現在のページ(パンくずリスト)
トップ > 太田出版ニュース > 太田出版ニュース詳細

太田出版ニュース

一覧へ戻る

出版という営みの本質とは、何か。
転換期の今、次なる一手を創造する核心を問う。

「出版人・知的所有権叢書」刊行のご挨拶

 2017年4月より、太田出版は出版人・知的所有権叢書の刊行を開始します。
 「出版人」という言葉と「知的所有権」という言葉の組み合わせに違和感を抱かれた方も多いかもしれません。確実に関係はするものの、そのまま重なり合うわけではないこの二つの言葉の間の距離感にこそ、本叢書刊行の意図があります。
 「出版」は本来必ずしも組織としての出版社が行うものではなく、創造物である著作物に意義を見出し、その媒介者として財産的、批評的リスクを引き受けて人に伝えようとする個人がいることで成立します。
 「出版人」という言葉には、紙の本の企画・編集にとどまらない、リスクを負って著作物を読者のもとに届ける流通的使命を負う個人という含みがあり、その周辺に使命を支える組織、業界があると位置づけられます。
 その「出版人」が日々向き合うのは著作者、著作物を中心とした「知的所有権」の世界であり、著作物を流通させるうえで「知的所有権」は、作品内部だけではなく、その流通の方法、読者の利用を含めた出版後にまで密接に関わり合いが生じます。
 いま出版の世界は紙の出版が登場して以来の転換期を迎えています。著作物が配信などを通して一瞬にして伝達されるようになり、紙以外の媒体で情報を得ることも当たり前のこととなりました。利用形態の変化は権利、義務など法的な側面にも揺さぶりを与えています。
 現在起きている様々な変化は、その様相がまったく異なる場合でも、すべて先人の苦心や試みの蓄積の延長線上にあり、その歴史を踏まえることにより、問題解決のヒントに気づくことが少なからずあります。歴史は繰り返すということは出版人・知的所有権の世界にも言え、異なる時代の先人の悩みが現在のわれわれの問題を先取りしていることには驚かされます。このことは同一時代の別のジャンルの間でも起きており、少し前まではまったく別のジャンル、別の業界と思われていた領域が技術の発展によって相互関連し、一方のジャンルで起きていたことはほかのジャンルにとっての他山の石となることが頻繁に起こるようになりました。様々な国の間の情勢比較も急務となってくるでしょう。
 環境が変化しても、著作物、著作権の本質はかわらないと言われます。しかし現実として起きる現象が異なることで本質が見えにくくなることもあります。
 いまや技術の発達により個人が自らの意思で作品を世に問うことも可能になりました。それでも著作物の伝達がある限り、評価、企画、編集、流通という段階が無くなることはありません。
 「出版人」と「知的所有権」とを対置させ、この重なり、間にある、出版の本質を伝えることを意図しこの叢書を開始します。
 国内外を問わず、「出版」、「知的所有権」をめぐる歴史、知的所有権をめぐる新概念の提示、出版人として生きた個人の足跡など、新たな視点を提示できる読み物をお届けする予定です。
 ご期待ください。

株式会社太田出版代表取締役社長
岡 聡

「出版人・知的所有権叢書」2017年4月新刊

『出版の境界に生きる 私の歩んだ戦後と出版の七〇年史』
著者:宮田昇(みやた・のぼる)
搬入発売:2017.4.21
*全国書店・電子書店で発売

受け継がれるべき出版人の遺伝子。
「本を生み出す」という目的のために、様々な障壁をものともせず、未来へとつながる道を切り拓いた人々がいた──。編集者、翻訳権エージェント、著作権コンサルタント、児童文学作家として歩んだ著者による、個人史としての出版史。

本の詳細 Amazonで購入
『著作権の誕生 フランス著作権史』
著者:宮澤溥明(みやざわ・ひろあき)
搬入発売:2017.4.21
*全国書店・電子書店で発売

著作権の真の誕生はフランス革命だった!
フランス著作権法は人格権を尊重する。財産権を重視する思想が支配的ないまだからこそ、あえて、著作権の原点に立ち戻ってみたい──。研究者、実務者必携の書。

本の詳細 Amazonで購入