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聞き手:編集部
*この対談はネタバレを大いに含むので、ご注意ください。
*「ぽこぽこ」公開当時の記事を再掲載しました。

TAGROさんの『イキガミ様』が、4年半の歳月を経て、堂々完結...!! コミックス刊行を記念した、ネタバレ必至の赤裸々対談を公開します!! 生き神とはいったいなんだったのか、ジェーニャは何しに海野辺に来たのか...。みなさんの疑問に、TAGROさんと初代担当編集がお答えします。

登場人物全員気に入っています

――1話を読むと、津田漣とイキガミ様の話のように見えます。

TAGRO 4話くらいまでは、津田漣と生き神の話だと思ってやってました。過去、同名の短編に出てきた生き神と死に神と津田漣以外は、ぜんぶ新キャラです。ちなみに津田漣の弟も、名前はありませんが、1回出てきます。

――2話で、実質的な主人公である英恵が、震災があって東京から帰ってきますね。

TAGRO 2話を描いた時点で、英恵が話の中心になっていくという話はぜんぜんしていません。だから、ぼくもどういうつもりで英恵を出したのかわからない(笑)。英恵は震災で帰ってきたわけではないんです。2話の最後で「直ちに影響はない」という台詞があったりしてにおわせていますけど、単純に夢破れてというか、たまたま震災の時期がかぶっていたという感じです。
英恵はとくにモデルがいるわけじゃないんですが、ちょっと疲れた感じの女性を描きたかった。ネットで写真を探したりして。結果的に、思ったよりかわいくなってしまったんですが。ほんとうはもうちょっとやさぐれている感じというか、幸薄い感じをイメージしていました。
英恵と玉男がエッチしますが、玉男のピロートークのシーンはいいですね(笑)。

小原 TAGROさん、玉男に対して寛容ですよね。

『イキガミ様』p.89

――玉男は好感度低いと思いますよ。

TAGRO ぼくもそう思うけど……。
生き神が「カラダの相性」といっているシーン(11話)が好きですね。英恵が玉男にこだわっている理由をメタに答えているところ。英恵はエッチが好きなんですね。「ここでそういう相手を見つけるのはむずかしい」ともいってますし。

――この話のあとで、英恵が誰かとくっつくということは考えていますか?

TAGRO 匡士とは1回くらいエッチすると思いますけど、たぶん、勤め先のモダンタウンで、こじゃれた店長とくっつくんじゃないですか……。
匡士と英恵は、もともと関係があったという設定でもなくて。「英恵のことが好きだった魚屋の男」くらいのイメージでした。匡士のモデルは、つるの剛士さん。髪型とか、マイルドヤンキーな感じとか。まあ、見ればわかりますね。あと、津田漣のお母さんがかわいく描けたのはうれしかったです。

小原 津田漣のお母さんが出てくる回(13話)は、原稿が送られてきて、一言、「お母さんがかわいく描けて満足しています」といってましたね(笑)。TAGROさん、津田漣も好きですよね?

TAGRO もちろん。いちばん好きです。というか、登場人物全員気に入っています。話が進むにつれて登場人物の頭身があがっていく(笑)。ぼくは、描いてるうちに頭身があがっていっちゃう癖があるんです。

小原 登場人物にふたつの流れがあって、津田漣とイキガミ様はギャグパート担当で、頭身が低い設定でした。英恵周辺はリアリズム系で、ちょっと頭身が高い。

TAGRO ただ、それぞれのキャラのストーリーはぜんぜん考えてなくて、町を中心とする群像劇のようなイメージです。英恵を主人公にしてひとつ答えを出すというやり方にぼくはすごい抵抗していて、最後まで筋の通ったドラマを出したくないと思っていたんです。

小原 さっきTAGROさんもおっしゃってたけど、もともとは1話完結の、わりとライトなギャグタッチの作品になる予定でしたからね。群像劇でやるつもりが、いつのまにか英恵の存在感が大きくなっちゃったんですね。

TAGRO 9話の、この先どうすんの? というところで、小原さんには「英恵の母親が死ぬ」という話をしていました。親が病気したという台詞は2話に出てきます。

ジェーニャは悪いやつ

――純恵(英恵の妹)が死に神を見たことは、親の死と関係ないんですか?

TAGRO これはミスリードです。死に神が来たから死ぬ、というのが一般の読者のイメージですよね。でも、ひとが死ぬことには、死に神は関係ないんです。ひとが死んだあとの魂の扱いに関係があるだけ。見たから死ぬ、ということは一切ない。死に神は、ジェーニャが来たから、その後処理をするために前乗りでやってきているだけなんです。

――7話で死に神が見えているのは、純恵と先生だけですか?

TAGRO 見ようと思えば見えるけど、気づいたのは純恵と先生だけ。
海の向こうからタコ足ロボットが侵略に来て町が全滅するというラストをぼくは考えていたんです。ジェーニャが、その手先ですね。「月の侵略者」というのは本気の設定なんです。ニューヨークに行くという話ですが、アメリカの大統領に会って、「これから侵略します」というつもりが、間違って海野辺に来ちゃった。

小原 その前フリとして、死に神が出てきます。

TAGRO 最初に描いた「イキガミ様」も、これからカタストロフが来て終わる、という話なんです。この世界には何回も破滅が来るけど、またふつうに戻るみたいな。舞台じたいが滅亡して再生するイメージです。
……じつは、デジャヴの回(9話)で、世界が1回変わっているんです。

――ああー。そういえば船の名前が、冒頭とラストで変わっていますね。

『イキガミ様』p.75

TAGRO そうそう。ちがう世界に来ているんです。「アニメじゃ」という津田漣と生き神の台詞のあとで、世界が変わっています。
あと、ジェーニャのもっている「月の石」にはマインドコントロール的な力があるんですね。ジェーニャが月から来たことを誰も不思議に思わないし、宿もタダで泊まってるし。神社に石を置くのも、町の中心に置いて町全体を支配するためです。

――だいぶ悪いやつですね……。

TAGRO だって、ほんとうに侵略者だもん(笑)。
死に神が来たのは、ジェーニャの侵略によってひとがたくさん死ぬとわかっていたからですね。じつは、けっこう怖い話なんです。


〈プロフィール〉

TAGRO

「ヤングキングアワーズ」誌上にて『MISSION OUTER SPACE』でデビュー。多彩な画風・作風で読者より強い支持を集める。2010年に『変ゼミ』がアニメ化。代表作に『変ゼミ』 『宇宙賃貸サルガッ荘』 『マフィアとルアー』 『Don't trust over 30』 『パンティ&ストッキングwith Gaterbelt』等。