『ケトルVOL.50』(太田出版)より
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マニアックの扉

Licaxxxが神山健治監督にインタビュー 「攻殻機動隊」最新作はどうなる?

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『ケトル VOL.50』 オダギリジョー、三木聡、今泉力哉、吉岡里帆、大九明子、森ガキ侑大、磯村勇斗、轟夕起夫…ほか

Licaxxxは、東京を拠点に活動するDJ、ビートメイカー、編集者、ラジオパーソナリティ。そんなLicaxxxの連載『マニアックの扉』がワンテーママガジン「ケトル」にてスタートした。第1回目では、「Production IGに行きたい」と書いたことろ、『攻殻機動隊 SAC_2045』の神山健治監督へのインタビューが実現。2人は何を語ったのか?

 * * *
Licaxxx:現在、『攻殻機動隊 SAC_2045』制作中にお時間いただいたということなんですが今年の4月からNetflixで全世界配信が開始された『ULTRAMAN』はフル3DCGで制作された作品でしたね。フル3DCGは、いわゆる作画アニメの演出と違いがあるんじゃないかと思ったんです。実際の人の動きがあるので。

神山:モーションキャプチャーですね。

Licaxxx:演じる人と関わる、というのはいかがでしたか?

神山:やってみて思ったのはやはり実写を作っている感覚に近いなというのが1つ。もう1つは、僕は監督としてアニメーターを演出しなければいけないんだけど、改めて、彼らをコントロールすることと演出することは全く別なんだと。役者さんも自分で納得できないものは、恐らく素晴らしい演技に結び付けられないと思うんです。それはアニメーターも同じ、ということにもう一度、立ち返ることになりました。

コントロールを超えたところにしか人を感動させられるものは生まれてこない。でも僕がある程度ベテランになってきちゃうと、言うことは聞いて描いてくれているけど、でもそれは素敵なものじゃない可能性もあるわけですよ。言うことを聞いてもらえなくてもそれで却って返って良いものができたりした、新人になりの頃に戻りたい欲求に駆られることがあります(笑)。

Licaxxx:実績があればあるほどの悩みですね。

神山:ベテランの良さはエモーションには結びつきにくいから、僕の年齢でそれを手に入れるにはどうしたらいいのかっていう模索が出てきて、ゴールには永遠に辿り着けないなぁっていうのが、最近、監督としての自分に感じていることです。

Licaxxx:先ほど「物理的には何本か撮っていても、未だに映画を撮れた感じがしない」とおっしゃっていましたもんね。映画ではないですが、今また、新シリーズを神山さんが監督することに「、攻殻機動隊」のファンはめちゃくちゃ盛り上がってると思うんです。ただ、あの時の未来は今の私たちにとっては、未来じゃないじゃないですか?

神山:そうですね。

Licaxxx:2020年に見せたい未来って、どう考えていらっしゃるんですか?

神山:まさに今、その問題に直面しています。ブレードランナーの新シリーズも制作リメイクしているんですが、あれはもはや未来ではなくて、レトロフューチャー。だって薄型テレビを出した瞬間にブレードランナーじゃないんです。あえて留まらなくてはいけない難しさがありますね。同時期にこの2作品を作るって……お題を出した人はとんでもないサディストだなって思いながら(笑)。

Licaxxx:(笑)。

神山:で、俺はどんなマゾヒストだと思いながらお題をこなしているんだけど。片や「攻殻機動隊」は、テクノロジーをその時代で一旦止めるべきか? 「攻殻機動隊」の世界でも、現在に至る時間を経たんだということで描くべきか? すごく悩んでいるんです。ちなみに「S.A.C」を作るときは、脚本を執筆していた当時の西暦2000年を描こうとしました。日本国内や世界が、どういう事情で2000年を迎えていたかを。ある種、過去の総括ですよね。

今回の新シリーズを作る上でも、その骨幹はあまり変わっていなくて。そうすると必然的に、ガジェットや登場する人たちの気分が2000年から2020年の間に起きた出来事によって規定されていくと思ったんです。それを表現していったら、ブレードランナーとは描き方が変わり、アップデートしてしまった方がいいだろう、という結論に今の段階では達しています。

