クイック・ジャパン編集部ブログ

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QuickJapan77号Perfume特集おまけ座談会 6

2008.4.30

QuickJapan77号Perfume特集おまけ座談会
夢はまだまだ終わらない!――Let’s talk about Perfume&GAME! 6

 QuickJapanのPerhume特集(74号、75号、77号)を手がけた男3人が語り合った座談会。最終章となる今回は、とかくCDのみで評価されがちなPerfumeの「ライブ」を中心にお送りします。

◆最終章 ライブへの誘惑

さやわか(ライター)×吉田大助(ライター)×藤井直樹(本誌編集長) 記録係:増田桃子(編集部)

■生声へのこだわりを手放したっていうのが重要

吉田 そろそろこの対談も終わりに近づいたので、最後にライブの話をしましょうよ! 今回の『GAME』でPerfumeに興味を持った人は、ぜひライブに行って欲しいですから。
さやわか 問題はチケットですよね。この間も知り合いに、「Perfume好きなんだけど、でも結局ライブを観なきゃ分かんないんでしょ?」って言われて、これは問題だなあと。今やPerfumeをめぐる状況は、「みんな聞いてくれているのにライブに行けない」ということになってきている。音や映像でもPerfumeの魅力は伝わるんだけど、ライブを観ないとファンがPerfumeの何をそんなに面白がっているのか、よく理解できないと思うんです。
藤井 確かに、いまのPerfumeはチケットがとれませんね。僕はいろんなところから仕事がらみでライブやイベント、試写会なんかのチケットを頂くんですけど、Perfumeだけは周囲の反応が明らかに違いますよ。
吉田 『GAME』は初回限定盤にDVDが付いてて、「ポリリズム」と「Seventh heaven」のライブ映像が観れますから、これでPerfumeのライブパフォーマンスのすごさはある程度は伝わると思う。特に「ポリリズム」のPVではなくライブ映像を観られるのは画期的ですよ。あれは完全なるアートであり、最高級のコンテンポラリーダンスです。だって、そもそもなんで動きが曲とシンクロしてないんだ? っていう話じゃないですか。いや、シンクロはしてるんですけど、あのサビの部分で行われる訳のわからない微分的な動きは何なんだ、って。
藤井 微分的って、確かにそうだなあ(笑)。
さやわか ホントに振付師のMIKIKO先生は天才ですよ。
吉田 『fan service[bitter]』で「若い頃の曲を久しぶりにやります」って踊ったあと、あ~ちゃんが広島弁で「もう無理じゃね」って言うシーンがあるじゃないですか。「もうこれは踊れんわ」って。あれがすごく象徴的で、昔は元気でパワフルな踊りをしてたんですよ。それがエレクトリック3部作あたりから、非常に、コンテンポラリーダンス的としか言いようがないんだけど、元気さとはまったく違う精密さや繊細さのベクトルに向かった。そっから始まった彼女たちの情報量の発散たるや、ですよ。
藤井 あの情報量はすごいですよね。ライブを観るとビックリする。
吉田 DVDでも十分すごさを観られると言いながらも、ライブで観たライブの情報量のすごさとは比べものにならない(笑)。ハンパないです。ほんとにね、人間の体ってこんなにも自由で、豊かな表現力を持ったツールなんだって、観てる側の細胞が踊り出しますよ! 
藤井 ヒップホップ的なダンスの「上手さ」とは違う、人体の仕組みすら感じさせる動きです。
吉田 やっぱり生声へのこだわりを手放したっていうのが重要だと思うんです。ライブを観に行くことの価値って、アーティストの実存を確認しに行くみたいなところがあるじゃないですか。で、パフォーマンス云々よりも、まずは生声であることがライブのアイデンティティみたいなところがあって。
藤井 でも、口パクうんぬんで言うなら、74号の時に僕が本当に繰り返し見てたのは、YouTubeに上がってる、スタジオで「エレクトロ・ワールド」を踊ってる映像なんですよ。
さやわか 『SPACE SHOWER TV』のやつですね! あれはいい! 狭い空間で請われるまま踊る(笑)。
藤井 あれでもう、ガツンッ!て完全に気持ちを持って行かれました(笑)。
吉田 それは生声ですか?
藤井 いや、その場で歌入りのCDを流しちゃってる。掟さんが「ではPerfumeさんに踊っていただきましょう!」みたいな無茶振りでCDを流して、その場で3人が踊るという。めっちゃ狭いのに。マイクも持ってるふりだけして(笑)。
吉田 コンテンポラリー的に言うと、口の動きも振り付けなんですよ! いま皆さんがおっしゃったのと同じ衝撃を、僕はライブで観た「ポリリズム」で受けました。最後の<ポリリズム ポリループ>が連呼されるところで、完全にマイクを手離して踊ってたっていう。そのシーンはDVDに記録されてるので、未体験の人はぜひ見て欲しいです。

