創刊の辞(スーパーバイザー・松尾スズキより)

イラストレーターとか
コピーライターとか
トレンドウォッチャーとか
バブル期に就活をしたものならば
そういうカタカナ職業に憧れたものも多く
僕もそういう、うわついた人間の一人でしたが
縁あって芝居をやっています。
汗まみれです。
で、今回ですね。
スーパーバイザーという
汗の臭いのしないカタカナ仕事をおしいただき
俺もたまにはうわついて、
だからあなたも生き抜いて、
と思ったのですが、
実際やってみたら
汗まみれでした。
まあ、それはいいのです。とりあえず
雑誌というのはお勉強のできる人が作るものですが
僕はお勉強ができません。
なので普通の雑誌を作ろうとしたら、
そらあまあ、負けますわな。
なのでいろいろ考えたあげく、
「本人しばり」というルールを思いついたわけです。
本人が書く本人の話。本人が登場する他人の話。
本人が本人のふりをして書く話。いかにも本人な話。
本人だからこそ書ける話。他人が聞く本人の話。
とにかくページを開くはしから本人の臭いがたちのぼるような、
そんな雑誌にしてみりゃあいいんじゃないかと。
執筆者も
僕の知りあいの書き手、知らないけどリスペクトする書き手、
そういう人に限らせていただければ、
雑誌全体から僕本人の臭いも
いやがおうにもするでしょう。
他人という本人で地球は埋めつくされている。
その、ひとりひとりに、語るべき話が、
一生にひとつはあるでしょう。
そうほとんどが初小説である執筆者にせまりました。
ある意味ヤクザなやりかたでしたと反省してます。
だってみんな追い込まれるように、
ガチな作品をぶつけてきたからです。
松尾本人は今、いろいろあってかつてないほどへこんでますが、
素晴らしい作品の数々に囲まれ、幸せにふるえてます。
だからこのヤクザなやりかた、
今後もしばらく続けるでしょう。

本誌スーパーバイザー
松尾スズキ

(『hon-nin』vol.00「編集後記にかえて」を採録しました)