは現実世界の男性にも通じるかもね。考えや先の行動を読めない人のほうが圧倒的に多い。そこにもリアルさを感じる」

前田 「そう考えると、やっぱりいくえみ作品は『かっこいい王子様が出てきて、それに向かって猪突猛進!』 っていうイメージとは違うね。現実の男の子も弱い部分はあるし、完璧じゃない。いくえみ作品で勉強になったのは、恋愛論よりも男友達との付き合い方かもしれない。世の中の男子はパーフェクトじゃない可愛さを知った。それっていくえみ作品特有の学びだと思うな」

いくえみさんの作品はここ最近、映像化が続いていますが、“現実にありそう、けれども実際にはありえない”というリアリティもその一因かもしれません。

◆ケトルVOL.57(2020年12月15日発売)

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