■とりあえずただ、ライブを観てほしい

さやわか 中田さんが74号のインタビューの時に、リスナーは声を加工することに慣れたほうがいいって言っていて。自分はライブでやるつもりで曲を作ってないって言ってましたね。
吉田 声の加工がある時点で、完全な生声をライブで再現するのは無理ですもんね。さっきも言いましたけど、これまでリスナーはミュージシャンの実存を確認するため、ライブに生声を聞きに行ってたんですよ。だからホントに声を出してるか出してないかが勝負、みたいなヘンな先鋭化が始まって、モー娘。もSMAPもしっかり歌って、わざと歌い方を変えて、口パクじゃありませよってアピールする。でも、その結果として歌が「カラオケ化」したわけじゃないですか。リスナーにとってもミュージシャンにとっても「歌いやすいもの=いいもの」みたいな。そうじゃなくて、音楽としてよければライブが口パクでもいいじゃんっていう。
藤井 その瞬間にしかないサプライズもライブの醍醐味ですから、ファンが生演奏と生声を求めるのは当然なんです。だけど一方で、90年代くらいからビーイング系を中心に、ライブをまったくやらずCDだけリリースするミュージシャンが支持されるようになったり、全国各地でフィルムコンサートが盛況だったりと、明らかにリスナーのライブに対する意識が変わってきてる。つまりこれまでライブにおいて「生演奏と生声」が唯一絶対の価値だったけど、それだけじゃない別の価値があるってことなんですよ。だからPerfumeのライブを従来の文脈で評価するより、高いクオリティから生まれる、再現性を超えたサプライズに注目すべきだと思います。
さやわか 「Perfume」としか名付けようがない一つのパフォーマンスを見せていますよね。ライブを観てない人の一部はいまだに「アイドルの若い女の子が出て来て口パクで歌って踊って、それがいいと言われる意味が分からん」「大人が泣いたりしててキモい、あれがアイドルオタクというものか」とか思ってる人も多いと思うんです。逆にアイドルオタクの人たちにとっては、「音を聞く限りPerfumeはちょっとアイドルっぽさが足りないからノーサンキュー」と思ってるかもしれない。しかしどちらにせよ、とにかく、とりあえずただ、ライブを観てくれれば分かるはず、と思う。
吉田 中にはチケットが取れないからへそを曲げてる人もいるんじゃないですか?
藤井 そういう人もいるでしょうね。熱心なファンならともかく、興味があるだけで「どうにかしてチケットを!」とはならないから、チケットが手に入りにくい状況を知って「どんなに良くったってライブを観られないんだろ」と思ってもしょうがないですよ。僕だって同じ立場だったら「ちぇ」って感じになるかもしれない(笑)。
吉田 だから、ここは藤井さんに言って欲しいわけですよ、QJがライブの場を設けますよ! と。Perfumeイベントを、もしくはPerfumeを含めた中田さん・プロデュース祭りをやるぞ! って。
藤井 いきなり何を言い出すんだこの人は(笑)。
吉田 この間、ミニライブに行ってちょっとだけ不満だったのは、明らかに重低音がびりびり割れてるんです。要は中田さんのCD-Rを流してるだけで、そのライブハウスにとって一番いい音環境を中田さんが調整しているわけではないから。だからQJのイベントでは中田さんがサウンドエンジニアとして入って、そのライブハウスにとって最高の音響環境を調整してもらいながら、Perfumeのライブをやる。どうですか!
藤井 どうですか! じゃないですよ(笑)。いや、中田さんやPerfumeに関係なく、QJとして何かイベントをやりたいなあってのはありますよ。2004年に開催した「Quick Japan FIVAL vol.001 2004 WINTER」のような大きいイベントじゃないかもしれないですけど、このあたりについてはいろいろ考えてるところです。
さやわか QJがやるのはともかくとして、たしかにPerfumeのライブをいろんな人が観られる機会が増えてほしいですね。僕も、一番最初にPerfumeを聞いたときに音は面白いと思ったけど、でもライブで観るまではここまで思い入れなかったんです。そんな僕でもライブを観たら、これはアイドルだとかアーティストだとか言う前に、とにかく聞いて、観て、体験すべきものだって思った。だから今回アルバムを買った方も、アイドルなんてって人も、ぜひ機会があればライブへ足を運んでほしいですね。
藤井 こうやってお二人と話していると、Perfumeの存在が日本のミュージックシーンを変える大きなきっかけになるんじゃないかって改めて思います。エレクトリックサウンドに関心のない人たちは、おそらくこれまでテクノやハウスを「ピコピコ鳴ってる音楽」くらいにしかイメージしてなかったでしょうけど、そういう認識は『GAME』を聞くことで変わるはずだし、Perfumeのライブはパフォーマンスのあり方そのものを変えるかもしれない。74号で「アイドルの意味を回復する3人」というコピーを掲げましたけど、Perfumeは「アイドル」だけじゃなく、いまのミュージックシーンを回復する可能性も秘めている。そういう意味でも、僕たちはPerfumeから目を離しちゃいけないんですよ。