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文・写真=藤岡美玲 写真=ニコ・ニコルソン *「ぽこぽこ」掲載当時の記事を移設公開しました

ニコルソンの実家は、宮城県の山元町。東日本大震災のあの日、この町は未曾有の大津波に襲われました。「ぽこぽこ」にて実家再建エッセイを連載中のニコさんに、山元町のことやニコ家のことを伺ってきました。山元町の取材レポートと一緒にどうぞ。

ニコさんの上京時代

▼山元町レポート
庭を囲っていたコンクリートのブロック塀はぼろぼろに。津波の勢いが想像できます。庭には『幽遊白書』のぼろぼろになったカバーが落ちていました。ニコさんの私物説が濃厚です。
ガレキの山の横を通り、ニコさん&母ルソンさんに駅まで送っていただきました。道に迷った時に母ルソンさんがおっしゃった「私なんて、人生の方向音痴よ」という言葉が忘れられません。本当にありがとうございました!
最後に、震災前にニコさんが撮影した写真です。松林も茂り、穏やかな海辺を歩く婆ルソンさん。もう一度、こんな散歩をするのが今のニコ家の目標です。

―――高校卒業後、専門学校に進学されたんですよね。

ニコ そうです。仙台にある、デザイン系の専門学校に通ってました。物心ついた時からずっと絵を描いていたから、小学校の時には「マンガ家になりたいな」って思ってました。大きくなるにつれて「あ、大変。こらあ無理だな」って分かってきて、専門学校の時には雑誌のデザインとか、とにかく絵に携わる仕事がしたいなと。ポストカードにちょっとエログロな、和風の着物を来た女の子が乳を出してる絵を描いてみたり。

―――丸尾末広さんとか、お好きでした?

ニコ 好きでした。丸尾さんとか、大越孝太郎さんとか。女学生が好きなんですよね。あと、やたらと「大日本帝國」とか(笑)。そういうのをちゃんと分かってるんじゃなくて、かっこつけで好きって言ってるみたいな、そういう分かりやすい若者生活を送っていました。宮城限定のファッション誌があって、そういうところでイラストを描いたりして、井の中の蛙じゃないですけど、イケてると思っちゃった。仙台のデザイン事務所に就職が決まっていたんですが、そこの社長が結構とんでもない人で、「絵が描けるんです」って作品を見せたら、エレベーターの中で「おまえの作品はクソだ」って言われて。それが悔しくて、もっとちゃんと頑張って、面白いことをやりたいと思ったんです。それで「東京だ!」って。友達が東京に行っていたので、そっちに転がり込んだんです。6ヶ月、無収入で。若気の至りです。

―――母ルソンさんはなんとおっしゃってたんですか?

ニコ 親には嘘を吐きました。「飯田橋の印刷事務所に就職が決まりました」って言って上京して、6ヶ月ふらふらしたあと、ソニー・マガジンズさんに、ハガキ整理のバイトか何かで入ったんです。そうしたら、「デザイン系の仕事ができるの、じゃあページデザインやってよ」ってなって、そこでオペレーター作業をしてたら、「絵を描けるんだ、じゃあ絵を描いて」って。そのうち趣味でやっていたブログがテレビで紹介されて(2006年、テレビ東京「ブログの女王」で全国ブログ選手権バラエティ部門賞を受賞)、いろんな出版社さんからお声がかかったんです。一番先に縁のあったソニー・マガジンズさんで『上京さん』を出し、そこから色々つながってきた感じですね。

―――『上京さん』は家探しエッセイですが、今度は家を建てるエッセイを描かれることになったと……。うまいこと家の話に戻ったところで(笑)、最後にどんな家にしたいか教えてください。

ニコ とにかく、婆ルソンが良い余生を送れる、幸せに暮らせる、住みやすい家を建てたいです。お決まりのことしか言えないですが。津波の思い出を払拭するような家にしたいですね。

―――家を建てるのは、婆ルソンさんのためなんですね。

ニコ 完全にそうですね。も~デカイ墓みたいなものです。ピラミッドです。母ルと私は墓守りです。山元町の人口は、震災前は1万6千人くらいでしたが、亡くなった方もいますし、引っ越していく方もいるので、どんどん減っているようです。最寄り駅も山側に移動になるって聞いてますし、なかなか、あそこに住むのは難しいこともあると思います。お店もだいぶ潰れていますし。それでも、婆ルには戻りたいっていう気持ちがあるんですよね。私の目標としては、『ナガサレール イエタテール』の単行本の印税で、家が建つくらいになるといいと思います(笑)。なんなら、それによって山元町の経済を上向かせる。ふるさと納税をします(笑)。そうなったら、水木ロードみたいなのも作って欲しいです。

―――ありがとうございました。

ニコ わー(拍手)。

ナガサレール イエタテール

ナガサレール イエタテール

著者:ニコ・ニコルソン
発行:太田出版
発売日:2013.03.06
価格:952円+税

◆描き下ろしコラム25ページ&写真多数&あとがきマンガ収録!
◆初版限定☆超豪華応援ペーパー封入! !
◆16回文化庁メディア芸術祭 審査委員会推薦作品

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〈プロフィール〉

ニコ・ニコルソン
ニコ・ニコルソン

宮城県亘理郡山元町出身のマンガ家/イラストレーター。
宮城県の専門学校卒業後、「東京で就職が決まった」とうそをついて上京し、2008年に『上京さん』(ソニー・マガジンズ)でデビュー。著書に『ニコ・ニコルソンの漫画道場破り』(白泉社)、『ニコニコ妖画』(講談社)、『ニコ・ニコルソンのオトナ☆漫画』(エムオン)などがある。2013年3月11日発売の『ナガサレール イエタテール』(太田出版)は、東日本大震災で津波被害を受けた実家を再建するまでを描き、16回文化庁メディア芸術祭 審査委員会推薦作品に選ばれた。2017年3月発売の新刊『婆ボケはじめ、犬を飼う』(ぶんか社)、は、再建した家に新しい家族「ヌ太郎」を迎えたニコ家を描いた、注目の描き下ろしエッセイ。