INTERVIEW FILE 018 マキタスポーツ
Jan 3, 2016

INTERVIEW FILE 018 マキタスポーツ (ミュージシャン・俳優)

先日PASSPO☆を卒業したばかり、槙田紗子さんによるインタビュー連載「マキタジャーナル」をお送りします。取材や文章を書くことに興味のある彼女が、様々なジャンルの一線で活躍する方々にインタビューし、インタビュー力を鍛える企画です。今回は、現在、メジャーとマイナーの合間を縦横無尽に活躍中のマキタスポーツさんに、槙田さんがお話を伺いました。これまで、2人に面識はありません。Wマキタのスペシャル対談、緊張しつつスタートです。

編集=原利彦、北野篤 撮影=小島マサヒロ 文=槙田紗子
INTERVIEW FILE 018 マキタスポーツ 写真1
INTERVIEW FILE 018 マキタスポーツ 写真2
INTERVIEW FILE 018 マキタスポーツ 写真3
INTERVIEW FILE 018 マキタスポーツ 写真4

槙田 「笑いなしの真っ直ぐな音楽をやっていこうと思ったことはないんですか?」

マキタ 「あるよ。今もやっているしね。最初はちょっと照れ臭かったんだよね。照れ隠しとして、歌い終わった後に余計な一言言っちゃったりね。モテなーい感じ。そういうときもあった。今は、年取って色々鈍くなってきちゃったから大丈夫だけど(笑)。」

槙田 「今、俳優さんとしても活躍されていますし、なんでもできるというイメージが強いんですけど、多くのことを同時にやるとわけわからなくならないんですか?」

マキタ 「いつもパニックですよ。」

槙田 「そうなんですね!(笑)」

マキタ 「3日前にドラマの撮影をして、今日はバンドの仕事をしてるとかだと、全く別の人としてやっている感じがするし、急激に熱い体験をしたあとに急激に冷まして他のことをやっている感じ。今は脳みそフル回転で出来ることは全部やりたいって思ってはいますね。ある種戦争状態。戦争が終わったあとに、『あの戦争はいけなかったんだ。』って後出しで色々言う風潮ってあると思うんだけど、その当時は戦争する理由もあったし、戦争に駆り立てられる何かがあったし、風潮やルールや国際情勢とか、色んなことの中で致し方なく戦争をしてたとかね。今の人の視点で単純に裁いちゃいけない。それと同じように、今の自分は戦争状態にあって、やらなくちゃいけないと思っ てやっていますよ。妙な例えですけど、そういうとこあるなぁ。事務所の仕事の入れ方とかを見ていると、こうやって冤罪って産まれるのかなってくらい、睡眠時間を奪って『やりました。』って自白させる感じ。」

槙田 「大丈夫ですか?!(笑)」

マキタ 「『マキタさんこの仕事きました。どうしますか?』『ん?やります。』みたいな(笑)。」

槙田 「でも、来た仕事に関しては出来るだけやっていきたいというスタンスなんですか?」

マキタ 「うん。去年まではその方向でやってたね。今はちょっと抑えようかなと思っていますね。本当は今もなんでもかんでもやりたいんだけど、それをやっていると身体ももたないし、結果的に自分の首を絞めるかなぁと。俺も歳だし。僕もあなたも、フリーランスってしがない賞金稼ぎじゃないですか。」

槙田 「はい。」

マキタ 「派遣みたいなことですよ。すごく狭い世界の。しかも、存在しない組合がしっかりしてるんですよ。それは“売れてる組合”なんです。その下に売れない人がごまんといて、売れてる組合が仕事を回してるんですよ。そこに新規参入していくんです。昔から売れてたんです!みたいな顔して(笑)。すごいところですよね。そこでお金儲けに混ぜてもらえてるって思ったらなかなか降りられないですよ。」

槙田 「はぁ。」

マキタ 「で、責任も生まれるでしょ。売れてない頃の方が苦労してないって僕よく言うんだけど、新聞社のインタビューとかって、あの人たちが書きたい分かりやすい物語を用意してインタビューしてくるんですよね。そのパーツのためだけの発言が欲しいわけ。」

槙田 「なるほど!!」

マキタ 「マキタさんは40歳を過ぎてから仕事に恵まれだして、売れない時期は苦労したでしょ?ってことを聞きたがるわけ。俺は苦労しましたってことを言わないでいじめるわけ。」

槙田 「ははは(笑)。」

マキタ 「遠回りして最終的に『まぁ苦労したってことかな。』って言うと、ものすごい勢いでメモし始めるからね。今まで書いてなかったのに。だけど、俺の本音を言うと、自分のことを自作自演家って言ってるんだけど、売れてない頃なんて誰からも頼まれてないのに俺面白いですよ!なんて言ってる困ったおじさんだったわけ。イタイ人なわけですよ。その頃は、“売れてる組合”っていう敵がしっかりいて、あいつらなんかには絶対負けねー!俺の方が絶対面白い!っていうことだけでやってきてるから、自分のやりたいことやりたいようにやって、しかも自分は誰もやってないことをやっているっていう最大の言い訳があるわけですよ。周りが追いついてないだけっていう規模。それは全然 気苦労じゃないんだよね。ところが、“売れてる組合”に入れてもらうと、自分のやっていることっていうのはあくまで部分ですよ。部分の中でマキタスポーツというヒゲの生えたくたびれたおじさんっていう役をやるんだよね。そうすると、くたびれた感じで座ってるだけで、『わー!くたびれてるー!』って、すごい喜んでくれるんです。」

槙田 「えー!(笑)」

マキタ 「それは、くたびれてないけどくたびれてる役をやんなきゃいけないわけだけど、それで誰かが喜んでくれて、お金が発生しているから、しっかり役を務めあげるということで信用され、またくたびれたおじさんの仕事が生まれるというサイクルになってる。そっちの方が気苦労は多いよね。」

槙田 「たしかに、人からの期待に応えなきゃいけないですもんね。」

マキタ 「そう。だからアイドルってすごく大変だと思うんです。主体がこっちにあるわけじゃなくて、観客本位のエンターテイメントって僕言ってるんだけど、アーティスト本意ではないんですよ。」

槙田 「そうですね。」