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人気動物行動学者・松原始氏が解説 イタチの巧みな捕食者っぷり

森の中には動物がいっぱい
森の中には動物がいっぱい
Amazonより
『カラス先生のはじめてのいきもの観察』 著:松原始

動物行動学者の松原始氏は、奈良市内の奈良公園近くで生まれ育ち、「大事なことは全部、裏山で学んだ」という人物。カラスの生態を解説した『カラスの教科書』(雷鳥社)がベストセラーとなった松原氏が初めて出会った野生のケモノはイタチだったそうだ。6月14日に発売された『カラス先生のはじめてのいきもの観察』(太田出版)で、松原氏はイタチについてこのようにつづっている。

 * * *
イタチといえばデカくて凶悪で目つきが悪くて慇懃無礼で、真っ白いくせに腹黒い……というイメージは、アニメ『ガンバの冒険』が植えつけたものだったろう。このアニメに登場する白イタチのノロイはもう、子供心にはトラウマものの恐ろしさだった。ちなみに原作小説『冒険者たち』のノロイは、薮内正幸の絵のおかげでアニメほど怖くはないが、慇懃かつ陰険で凶悪なことに変わりはない。

ちょっと脱線するが、原作の副題は『ガンバと15ひきの仲間』で、ネズミたちは総勢16匹である。個人的に薮内正幸の大傑作だと思うのは、この16匹を描いた一連の挿画だ。リアルな動物画なのに全てのネズミが描き分けられていて、本文をよく読んで特徴を付き合わせれば誰かわかるようになっている。

例えば、立派なヒゲをひねっているのはガクシャ、その横の図体のでかい隻眼がんはヨイショ、よく見ると耳にサイコロを入れている小柄なのがイカサマ、高く飛び上がっているのがジャンプでちょっと色白なのがイダテンだ。識別不能なのは肩を組んで歌っているバスとテノールの2匹で、こればかりは声を聞かない限り、どっちがどっちかわからない。

さて、実際に見たイタチは、そんなに怖い動物には思えなかった。むしろ可愛らしかった。何よりも驚いたのは、イタチが本当に小さいことである。「けもの」というとイヌかネコくらいの大きさを想像するが、イタチはもっと小さい。胴も尾も長いので長さだけで言えば小柄なネコくらいはあるが、細身で足も短いから、体のボリュームとしてはほぼ、「物差し」である。実際、ニホンイタチの雌ならば、尾を含めても30センチそこそこということもある。

私が見たのはニホンイタチだったか、移入種であるチョウセンイタチだったかわからない。やや大きめで黄色っぽかった気もするので、チョウセンイタチであったかもしれない(チョウセンイタチの方がやや淡色の傾向があるように思うが、確実な識別はできない)。ただ、私の家のあたりは山裾だったので、ニホンイタチを見かけていた可能性もある。山地に入るとニホンイタチが生き残っているからだ。確かにもう少し黒っぽく、毛並みが粗く感じられる小柄なイタチも見かけた記憶があるので、両方いたのだろう。

イタチは丸くてかわいい顔をしているが、肉食性の捕食動物である。果実を食べることもあるが、基本的には小動物を食べている。昆虫、魚、カエル、ネズミ、鳥、なんでも捕まえる。イタチは細長い体を利用して狭い隙間や藪の中、穴の中にも入りこめるし、ちょっとした木なら登ることもできる。しかも泳ぎが得意で、水に潜ることもある。小動物にしてみれば、どう逃げようが隠れようが、どこまでも執拗に追って来る悪魔のような相手だろう。庭先でも、その捕食者っぷりは遺憾なく発揮された。

実家の庭には小さな池があったのだが、夜中、カサカサと草の揺れる音に続いて「パシャン」と軽い水音が聞こえることがあった。しばらく小さな水音が聞こえたと思うと、「キュウ!」という甲高い声が聞こえ、何かが池から上がって来た。おやイタチだ、と思って窓から覗の ぞくと、イタチはヒョイとこちらを振り向いてから、闇の中に消えた。口いっぱいに大きなトノサマガエルをがっぷりとくわえて。

あるいは、夏の夜から明け方にかけて、木の根元や草の葉を見上げながら素早く歩き回っていることもあった。これは羽化しようとしているセミの幼虫や、羽化直後のセミを探していたらしい。時折、パリパリと何かを噛んでいる音や、「ジジジッ!」というセミの声が聞こえることがあった。もっともこれはイタチとは限らず、タヌキやネコもよくやる。

また、実家の天井裏にネズミが入りこんだことがあった。屋根裏からトトトトト……と軽い足音がする。これは間違いなくネズミである。おやまた来た、と思っていると、トン! と飛び跳ねる音が聞こえた。何かに驚いたのだ。

一瞬、ガサガサという音がした。何かがくねるように動いたのか? ヘビか? と思ったら、ネズミよりもう少し重い何かが、トン、トン、トンと足音を立てて屋根裏を動いた。ネズミのようにチョコマカ走った足音ではない。歩数はもっと少ないが、移動は速い。つまり、一歩の歩幅が大きいのだ。もしや、イタチが飛び跳ねながらネズミを追っているのか? そう思った瞬間、屋根裏で「キイッ!」と悲鳴が上がった。……やられましたね。

 * * *
近年は都心部でも見かけられ、いわゆる“害獣”扱いされているイタチ。自宅の屋根裏を走り回られたら堪らないが、松原氏のユーモラスな解説を読むと、親近感が沸いてしまうかも!?

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