Licaxxx:すっごい楽しみです。

神山:試行錯誤中ですけどね。

Licaxxx:私は音楽を仕事にしているのもあって、音楽の話も聞きたいと思っているんですが。

神山:僕は音楽的才能がないと自覚しているので、アーティストの選定が勝負なんですよ。「攻殻機動隊 S.A.C.」シリーズの菅野よう子さんは特に、作曲を引き受けてもらえるか否か、というところが山場でしたね。

実はオファーに対して、明らかにお断りを告げられるためのミーティングなんだなっていうシーンがあったんですよ。他の案件を全部キャンセルして、僕が出る出席することになったんですが、そうしたら、僕があまりに頼りなくてほって放っておけなかったから受けてくれました(笑)。それでご存じの通り、素晴らしい楽曲が上がってきて……でも選曲するごとにダメ出し(笑)。

Licaxxx:新作はどうですか?

神山:菅野よう子さんにはすごく成長させてもらって、映画の音楽ってこういうことだって自分の中での答えを見つけられるような、いい経験もさせてもらったんですが、僕は未だに作曲家と話をする時が一番怖くて、ドキドキするんです。音楽を作れる人は僕にとって、魔法使いか悪魔なんで(笑)。その上、最近のトレンドは歌詞がある音楽。トレンドに乗るのか乗らないのか、作曲家とどう握り合うか、という作業が加わってしまったなって。ただでさえ震えるような気持ちをどうやっていこうかと(笑)。

Licaxxx:ブレードランナーもずっと音楽に注目されてきた面もあるので、そこもまたプレッシャーが(笑)。

神山:本当にどうなるんでしょうね。でも、僕の人生のレイヤーとしては非常に面白い出来事なので楽しむしかないと思っています。

※注釈
『攻殻機動隊 SAC_2045』
士郎正宗による漫画『攻殻機動隊』を原作とした、メディアミックスアニメアニメーション・シリーズの最新作。サイボーグ技術や電脳技術が発達した近未来を舞台にしたサイバーパンクだが、原作版、・押井守の映画版、・神山健治の『『S.A.C.』、』・黄瀬和哉と冲方丁の『ARISE』では、時代設定や主人公草薙素子のキャラクター設定など多くの相違点があり、それぞれが原作を核とした別作品ともいえる世界観をもつ。

『Blade Runner-Black Lotus』
フィリップ・K・ディックの小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を原作に、リドリー・スコット監督が手がけた近未来SF映画の金字塔『ブレードランナー』。その続編『ブレードランナー2049』、さらにそのアナザーエピソードとして制作されたアニメ作品『ブレードランナー ブラックアウト 2022』。本作の舞台は2032年で、この2作の間の期間にあたる物語となる。

『映画は撮ったことがない』
映像が「映画」になるために必要なものとは? という点について、神山健治が作品を作りながら巡らせ続けた思考が記録された書籍。初版は2009年刊行、文芸誌『ダ・ヴィンチ』で連載されていたコラムなどを新たに収録した改訂版『ディレクターズ・カット版』も2017年刊行になるが、神山健治監督作品のみならず、作り手の思考、映画作りを知るためには必読。

【プロフィール】
Licaxxx
DJ、ビートメイカー、編集者、ラジオパーソナリティ。2010年にDJをスタート。マシーンテクノ・ハウスを基調にしながら、ユースカルチャーの影響を感じさせるテンションを操り、大胆にフロアをまとめ上げる。イベント出演のほか、ビデオストリームラジオ「Tokyo Community Radio」の主宰、アンビエントを基本としたファッションショーの音楽など多数制作

神山健治
アニメーション監督、脚本家。クラフター代表取締役共同CEO。2002年、『ミニパト』で監督デビュー。代表作に『攻殻機動隊 S.A.C. 』『精霊の守り人』『東のエデン』『ひるね姫』など。新作『攻殻機動隊 SAC_2045』及び『Blade Runner-Black Lotus』で、荒牧伸志とダブル監督を務めることが発表されている

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