「北の国から」で純と父・五郎はなぜ丁寧語で話す? その意外なモデル

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日本ドラマ史上に残る名作『北の国から』は、北海道の大自然に翻弄されながらも強く生きていく家族の姿を描いた物語。20年以上も続いた物語の中では濃密な家族関係が描かれていますが、五郎(田中邦衛)と純(吉岡秀隆)の関係性はちょっと特殊です。というのも、五郎も純も、お互いに丁寧語で話しているからです。

五郎が純と螢(中嶋朋子)を連れて故郷の富良野に行き、電気も水道も無い暮らしを始めた時、純は「電気がなかったら暮らせませんよッ」と、五郎に訴えますが、セリフは次のように続きます。「夜になったら眠るンです」「眠るったって。だって、ごはんとか勉強とか」「ランプがありますよ。いいもンですよ」。まるで他人のように会話をしています。

ここで表現されているのは、親子の距離感。東京生まれ東京育ちの純は、都会的に洗練された母の令子(いしだあゆみ)に比べ、いつまでもあか抜けない五郎を尊敬できずにいました。それに五郎も気が付いており、互いに距離感のある話し方になってしまうのです。脚本家の倉本聰さんによると、純と五郎の話し方は、政治家の宮沢喜一氏が娘に丁寧語で話すところをテレビで観て、「この親子はどういう関係なのか?」と感じたことから着想を得たそうです。

心にわだかまりがあるとき、本音をぶつけるのではなく、なんとなく相手と距離をとってしまう。そんな性格に育った結果、純はさまざまなトラブルに直面していきます。こうした純の性格が、どう大人になるにつれて変わっていくのか。これも「北の国から」の見どころです。

◆ケトル VOL.41(2018年2月14日発売)

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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