『ケトルVOL.57』は「いくえみ綾」特集
『ケトルVOL.57』は「いくえみ綾」特集
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根本宗子が語る“いくえみ作品” 「登場人物が悩み続けているのは魅力的じゃないですか?」

Amazonより
『ケトル VOL.57』 いくえみ綾、ともさかりえ、中村涼子、乙武洋匡、佐藤千亜妃、倉本さおり、加藤茶、北村薫…ほか

2019年にデビュー40周年を迎えた漫画家のいくえみ綾さんは、「静止画でありながら動的」と、評される作風が特徴。モノローグや間、そして効果的な台詞などの演出が、独特の世界観を作り上げています。劇作家・根本宗子さんによれば、手紙やメールのシーンにも細心の注意が払われているのだそう。『ケトルVOL.57』で、このように語っています。

「ドキッとするメールが来たとき、演劇ではその文面をスライドで出すか、台詞で読むか、役者の表情で表現するか。主にその3パターンですが漫画は1ページ丸々、メール画面にすることができます。そのほうが絶対にドキッとした感情を引き出す効果がある。ページを開いたときに衝撃を味わえますよね。特にいくえみ作品は、メール画面だけのコマもあれば、キャラクターが文章を読み上げるシーンもあって、すごく巧みに使い分けています」

根本さんは、いくえみさんの言葉についてのアプローチにも着目しています。

「モノローグは通常、『説明するためのもの』『心の声』の2種類ありますが、いくえみ先生は、説明的なモノローグをほとんど使っていません。どちらかというと、後者。ひとりひとりの感情が丁寧に説明されています。

読者としては、人の感情を読むことになるので、少し疲れることもあるのですが、それは心地よい疲れだと思っているんです。『私も物語の世界に没入している!』という感覚ですね。読み続けていると、いろいろな人の気持ち・感情が読者の心の中になだれ込むので、都度、一呼吸置いてからまた読み直しています」

台詞にモノローグを合わされば、言葉数が多くなりますが、「語りすぎなくてバランスがいい」「日常的に話している言葉を使いつつ、自然と重要な台詞を入れることで、説教くさくならない」と、根本さん。そして、「登場人物が悩み続けているのは魅力的じゃないですか?」と話しています。

「同じことを何度も繰り返し考えたり、一回解決したことに、また頭を悩ませたり。ぐるぐる同じところを回っているようなことは、現実世界でもよくあることです。人と関わっている以上、悩みは尽きませんし、悩みがなくなることもありません。そうして人間関係は作られていくと思っていますし、いくえみ先生はその部分をすごくリアルに描かれています。

『いとしのニーナ』ではマサくんがベッドに寝転がって、家族への不信感について考えて込んでいるシーンがあります。ここは普通だと1つのコマにおさめるかもしれませんが、感情が1コマずつ動いていくのがわかるよう、わざわざ3分割しています。3コマ目では考えごとも増えて、最終的に、『(親は)自分のことなんてどうでもいいのか?』という結論に行き着くわけです。

正直、最後の言葉だけで十分成立すると思うのですが、そこにたどり着くまでの過程を描いていることに意味があるんです。その過程にある心理描写によって、モノローグを魅力的なものにしている。だから、いくえみ作品では『過程』が描かれているシーンが大好きですし、先生も大切にされているのかなと思いました」

登場人物の心の動きを細やかに描くことで、読者がスムーズに感情移入でき、作品に没入できるように誘っているということ。40年以上愛され続ける秘訣は、そういったところにあるのは間違いないようです。

◆ケトルVOL.57(2020年12月15日発売)

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