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太田エロティック・マンガ賞にご応募いただきありがとうございました。前回に引き続き、さまざまな作品が集まりました。今回は佳作1作、奨励賞3作という結果になりました。応募へのお礼を込めて、最終選考に残りつつ辛くも奨励賞受賞とならなかった作品への講評もお届けします!

【2016年下半期】太田エロティック・マンガ賞
審査員:山本直樹、本誌編集部
賞金:大賞 40万円、入選 20万円、佳作 10万円、奨励賞 3万円
最新のマンガ賞については「太田エロティック・マンガ賞」募集ページでご案内しています。

佳作 賞金10万円

板垣徹
「ロンロネ」
26p

【あらすじ】
猫のたぷ郎と暮らす主人公。恋人のノリさんには別れられない同居人がいて……。

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  • レビュアー
    山本直樹 講評

    絵も話も、この人にしか描けない感じがしてとても良いと思います。2作応募されていますが、この作品はエッセイ的な淡々とした流れで、でもちゃんと読めちゃう魅力があります。もうひとつの作品「バディ」(従業員ふたりの小さな塗装会社に二十歳の新人が入ってきて……という話)は、ちゃんとお話を作ろうとしているのが伝わってきました。面白かったです。原稿もきれいで、線に迷いがないのも良いですね。どんどん、たくさん、描いてください。

奨励賞 賞金3万円

藤ふみ
「夏の百合」
43p

【あらすじ】
花屋でアルバイトする女子高生のななは、仏花を買いに来た未亡人に心惹かれる。なながある日、配達を頼まれ未亡人宅に赴くと……。

  • レビュアー
    山本直樹 講評

    絵もかわいいし、お話として成り立っていて、最後まで読ませる力もあります。前回(2016年上半期に最終選考通過となった作品「仮想バイアス」)からの努力も伝わってきます。ただ、この手の話を描くなら絵の力が少し弱い。背景も含めてもっと丁寧に描き込まないときついですね。大人(の身体つき)もまだ描けていないように感じます。それから、急にエロにいく展開が気になりました。つい恥ずかしくなってしまうのか、時間がなかったのか。エロへの展開を省略しないで描き切る、そのぶん別のシーンを省略するという選択肢もあると思います。

奨励賞 賞金3万円

藤緒マリカ
「DEAD or 92」
20p

【あらすじ】
裕二の悩みは、彼女の直美のアソコを舐めることができないこと。

  • レビュアー
    山本直樹 講評

    16ページのエビ反りのコマ、もうこれがびっくりしたし、バカバカしいし、とても良かったです。ストーリーとは関係ないけど、「そっちかい!」という意外性を持ってきていて、しかもちゃんと笑える。絵もちゃんとしていて、バカバカしさを絵で見せることができている。話が最後の方でグダグダになったり……と粗も見えますが、バカバカしいものを描こうというこの姿勢はこのままでいてほしいですね。

奨励賞 賞金3万円

文秋水
「春を売るひと」
17p

【あらすじ】
売春で稼ぐ美人ニューハーフの麗華と、恋人の在日コリアン・辛。ふたりの出会いと現在。

  • レビュアー
    山本直樹 講評

    10ページのシャワーのシーンのコマが印象的でした。日本映画っぽくて良い。かなり重いテーマできましたね。この人なら、シンプルな話でも面白く描けると思います。面白いものが描けて画力もあって頭も良い人だと思うので、あとは一度「何も知らずに読む人」の立場になって読み返してみてほしいです。わかりづらかったり、状況説明にページを割きすぎたりしている。読み飛ばせなさすぎるんですよね。話の質を損なわずにわかりやすくする、さりげなく状況を伝える方法、技術が絶対にあります。

総評

今回は豊作の回でした。力作が多かったように思います。一言で済ませられなくてこっちも考え込む作品があったのが良かったです。
傾向としては、急にエロに突入する展開が多いのが目立ちました。早すぎる。「あれ、次のコマこれ?」みたいな。途中というか、エロに変わる瞬間が一番エロかったりするので、そこをちゃんと描くと良いのにと感じましたね。
これまでもよく言ってきたことではあるんですが、もっとびっくりしたいです。びっくりというと語弊があるけど、ストーリーとしての起承転結は当然あるとして、その先に何かが欲しいんです。チャームポイントのような何かが、欲しい。ひとコマの絵のインパクトとかね。ぼくが学生時代に一番すごいなと思ったのは萩尾望都さんの『ポーの一族』です。マンガでこんなことができるのか!とびっくりしました。あとは、わかりやすすぎるかもしれないけれど、花沢健吾さんの『アイアムアヒーロー』の1巻の終わり、あれもびっくりですよ。感動も含めて、という意味ですが。
ただ単に話としてきれいに落としてくるというだけじゃ、こっちもいい歳なのでもう響かない。
とともに、これもいつも言っていることだけど、ストーリーを追うことに終始して登場人物がストーリーの歯車になってちゃつまらないんです。読んでるこっちは、インクのシミを、あたかも人間が生きて動いているように錯覚したい。記号っぽい紋切型はつまらなく感じます。それをちょっとずらすだけで面白くなるはずなんです。
要するに、自分が描こうとしているマンガについて、ずっと考えてほしいということです。全く別のことをやっている間も頭の片隅に作品を置いていると、見たものからヒントをもらったりして何か思い浮かぶと思うんです。「すごいストーリーが思い浮かんじゃった!」で終わらないで、その先、ディテールも全部気を抜かずにやって初めて面白いものができる。油断するなってことです。

最終選考通過作品

榎本行宏「魂の不具合。」
【講評】面白いことは面白い。ただ、途中で挫けてるような、描き切っていないような感じがします。ちなみに、13p、ペンキツールの塗り残しをそのままで仕上げてきたのは正解です(笑)。今回からデジタル原稿になったということなので、どんどん描いて発表したらいいと思います。

ヨシサト「ジロとの日々」
【講評】最後まで描き切ろうという気概が見えます。1本のストーリーとして成立させようとしていますね。描きたかったシーンがどこなのかも伝わってきて、とても良いと思います。ただ、物足りない。話がそのまま流れてしまっているように感じる。ストーリーを追うことに気を取られてしまっているのかも。びっくりさせてほしいですね。

青柳行夏「砂糖漬けの小指」
【講評】かわいらしく描けているんだけど、メインの3人とも同じようにかわいらしくて、あまり個性、キャラクターがない。描き分けに関しては私は人のことを言えませんが、キャラクターを出してほしい。あとは、絵で見せてるようで実際は言葉で運んでしまっているシーンが目立ちました。

キリシタ・カズオ「アイスの季節」
【講評】インパクトのある、面白い絵です。話としてはスケッチとかお伽噺のような雰囲気だったけど、この絵でエロいストーリーものが読みたいな。物語を描いてほしいです。


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