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ノンフィクション・人文

現代世界における意思決定と合理性

木島泰三(訳)

『現代世界における意思決定と合理性』 著:キース・E・スタノヴィッチ

価格

3800円+税

判型

A5判

ページ数

324ページ

ISBNコード

9784778315979

搬入年月日
[?]

2017.10.25
※各書店・ネット書店により、購入可能となる日は異なります。

書籍の説明

本書の意義
・20世紀後半の認知革命から生まれた人間の認知研究(認知科学、行動経済学、進化心理学など)は、人間の意思決定における不合理性を次々に明らかにしてきた。
・21世紀に入ると、一般向けの入門書や読み物が一挙に増え、いくつかはロングセラーとなっている〔*〕
・だが、そもそもの基礎概念である「意思決定」と「合理性」に関して、「なに」「いかに」「なぜ」の共通了解を領域横断的に与えてくれる教科書はほとんど存在しない(これには認知研究がまさしく高度に学際的であることが理由として考えられる)。その不在を埋めるべくして書かれたのが本書である。
・結果として、心理学、行動経済学、ビジネス/マーケティング、またおそらく哲学に関わる幅広い学習者に有益なガイドブックとなっている。意思決定と合理性という重要テーマを堅実に整理・解説する得がたい書物である。
・初学者に配慮し詳細な訳注(626個)を付した。

〔*〕2002年、ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン教授の『ファスト&スロー』、つい先ごろ(2017年10月)同じくノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー教授の『実践 行動経済学』(キャス・サンスティーンとの共著)『行動経済学の逆襲』『セイラー教授の行動経済学入門』、あるいは、ダン・アリエリー著『予想どおりに不合理──行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』など。


内容紹介
 本書は、著者スタノヴィッチが自身の学問的・思想的営みの核心に据えている「合理性」の概念を、心理学の学生向け教科書として簡潔かつ平易に解説した書物である。
 本書によれば、合理性とは単なる論理的に正確な思考を進める働きではなく、人間各自が「何が真理であり、何をなすべきか」を把握するという、きわめて実践的な働きを捉える概念である。このような認識から本書はまず、合理性を適切に導くための形式的な規範がすでに詳しく整備されていることを示す。
 しかしながら、1970年代に創始された〈ヒューリスティクスとバイアス研究プログラム〉と呼ばれる認知心理学の研究は、現実の人間がこれらの合理的規範に対して、多くの点で系統的な違反を繰り返す存在であることを明らかにしてきた。本書の前半は、このような現実の人間の系統的な認知的誤り、すなわちバイアスのさまざまな形態を、そこで違反されるさまざまな合理的規範と共に、詳しく解説することにあてられる。
 次に本書は〈ヒューリスティクスとバイアス〉研究がもたらした〈合理性大論争〉と呼ばれる論争をとりあげる。はたして人間は合理的な存在なのか、合理的規範への不合理な違反を常態とする存在なのかがそこでの争点である。
 著者はこの論争を、「改善主義者」と「パングロス主義者」の二陣営の争いとして整理する。「改善主義」は〈ヒューリスティクスとバイアス〉研究の立場であり、現実の人間の不合理性を受け入れた上で、人間は合理性の形式的規範を学び、より合理的な存在に改善される可能性に開かれていると考える。
 他方の「パングロス主義」は、人間はあるがままで合理的な存在であるとし、改善の余地も必要も認めない。本書中盤では、現代の進化心理学を中心に提出されている、〈ヒューリスティクスとバイアス〉研究に向けられた批判と代替解釈の解説がなされ、後半では、これらの批判を受け、「二重過程理論」と呼ばれるモデルにもとづき、二つの立場の調停が提唱される。
 それによれば人間の心ないし脳には「タイプ1処理」と呼ばれる、さまざまな状況に最適化された無数の認知装置があり、それぞれが、硬直しているがその分素早い演算を担う。しかしこの種の処理は必ずしも形式的な合理的規範に従って動作するわけではなく、これが〈ヒューリスティクスとバイアス〉研究が見いだした不合理な意思決定の源になる。とりわけ複雑化した現代社会では、この種の処理だけに意思決定を委ねることは不合理な選択を生み出しやすく、これは大きな問題である。
 しかし人間の心ないし脳には「タイプ2処理」または「分析的処理」と呼ばれる機能もあり、タイプ1処理を抑止し、時間をかけて合理的規範にかなった選択を選び取ることが可能である。ここから著者は、〈合理性大論争〉の2つの陣営の間の論争は、いわば「図と地の反転」のような様相を呈するものと解されるという見方を提起する。
 最後に本書は、本書がこれまで人間の合理性の規範として依拠してきた「道具的合理性」の限界に触れ、それを批判的に吟味できる「メタ合理性」の必要性と可能性についても、1つの章を割いて論じている。
(訳者)

目次

第1章|合理的な思考と行動──何が真理であり、何をなすべきかを明らかにする
第2章|意思決定─行為の合理性
第3章|判断─信念の合理性
第4章|わたしたちの意思決定はどれほど拙いのか?──合理性大論争
第5章|判断と意思決定の合理性にかんする論争の解決──二重過程による説明
第6章|メタ合理性──優れた意思決定戦略は自己修正的である
参考文献/著者名索引/事項索引

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著者プロフィール

キース・E・スタノヴィッチ(Keith E. Stanovich)
現在カナダのトロント大学応用心理学・人間発達部門の名誉教授。認知心理学者として教育心理学、とりわけ読字能力の研究で多くの業績をあげ、この分野で多くの賞を受賞している。また、近年は本書の主題である「合理性」の心理学を主要な研究テーマとしている。邦訳された著書として、『心は遺伝子の論理で決まるのか―二重過程モデルで見るヒトの合理性』(原著2004年、椋田直子訳、みすず書房、2008年)、『心理学をまじめに考える方法―真実を見抜く批判的思考』(原著初版1986年、第10版2012年、金坂弥起監訳、誠信書房、2016年)がある。2016年にウェスト、トプラックとの共著で刊行された『合理性指数―合理的思考のテストへ向けて』(The Rationality Quotient: Toward a Test of Rational Thinking. MIT Press)は、「知能指数(intelligence quotient)」に匹敵する「合理性」の客観的測定法を確立しようとする意欲的な試みである。
http://www.keithstanovich.com/Site/Home.html

訳者
木島泰三(きじま・たいぞう)

1969年生まれ。法政大学大学院人文科学研究科哲学専攻単位取得満期退学。現在法政大学文学部非常勤講師。主要業績として「現代進化論と現代無神論―デネットによる概観を中心に」(日本科学哲学会編、横山輝雄責任編集『ダーウィンと進化論の哲学』勁草書房、2011年所収)、「現代英語圏におけるスピノザ読解―分析形而上学を背景にした、スピノザの必然性概念をめぐる側面的考察」(上野修他編著『主体の論理・概念の倫理―20世紀フランスのエピステモロジーとスピノザ主義』以文社、2017年、所収)、翻訳としてダニエル・C・デネット『思考の技法―直観ポンプと77の思考道具』(阿部文彦との共訳、青土社、2015年)など。

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